*以下は作品紹介というより、「アーティチョークのオーディオ奮闘記」と「ANDRE CECCARELLIを知ることになった経緯」がいっしょくたになったようなものと思っていただいて、気楽に読んでいただければ幸いです。
DEE DEE BRIDGEWATERというシンガーは、私にとって永遠の憧れのような存在で、ファンになってかれこれ25年以上。彼女のリーダー作は、初来日時に日本で録音しTRIO RECORDSからリリースされた初リーダー作AFRO BLUEから、シャンソン集としてリリースされた最新作J'AI DEUX AMOURSまでの、おそらく全てを持っているつもりです。
DEE DEE BRIDGEWATERの本作こそは、私がANDRE CECCARELLIを追いかけるきっかけとなった曰く因縁つきの作品です。新しく組み直したオーディオシステムで本作を聴くことにより、これまで分からなかったANDRE CECCARELLIのドラミングの素晴らしさに初めて気がついたのです。私がDEE DEE BRIDGEWATERのファンを続けていなかったら、そして新しく組み直したオーディオの良い音で本作を聴くことがなかったなら、おそらくANDRE CECCARELLIというドラマーを知ることはなかったでしょう。
現在使用しているオーディオは、20年以上前の古~いJBLと、やはり同じぐらい古~いDENON(当時はデンオンといった)のアナログプレイヤーだけを残して3年ほど前に新しくシステムを組み直したものです。『いい音が聴きたい-実用以上マニア未満のオーディオ入門-』(石原俊 著、岩波書店)を読んだのがきっかけでした。筋金入りのオーディオマニアの皆さんから見れば、貧弱でごくシンプルなシステムにすぎないかもしれませんが、私は今の音で十分満足しています。
オーディオの知識など全くなかったので、まず図書館で何冊も本を借りてきて片っ端から読みました。オーディオ用語のひとつひとつの意味を何とか理解し、オーディオの世界を俯瞰して、大雑把でもいいから音の出る仕組みと良い音を出す方法を知りたかったからです。オーディオ関係の雑誌も何冊か買って読みましたが、いよいよ購入する段になって最も参考になったのは、オーディオ専門店の店員さんのお話だったのではないかと思います。
こんなふうに何かに夢中になると人間って痩せるんですよね。私はこれで体重が3~4キロ減りました。しかも何かに夢中になって痩せたということでは、これまでの最高記録(笑)本や雑誌を読み、限られた予算内で何を買うべきか、どうすれば良い音を出せるかということについてあれこれと考えを巡らせるのは、旅行の計画などとは比べ物にならないほどのわくわく感に満ちた実に楽しい作業でした。
で、案の定、アンプとCDプレイヤーが届いただけでドキドキのちょっとした興奮状態に陥りました。が、しかーし!箱からブツを取り出す段階で早くも予想外の問題が発生。何しろこのアンプが重いのなんのってチョコレートを箱から出すのとは訳が違いました。とてもやないが自力ではコヤツを箱から出されへんかもしれんと思ったのですが、そのときたまたま家にいたのは私だけ。しかし、とにかく箱から出さなければ先へ進めません。ぎっくり腰になったらどないしょと思いながらなんとか持ち上げようとするのですが、箱も一緒に持ち上がってしまう(笑)しかたがないので持ち上がらないように箱を両足で固定しながら(想像しないでね)「ぬおお~っ!」という感じで引っ張り出してやっとのことでアンプを床に置いたとたん、汗がどっと吹き出ました(^▽^;)
一体何キロあるんだこれは?とカタログ見たら22.5キログラム!「米袋2つ分かぁ。中に何入ってるんやろ?ほとんど鉄板ちゃうん?」と思ったのをよく覚えています。それに、オーディオ専門店の店員さんも不親切ですよね。買う前にひとこと「言うとくけどこのアンプ、めっちゃ重いよ。」と忠告してくれてたらええものを(笑)
CDプレイヤーのほうはアンプほど重くなかったので、こっちは問題なくすんなりといきました。
