YVES LEVEILLE / QUANTIQUE | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

YVES LEVEILLE(カナダ生まれ)の3作目となる本作は、2003年の録音で同年のリリースと少々古いのですが、聴いて良かったので書きましょう。
8曲全てがYVES LEVEILLEによる作曲と編曲。とにかくテーマの良さが際立っており、まずこの点でリーダーの並々ならぬ才能を感じました。各曲ともに概ねテーマ→アドリブソロ→テーマという分かりやすい流れで長尺な曲が多いのですが、アレンジの良さもあってありきたりには聴こえず、どの曲も素晴らしい出来。最後の1曲までアルバム1枚をまるごと堪能出来ます。
本作では特に超絶技巧がバンバン出てきて圧倒される訳ではありませんけれど、よく練られた楽曲のひとつひとつにYVES LEVEILLEの美意識が横溢し、繊細なホーンアンサンブルを生かしたヨーロッパ的な品性と優雅さ、ダイナミックに躍動するシリアスで現代的なかっこよさの両面において、各プレイヤーの演奏は高水準で安定感があり、聴きごたえは満点です。

1曲目のPANTOMIMEは、美しく翳のあるミステリアスなワルツで始まり、ベースソロ、バスクラのソロを経て4ビートへ移行する現代的で洗練された曲。よく歌うベースソロ、縦横無尽なバスクラのソロ、YVES LEVEILLEの艶のあるタッチによるピアノが聴きもの。
本作の白眉は2曲目のTRANSERIPTION D'AUTOMNEです。ピアノの流麗なカウンターメロディにまず心惹かれているうちに、フレンチホルンとクラリネットによる清新なホーンアンサンブルが5拍子+3拍子+3拍子+5拍子のパターンに乗って美しいテーマを奏で始めると思わずうっとりしてしまいます。続くピアノソロとベースソロもみずみずしい叙情と優しさに溢れており、聴いているだけで心が休まります。
3曲目、タイトル曲のQUANTIQUEは、一転して重厚なホーンサウンドを強調したテーマで始まるダイナミックな4ビート曲。吹きまくりテナーソロ、熱いクラリネットソロ、ホーンアンサンブルとドラムスによる4小節交換を経てテーマに戻る現代的なかっこ良さに溢れた曲。
4曲目のRITUELは、クラリネット、ソプラノサックス、ピアノによるトリオ。EGEA作品にも通じる室内楽的な雰囲気の、静謐な美しさをたたえた曲。ピアノはバッキングに回って脇役に徹し、クラリネットとソプラノサックスによるハーモニーや絡みの美しさを最大限に聴かせていて素晴らしいです。
5曲目のBROUILLARDは、ホーンアンサンブルによるドラマティックなテーマからシリアス4ビートへ。いやはや、この曲におけるYVES LEVEILLEのアドリブのかっこよさといったら、まるでJEAN-MICHEL PILCが乗り移ったみたいで実に素晴らしいではありませんか。別の引き出しを急に開けて見せられたような感じがして驚きました。10:17の長尺曲ですが、最後まで聴かせてくれますぞー。
どの曲も本当にステキなのですが、長くなるのでこのへんにしておきましょうか。

実を申しますと、本作は2作目のZONE INDIGENEとともに2004年7月に購入していたのですが、ろくに聴かないままに棚で眠らせていました。この連休にそういった可哀想なCDばかりを集中的に聴いていたのですが、これほどの素晴らしい作品をどうして今日まで2年間も放っておいたのかと後悔しています。2年前の時点では、私が求めていたジャズとは傾向が違っていたからなのかもしれませんが、この2年のあいだに器楽ジャズをたくさん聴いたおかげで、未熟だった私の耳が本作の良さを理解出来るまでに成長したということなのでしょうね。
今度YVES LEVEILLEの新作がリリースされたら入手しようと思っています。

御用とお急ぎでないかたはYVES LEVEILLEの↓HP(試聴も出来まっせ)をご覧ください。
                http://www.yvesleveille.ca/
カナダのジャズレーベルEffendi Recordsの↓HPはこちらです。
                http://www.effendirecords.qc.ca/
■YVES LEVEILLE / QUANTIQUE (Effendi Records FND 038)
YVES LEVEILLE (p)
RICHARD SAVOIE (ts, ss)
MATHIEU BELANGER (cl, b-cl)
JOCELYN VEILLEUX (frh)
MARC LALONDE (b)
UGO DI VITO (ds)
入手先:サニーサイドレコード(通販)