そら     12話 | ほのぼのりんご日和。

ほのぼのりんご日和。

他愛もない日常の戯言。

「おはよう!」

あの日から2週間が経って私たちは元の仲を取り戻した。

この友情は本物・・・。

「あっ!夏空ぁ~。おはよう!」

いつものようにとても明るいクラス。

楽しい空間。

私はここが一番好きだよっ。

「おはよ。」

私が席についたとき、星那が教室に入ってきた。

「星那っ。おはよう!」

結局のところ私たちは付き合っている。

そして・・・・

「桃!桃!」

星那が教室を離れたときだった。私は桃を呼び出した。

「どうしたの?相談?」

にっこり微笑む桃はまさに天使!

「あのねあのね!今度の日曜日星那と映画見に行くんだけどね、服・・・何着て行こうかなって桃!一緒に洋服買いに行かない?」

手を合わせて桃にお願いする仕草。

「う~ん・・・。いいよっ!せっかくだしあたしもなんか買おうっと!」

「やった!ありがとう!」

何がいいかなぁ~。やっぱり可愛い服がいいよねっ!

そう思いながら、考えこんでいると星那が入ってきた。

「何話てんの?」

「ななななななっ!なんでもないっ!」

二人して大慌てですごく不自然だよ・・・。

我なら恥ずかしい。

「じゃあ放課後ねっ。」

こっそり耳打ち。

「星那っ!今日は先帰ってていいよ!」

帰ろうとしている星那に私は言った。

「桃となんかあるんだろ~。なんかあったら電話しろよっ!」

「うんっ!」

やっぱり星那は優しいな・・。

「桃~。行こうかぁ~」

こうして私たちは学校を出た。

「ねぇ~。どれが似合う?」

桃のオススメでこの前で出来たばかりのお店に入った。

「えぇ~。う~ん・・・。このワンピとかは?かわいいじゃん?ウサ耳カチューシャつけて・・・・っと可愛い!」

そう言って桃が選んでくれた服は今まで着たどんな服より可愛くて私に似合っていた。

「おおおおぉ!可愛い!さすがっ!桃。ありがとう。私コレにするね~」

試着室を出てレジへ行った。

「5000円になりまぁ~す。」

「ありがとうございましたぁ~」

5000円とはなかなかお手ごろな価格だ。

桃にしては意外・・・。

「ねぇ。夏空カチューシャピンクだったよね?」

急に聞かれてコクリと頷くことしか出来なかった。

「じゃああたしは、赤にしようかなぁ~。」

とうれしそうに桃は赤のカチューシャを取った。

「あぁ!おそろだねっ!」

そう言いながら私も買ったばかりのカチューシャを頭に付けた。

初めて人とこんなに関わりを持った。

そこはとても温かくて居心地のいいところだった。

もっともっと早く知りたかった。

小さいことの私はお母さんが世界のすべてだった。

お母さんがいればそれでいい。

でも、お母さんのいない今そんな考えじゃ生きていけない。

でも私は人と関わることで昔の自分はどこかへ消えた。

「桃?私桃に会えてよかった。」

なんとなくそんなことを口にしてみた。

「なっ。何言ってんのよ。」

ちょっと顔を赤くしながら答える桃はとても愛らしい。

よかった。

本当に一時期はどうなるかと思ったけどね。

交差点でちょうど赤から青に変わった。

瞬発的に私は桃より一歩先に出た。

その時だった。

私の手をあちらに引こうとする桃の手と。

私を引いた後、桃が誤って道のど真ん中に転んだのも・・・・・。

すべてがスローモーションのように見えた。

ドンッ

私が地面に倒れた直後だった。

何かと何かが激しくぶつかった音がして、周りの人が騒ぎ始めた。

でも、私の横に、桃の姿はなかった・・・・。

何?何が起こったの?

