NILS WOGRAM SEPTET / SWING MORAL | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

本作は、ただいま追跡中の凄腕トロンボーン奏者NILS WOGRAMをリーダーとする金管2人、木管4人、ドラムという少々変わった編成のセプテットで、2004年1月録音、2005年リリース。全9曲がNILS WOGRAM作曲とアレンジによるオリジナルです。NILS WOGRAM以外のプレイヤーは全員知らないのですが、どんな演奏になっているでしょうか。

1曲目のSWING MORALは、気楽な雰囲気を装ってはいますが、演奏そのものは非常に緊張感に溢れています。繊細な管楽器のハーモニーに続いて「ズン、チャッ、ズン、チャッ」の時代がかったリズムに乗るSTEFFEN SCHORNのバスクラソロが◎。管楽器が6人ともなるとやはり迫力ありますね~。変拍子の使い方もさりげないのでついつい油断してたら、実は次からが凄かった(笑)
2曲目のTHE STORMは、頭から複雑な変拍子でスピード感と緊張感があり、濃いバップテイストもあったりで思わずぐふふ...(*^m^*) 倍テンでアグレッシヴになったTILMAN EHRHORNのテナーソロにエキサイトし、続くCLAUDIO PUNTINのクラリネットソロで柔らかく綺麗な音色の高速フレーズに「ほほぉ~」と感心していたら、突如ポルタメントでばばちい音色が駆け登る。「来た来たーっ♪」とここで大喜びするのはまだ早過ぎた(笑)ただでさえエキサイティングなソロがさらににエスカレートし、ついにはこれでもかとブチ切れて暴れまくったのには思わず大笑い!いや~、こんな怒濤のごときド迫力不良ジャズクラリネットは初めて聴きました。CLAUDIO PUNTINって、いったい何者ですか?彼はきっと只者じゃないですね!もう本作に関しては、これが聴けたというだけで大満足してしまった私です(笑)
4曲目のPANCHOは、ラテン調で明るく実にノリが良い。が、そこはやはり変拍子を含むけっこう複雑な構成です。7拍子に乗ってNILS WOGRAMのソロ、威勢の良いSTEPHAN MEINBERGのトランペットソロも◎。
6曲目のHAVE YOU BEEN TO THE STATESは、拍子もテンポもめまぐるしく変化し、多彩な場面展開を伴う複雑怪奇な構成を持つ楽曲。ソリッドなアンサンブルはさすがの素晴らしさで、どこを切り取っても面白い。TILMAN EHRHORNの吹きまくりテナーソロ、JOHN SCHRODERの手数が多くスピード感のあるドラムも光る。
7曲目のTAKE ME BACKは、ゆったりとしたムードで、美しいハーモニーを生かした繊細なアンサンブルがステキ。STEFFEN SCHORNのバリトンサックスによる縦横無尽なソロも良い。
8曲目のECCENTRIC PERSONALITYは、何が凄いって、変拍子が複雑過ぎて数えることすら出来ず何が何やら分からんところがまず凄い(笑)ドラムを聴きながらビートを感じるのがせいいっぱい(;^_^A というよりも、これだけの複雑さにもかかわらず、聴き手はただビートを感じるだけで音楽に乗れて面白く聴けてしまうということにただただ感心する。NILS WOGRAMはドスの効いた低音やら重音やらをトロンボーンで連発し、ピアニカに持ち替えるとそれがまためっちゃ可愛らしい音色なくせして「ほれ、いったらんかい!」的バッキングでFRANK SPEERのアルトサックスソロを煽りまくってるのが可笑しい(笑)
スローテンポの曲でもテンションは失っていませんし、どの曲もそれぞれに聴き応えのあるものばかりで面白いです。

本作にはベースがありませんが、無くて正解。それによってバリトンサックスやバスクラリネットの低音パートを含むアンサンブルの素晴らしさをよりいっそう堪能できると思うからです。ハイテンションで一体感のある演奏は迫力満点ですし、各人のソロもドラムも文句なしのハイレベル。1曲目とラストはそうでもないのですが、あとの7曲はもう変拍子のオンパレードだわ、テンポも表情もはコロコロ変わるわという実に変化に富んだ一筋縄ではいかない凝りに凝った楽曲ばかりで全然退屈しません。管楽器6人とドラムの、それぞれの魅力と特徴を生かして入念に構成されたスコアを書けるNILS WOGRAMの才能と、難曲にもかかわらず一糸乱れぬアンサンブルで聴き手を魅了する7人に拍手を送りたい。

*オマケ
私にとって本作のハイライトは、なんといっても2曲目のクラリネットソロです。いやはや、こいつぁー凄いですぜ。ブチ切れるところなんぞは何べん聴いても笑ってしまう。CLAUDIO PUNTINは、クラリネットという楽器に対する先入観(←あくまでも私の)をたったの1曲で見事に打ち破ってくれたのです。CLAUDIO PUNTINさんの名前、何て読むのか分からんけど(クラウディオ・プンティンかな?)、絶対覚えとかな。

御用とお急ぎでないかたはNILS WOGRAMのHPへどうぞ。
     http://nilswogram.com/

STEFFEN SCHORNのHP。
     http://www.steffenschorn.de/

CLAUDIO PUNTINのHP。
     http://www.puntin.com/

JOHN SCHRODERのHP。
     http://john-schroeder.de/

■NILS WOGRAM SEPTET / SWING MORAL (Enja Records Horst Weber enja 9166 2 )
NILS WOGRAM (tb, merodica) (1972年11月7日、ドイツ生まれ)
STEFFEN SCHORN (bs, bcl) (1967年生まれ)
CLAUDIO PUNTIN (cl) (1965年生まれ)
TILMAN EHRHORN (ts) (1972年10月10日、ドイツ生まれ)
FRANK SPEER (as)
STEPHAN MEINBERG (tp)
JOHN SCHRODER (ds) (1964年、フランクフルト生まれ)
入手先:HMV(通販)