DAG ARNESEN / TIME ENOUGH | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

DAG ARNESEN(1950~)をリーダーとする、TERJE GEWELT(1960~)、PAL THOWSEN(1955~)とのトリオ(いずれもノルウェイ出身)。DAG ARNESENのリーダー作としてはMOVIN'(Taurus)以来10年振りということになるようです。
実は正直なところ、このアルバムを最初に聴いた時は、アップテンポの曲でドラムが張り切る傾向があることから、それが耳についてうるさく感じられるので、いまひとつ演奏にのめりこめず、このアルバムをさほど好きになれませんでした。そこで、テンポがミディアム以下の曲だけを選曲して聴いてみたところ、やはりこの盤はメロディの綺麗な音数の少ないミディアム~スローテンポの曲のほうがええやんか~♪ということになりました。とはいえ、PAL THOWSENは客観的に見ても充分に優れた演奏をしていると思うので、これはたんにTHOWSENが私好みの演奏をしないドラマーだからという個人的な理由によるものです。
ミディアム~スローテンポの曲のうち最も気に入ったのが猫にちなんだ2曲。スローバラードのSTRIPENは夫婦で猫好き(たくさん飼っているそうです)なARNESENの愛猫の名前だそうで、英語でTABBY(トラ猫)の意味。日本語だとシマシマちゃんですかね。ピアノの端正で繊細なタッチが印象的で、STRIPENのしなやかで気品のある身のこなしや優雅で愛らしいしぐさが目に浮かびます。GEWELTの歌心を感じるベースソロがまた素晴らしいです。
猫にちなんだもう1曲はアルバムのラストを飾るピアノソロ、TIL JENS。こちらは愛猫JENSと悲しいお別れをして帰宅後に作曲したということなんだそうでが、センチメンタリズムに陥ることなく、静かに、優しく、感情を抑制してシンプルに表現していて悲壮感はありません。落ち着いた雰囲気を持った、心が安らかになる美しい曲です。
叙情的で端正なメロディラインが印象的な曲が多いこのアルバムのなかで、ちょっと変わっているのがMADAM FELLEという実在の人物の名前をタイトルにした軽快なテンポの曲。フォークロア調で明るくて、このアルバムには珍しく少々コミカルなところも感じられます。ここではドラムが奥行きを感じさせる切れ味鋭い演奏をしており、溌剌として息の合ったアンサンブルが爽快感にあふれています。
DAG ARNESENはテクニックで聴かせるタイプのピアニストではない(と思う)のでアルバム全体に派手さはないものの、綺麗なメロディを生かした良い曲を書いていますし、三者の演奏もよくまとまっていると思います。特筆すべきはやはりGEWELTのベース。豊かによく伸びて響きが大変に美しいので感心してしまいました。
御用とお急ぎでないかたは↓MICのページで最新のノルウェイジャズを試聴してみてください。
■DAG ARNESEN / TIME ENOUGH (Taurus TRCD 845)
DAG ARNESEN (p)
TERJE GEWELT (b)
PAL THOWSEN (ds)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)