あの一瞬のうちに何が起こったのか把握しきれない。

なんで私の横に桃がいないのか・・・。

あの時桃は何をしたのか・・・。

私は恐る恐る後ろを振り向いた。

「誰か!誰か救急車だ!!」

「きゃああああああああああ!」

「何だ?」

冷静に考える人、ただ叫ぶ人、写真を撮ろうとする人。

みんな、反応はさまざま・・・。

でもみんな同じなのは、桃が轢かれたことを把握している。

頭が理解してからまた数秒動けなかった。

「桃!!!!」

叫びながら桃の元へ走った。

どんなに揺らしても桃は起きてくれない。

「桃?どうしたの?こんなとこで寝てたら引かれっ・・・・」

桃は轢かれたんだ。

そのとき、やっと言葉の意味を理解して言葉を飲み込んだ。

ピーポーピーポー・・・・。

そうこうしてるとき、5分もの時間をかけて救急車がやってきた。

「この子の保護者は・・・。」

白衣を着た医者らしき人が周りを見渡した。

しんと静まり返る。

それは当たり前のことなのだ。

ここにいる誰一人桃が誰なのかさえもわかっていないのだ。

ここで桃を知っているのは私だけ。

でも私は保護者じゃない。

でも・・・・。

「はい・・・。」

私は白衣の男性に近付き説明した。

「分かりました。あなたはこの子のお友達なのですね?」

「はい。」

私は桃と一緒に救急車の中に入った。

どうしてこんなことになってしまったのか。

なぜ今日ここに来てしまったのか。

すべてをやり直したかった。

「脈拍数45、もうかなり危険な状態だ。保護者を呼べ。」

桃をずっと見ていた白衣の男性は他の人たちに言った。

桃の頭はべっとりと血が塗られていた。

ごめんね。ごめんね・・・。

桃は私を助けようとしてくれたんだ。

でもね・・・桃意味ないじゃん・・・。

桃が・・・桃が死んだら意味ないじゃん・・・。

どんなに必死に桃が私を助けてもそれじゃ意味ないよ・・・。

『はい。もしもし?』

私はどうすることもできなくて・・・結局星那に電話した。

『桃っが・・・たすっけって・・・』

星那の声を聞いたら急に怖くなった。

桃がこのまま目を覚まさなかったら・・・・どうしよう。

『どうした?』

『桃がっ私のっかっわりに轢かれちゃったの・・・・。』

泣きすぎて上手く話せない・・・。

ちゃんと伝わったのかな・・・。

『今どこ?』

桃が弾かれたってことはとても大変なことなはずなのに星那はとても穏やかだった。

『救急車の中。』

『いやwそれじゃあ分かんないからw』

『私立病院に向かってるところ。』

『分かった。今から俺も行くからな?』

『うん』

そうして数分して病院に到着した。

「星那っ!」

入り口近くに星那を発見してすぐさま駆け寄った。

「で。何があったんだ?」

私を覗き込むその目には嘘は付けないと思った。

「あのね・・・」

それからすべてを話した。

星那の答えがとても怖かった。

「そっかぁ。でもこれは事故だから。誰も悪くないさ。だからそんなに泣かないで?」

「うん。」

そうして私たちは一旦家に帰った。

でも桃のお母さんから、意識が戻ったとの電話はこないまま朝が来た。

どうしよう。

桃がこのまま・・・・・、このまま目を覚まさなかったら。

そんなことを考えていたときだった。

ピリピリピリピリ・・・・。

突然家電が鳴った。

「はい?」

『夏空ちゃん?私、桃の母親ですけど・・・。』

それは桃のお母さんからだった。

「あれ?でうしたんですか?」

『それがねっ。桃が・・・桃が奇跡的に意識を取り戻したのよ。それで桃が貴方と話がしたいって言ってたの。だから今から病院にきてくれるかしら・・・。』

桃の意識が戻った!