次に届いたのがオーディオラック。組み立てるのは簡単に出来ました。ところがラックを床に置く段になってまたまた問題発生。このラックの脚はスパイク状でとんがっている為、そのまま下ろすと床にブッスリと突き刺さってしまうので、4本のとんがった脚の下にスパイクマウントなる部品を敷かなければなりません。このときは家にいた当時小学生だった息子に手伝ってもらいましたが、これがまた、なかなか大変だったんです。
息子:「アッ、あかん、ずれた!」
私:「早よして、重いっ!」
息子:「ギャッ、手ぇに刺さるー!」
などとワーワー言いながら、ようやく床の定位置に下ろすことが出来たときには、やはり汗びっしょりに(;^_^A
そんなこんなで、女の細腕で機器の重さと格闘し、白魚のような指(ほんまかいな)にスピーカーケーブルの芯線を思い切り突き刺して血ぃ流したり(←これは本当)もしたけれど(笑)なんとか無事に全てがラックに収まり、配線も済ませることが出来ました。
さて、セッティングの最終段階でスピーカーの位置と微妙な(というかテキトーかもしれん)角度を調整するために選んだのがDEE DEE BRIDGEWATER / KEEPING TRADITION。以前からのお気に入りだったヴォーカル+ピアノトリオという基本的(?)で聴き分けやすいフォーマットのCDは、サウンドチェックにちょうどいいかもしれないと思ったからです。
そうしたら、まず最初にスピーカーから出てきた音の良さにちょっとびっくり。無理もありません。子育ての間は音楽どころではなく、オーディオ装置は子供のオモチャにされないように押入れに格納して長いことCDラジカセを使用。本格的オーディオシステムで音楽を聴くのは10年振りだったのです。大袈裟かもしれませんが「まるでヴォーカリストの口の中がそっくり見えるようだ!」と思ってしまいました(^▽^;)
ヴォーカルと各楽器の音を注意深く聴き分けながら“音”をチェックしているつもりでも、“演奏そのもの”の素晴らしさに引きずり込まれてしまうのは自分ではどうしようもありません。ふと気がつくとトリオの演奏もヴォーカルに負けないくらい素晴らしいではありませんか。なかでも、まるで歌っているような、軽快で溌剌としたドラミングに耳がいってしようがない。最初は1曲目のJUST ONE OF THOSE THINGSの1:46あたりで短いドラムソロ(というかキメみたいな感じですが)に入ったときに「うおっ!」と思いました。そして今度は、5曲目のWHAT IS THIS THING CALLED LOVE ? の冒頭のドラミングを聴いたとたんノックアウト!演奏を聴いて痺れるとはこういうことかと思いました。
それからというものは、本作最後の1曲が終わるまでANDRE CECCARELLIのドラムにヤラレっぱなし。「この人は凄い...。いや、凄いなんてもんやない!」と改めてクレジットをまじまじと眺め、ANDRE CECCARELLIの名前を脳内にしっかりとインプットしたのはいうまでもありません。
京都のJEUGIAでCECCARELLIのリーダー作FROM THE HEARTを見つけたのはそれからすぐのことで、これを聴いたとたんに「私の聴きたかったジャズはこれだっ!」と直感。それ以来ずっとANDRE CECCARELLIを追いかけ続けているのです。
*オマケ
教訓その1.重いアンプを箱から出すときは、箱と床をセロテープで留めておきましょう。
教訓その2.スパイク状の脚を持つオーディオラックを床に設置する場合は、スパイクマウントをあらかじめ脚先にセロテープでひっつけておいてから床に下ろすと簡単です。
教訓その3.スピーカーケーブルの芯線で怪我をしないように、手には皮手袋をはめて作業しましょう。
↑今頃気ぃついてもなーんの役にも立たない教訓(∋_∈)
御用とお急ぎでないかたは、リニューアルされたDEE DEE BRIDGEWATERの↓HPをご覧ください。
■DEE DEE BRIDGEWATER / KEEPING TRADITION (POLYDOR POCJ-1184) 国内盤
ANDRE "DEDE" CECCARELLI (ds)