ANTOINE HERVE / ROAD MOVIE | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

ANTOINE HERVE(1959年1月29日、パリ生まれ)を最初に聴いたのは、MOUTIN兄弟とのピアノトリオによるCORNERSTONE(Atelier Sawano)(←Nocturne盤のSUMMERTIMEとほぼ同内容です)というスタンダード集でしたが、正直申し上げてピンと来るものがなく、それきりになっておりました。今回は、お気に入りのFRANCOIS MOUTIN、ARI HOENIG、STEPHANE GUILLAUMEが参加ということで入手。フランスジャズ界の大物MICHEL PORTAL(1935年、フランスのバイヨンヌ生まれ)も2曲で参加しています。

本作は2006年11月リリース(録音年月日不明)、全8曲がANTOINE HERVEのオリジナルで、隠しトラックが加わります。要所に配分されたチェコ共和国の弦楽四重奏団QUATUOR KOCIAN(1972年編成。英語表記ではKOCIAN QUARTETとなります)は、いわゆる甘ったるさや軟弱さとは無縁の演奏で、緊張感と深みのある音作りに貢献しています。曲によって、また場面によって編成も様々に変わりますが、大所帯ながらサウンドのまとまりも良く、ANTOINE HERVEの作曲家、編曲者としての手腕も光っています。

本作で一番のお気に入りは、なんといっても1曲目のDJAKHARTAです。とにかく絶妙なアンサンブルが聴いていて凄く気持がいい!いかにも木管的な音色を持つSTEPHANE GUILLAUMEのソプラノサックスによるソロが聴きものです。MARKUS STOCKHAUSENって、なかなかかっこええトランペットを吹く人ですな。終盤近くのインタープレイも聴きもの。
4曲目のROAD TO NORTHSEA PART 3は、単純なリフの上でトランペットと絡み合いつつ、御大MICHEL PORTALのソプラノサックスがメインを飾ります。
5曲目のRUE DES LOMBARDSは、全編を支配する緊張感がいいですね。MICHEL PORTALの縦横無尽のバスクラをメインに、ピアノ、ベース、ドラムス、要所に配されるパーカション、迫力あるストリングスが加わるスリリングなインタープレイが聴きもの。シリアスでアブストラクトながら聴き応えは満点です。ここでは特に、ARI HOENIGの変幻自在なドラムスが素晴らしい。
6曲目のCELTICK VARIATIONSは、民族音楽的、クラシック的、現代音楽的と様々に表情を変えて行きます。タイトルにあるようにケルト音楽への傾倒を示していると思われ、バグパイプ(珍しいですね)が華を添えています。STEPHANE GUILLAUMEのフルートソロが◎。
7曲目のDEMONS TARESは、ボンバルド(フランスのブルターニュ地方を起源とする伝統的木管楽器でオーボエの祖先。ダブルリードで少々けたたましい音色)を大きくフィーチャーした賑やかで面白い曲ですが、何だかもの凄く複雑に聴こえて、演奏するのがめっちゃ難しそうな曲です(;^_^A ANTOINE HERVEのソロ以降は単純で分かりやすい6拍子になりますが?(笑)
8曲目が終わって、隠しトラックにあるのはユーモラスなテーマを持つ曲で、アドリブでは、本作に全く出てこなかった高速4ビートジャズをピアノ、ベース、ドラムスで演奏。ANTOINE HERVEのモーダルな弾きまくりソロも聴けまっせ。

本作はピアノがメインという訳ではなく、大編成のアンサンブルの妙と各人のソロを聴かせるという点に重点が置かれており、入れ替わり立ち代りする様々な楽器をまとめ上げるANTOINE HERVEの手腕が冴えています。録音の良さもあるかもしれませんが、楽器のそれぞれの音がとてもクリアに聴こえてきますし、迫力あるアンサンブルによるサウンドのシャワーを受けていると爽快そのものといった感じがして気持がいいです。

御用とお急ぎでないかたはANTOINE HERVEのHPへどうぞ。
        http://www.antoine-herve.com/

MARKUS STOCKHAUSENのHPはこちら。
http://www.markusstockhausen.de/

KOCIAN QUARTETのHPはこちら。
        http://concerts-prague.cz/Kocian/

■ANTOINE HERVE / ROAD MOVIE (Nocturne NTCD 391)
ANTOINE HERVE (p, cond, comp, arr)
MICHEL PORTAL (ss (4), bcl (5) )
STEPHANE GUILLAUME (ss (1, 7), as(3), fl (6) )
MARKUS STOCKHAUSEN (tp)
FRANCOIS MOUTIN (b)
ARNAUD FRANK (perc, bongos & congas)
DANIEL CIANPOLINI (marimba, hang & timbales)
ARI HOENIG (ds)

QUATUOR KOCIAN (KOCIAN QUARTET)
PAVEL HULA (vn)
MILOS CERNY (vn)
ZBYNEK PADOUREK (va)
VACLAV BERNASEK (cb)

JEAN-LOUIS LE VALLEGANT (bombarde)
HUBERT RAUD (bagpipe)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)