私はそれだけがうれしくてただ一心に病院に走った。

「桃!」

バタバタと病院の廊下を走り、桃の病室の扉を乱暴に開いた。

「あっ。夏空・・・。ここに座って?」

桃はベットから上半身を起こして座っていた。

でもその頭には包帯が巻かれていた。

「桃・・・ごめ「あたしね・・・。これでよかったと思ってる。」

桃は私の声を遮ってこう言った。

「え?」

私が聞き返すと、桃は話し始めた。

「あたしね・・・。寂しかったの。本当は・・・。ずっとずっと・・・。だから夏空が星那を取ったときはすごく悔しかった。だからあんなことしちゃったけど・・・。今はもういいの!だって今星那が一番大切だと思っているのは、あたしじゃなくて夏空・・・貴方。あたしは・・・これで本当によかったと思ってる。これでもし私が死んでしまっても。」

静かにすごく穏やかに言う桃の目には涙が光っていた。

「何言ってるの?そんなの桃じゃないよ~。元気出して?もうコレが最後みたいな言い方しないでよ・・・。」

私がそう言うと桃は言った。

「あたしさ・・・。分かるの。もうそろそろあたしは死ぬのかって。でもこんな死に方ならいいかなって。

だってあたしは、あたしが一番好きだった人の愛しい人を守れたんだもの・・・・。あたしはもういいんだ。後は貴方たちが幸せになってくれたらそれで・・・・。」

「も・・・・も?」

そう言い終わった桃は急に頭を抑えながら苦しそうに言った。

「ごめんね。もうだめかな・・・。あたし・・・頭痛いや・・・。」

「桃!?今お医者さんを・・・・「待って!いいの・・・。もういいの・・・。最後に言わせてね・・・。あたしは夏空に会えてすごく幸せだったよ・・・。だからあたしは、夏空を守ったの。だから絶対に自分を責めちゃ駄目だよ?」

そう言い終わると、静かに目を閉じた。

「桃!?もも・・・・。どうしたの!!!」

私が泣き叫んだのか桃のお母さんが来てくれた。

「夏空ちゃん!?どうした・・・・・。そう。ありがとう。」

桃のお母さんは何かを悟ったのかにっこり微笑み私にお礼を言った。

「この子・・・。夏空ちゃんに会ってからすごく毎日が楽しそうだった。それにね・・・私が夏空ちゃんに電話する前に不思議なことを言い出したの。『夏空を呼んで?二人だけで話したいことがあるの。でも話し終わったら・・・あたし死んでるかも・・・』って笑ったの。何言ってるの?って言ったらね『たとえそうだとしてもお医者さんは呼ばないで?知らないうちに死んでましたって言ってね?』って言ってた。でもそれが本当だったなんてね。 夏空ちゃん・・・。この子と仲良くしてくれてありがとう。」

そう言ってお母さんはお医者さんに桃の死を告げに病室を出て行った。

桃が・・・死んだ?

「桃ぉ~・・・。」

私はフラフラと桃の遺体まで行き、桃に触れた。

「なんで私を残して逝っちゃうの?」

初めて目から涙が落ちた。

今は泣き桃の体に一粒一粒落ちてゆく。

私は・・・また一人。

大切な人を失った・・・。

そのときだった。

「夏空っ!」

誰も来ないはずの後ろから誰かが駆け寄ってきた。

「星那・・・。」

星那はこちらに近寄ってきて、桃に触れながら行った。

「桃は・・・これでよかったのかも・・・。」

私は耳を疑った。

なんでみんな口を揃えて、こう言う。

「なん・・・で?」

そう聞くと星那はゆっくりと話した。

「だって・・・。桃は笑ってるよ?これが辛いように見える?俺には『私の人生すべてが幸せでした』って見えるけどなぁ~」

そういわれて私は初めて桃の顔を見た。

桃の顔は今まで見たこともないくらいに笑っていた。

それから桃のお葬式があって、火葬があって・・・・。

すべてが終わった。

「桃はもうこの世にはいないんだ・・・。」

ポツリと私が言うと横にいた星那は、その問題に答えた。

「そんなことねぇじゃん?」

「え?」

星那はいつかみたいに、空を見上げて言った。

「桃はきっとずっと、この空で俺たちと繋がってる!だから大丈夫!」

星那は親指を立てて、私に笑いかけた。

そうか・・・・。

大丈夫なのかな・・・・。

桃・・・私は貴方に会えてとても楽しかったです。