前と変わらない日常が私の元に帰って来た。
桃と私は大親友で、星那と私は友達で・・・。
みんなも前のように仲良くしてくれている・・・。
でも私はこんな日常に素直に‘おかえりなさい’が言えない。
本当にこれでよかったのか今でも分からないまま時が流れている・・・。
桃は今でも何を考えているのか分からない。
どうしてあの時、桃が交換条件にしたのか分かんない。
好きなのなら、話し合うくらいしようよ・・・。
星那は・・・・。
星那は・・・すごく辛そうだった・・・。
ごめんね・・・。
そうだった。・・・・・・。誰を責めるって、私が一番悪いのに・・・。
何してんだろう・・・。
あぁ。駄目だ・・・。頭まで駄目になったのかな・・・。
「いってきまぁ~す。」
あれから1週間くらいたってるけど叔母さんは帰ってこないまま・・・。
結局のところ、私は一人きりなまま大人になって行くのかな・・・。
「おは・・・・・。」
教室についたとたんに、一気にしんとした。
空気が凍りつくのを感じたときにはもう手遅れだった。
「夏空。今日ね星那お休みなんだってさ!」
桃の声はおっとりとしていて、気持ち悪いくらいだった。
「そ。そうなんだぁ~。じゃあ桃は帰りにお見舞い行かなきゃだねぇ~。」
引きつった笑顔で答える私。
「そうだねぇ~。これが終わり次第ねっ!」
くすくすと笑う桃を不審に思うのもつかの間、桃は私の髪を鷲掴みすると教卓まで連れて行く。
「はぁ~い!みなさぁ~ん。今から天音夏空さんがあたしたちに言いたいことがあるそうでぇ~す!」
桃の大きな声は教室中、全フロア中に響いた。
ざわざわと人が集まってくる中で桃は私に近付き言った。
「みんなに謝ってよ。」
桃が口にした言葉に私は絶句した。
あやまる?私が?
何を?桃の彼氏を取ったことを?
「なっにを?」
できるかぎり顔を上げて桃に聞いた。
「は?とぼけないでよねっ!」
そう言って声を切った。
「星那はね・・・小さい頃からみんなに好かれてた。やさしいしかっこいいし・・・。今もそう。みんなみんな星那のことが好きなの・・・。でもね、あたしが彼女なら許してくれるって。なのになのに・・・。あたしを押しのいて夏空は星那を取った。みんなみんな怒ってる。だから、みんなに謝って?」
そう言う桃の目は真っ暗で何も映っていなかった。
でも・・・。こんなのおかしいよ。
桃はどうかしている。
みんなに謝る?
たしかに私も悪い。でも本当にこれでいいの?
ねぇ。聞いてる?私・・。
「後10秒で謝まんなかったらどうなるか知ってるでしょ?」
くすくすと桃の声が聞こえる。
「10」
星那・・・。私は謝るべきなの?
でもここで謝ってしまえば、もう星那とは話せなくなるかも・・・。
「9」
もう一桁だ・・・。
どうする?
桃はどうして星那のことが好きなの?
「8」
星那がかっこいいから?
頭がいいから?
「7」
私には時間がない・・・。
桃が・・・星那が・・・何を考えているのか・・・もう分からない・・・。
「6」
何ももう考えられないよ・・・。
「5」
助けて?
ねぇ。私はなんて答えればいい?
「4」
桃の好きは本当の好きなの?
「3」
ただ見栄えがいいからなんて許さない・・・。
「2」
私は・・・・。私は・・・・・謝らない!
「1」
そのときだった。
ふっと頭の中に浮かんだのは、星那の笑顔だった。
『夏空っ!』
分かった!私の答え・・・。
「わっ、私は・・・。私は謝りません。」
はっきり言ってやった。
私の答え・・・。
これで間違いはない。だって私は私の中の大切なものを守ったんだもの。
「なっ。」
桃はカッとなったのか顔を赤くして、手を振り上げた。
「なっ。何よその目は・・・。」
私はもう逃げない。
大丈夫だよね?星那・・・。
「桃・・・。桃はなんで星那が好きなの?顔がかっこいいから?頭がいいから?そんなんだったら私は許さない。」
キッと桃を睨みながら桃に言った。
「何よ。じゃあ、あんたはなんだっていうのよ!あんたもどうせあたしと同じなんでしょ!?」
桃も負けじと私を睨んだ。
「私があんたと同じだって!?ばっかじゃないの?私はねこの教室の誰より、世界中の誰より星那を愛してる。だから桃のやったことを私は許さない。桃が星那のことを本当に好きだというのならこの前だって星那の辛そうな顔笑ってみてられるはずないもの!」
私は声を張って教室中に響かせた。
「うるさいっ!うるさいっ、うるさいっ!」
桃は耳を塞いで叫んだ。
「今までは星那の一番はあたしだったのに!どうしてなの!?」
怒り狂う桃に私は言った。
「桃は自分のことばかり考えすぎたんだよ。きっと。」
しんとなった教室には桃の泣き声だけが静かに響いていた。
すると、突然教室の扉が開いた。
「夏空っ!」
突然自分の名前を呼ぶ声に後ろを振り向くと星那が立っていた。
「星那?学校休むんじゃなかったの?」
「う~ん・・・。なんだろう・・・。夏空になんかあるような気がして?」
そう言いながら笑う星那を見て私はホッとしたのか涙が出た。
「夏空・・・。」
星那は優しく目を細めて言った。
「もう。終わりにしよう・・・。辛いよ。桃も辛い。俺も夏空も辛い。なっ?」
星那は桃の手をとってそう言った。
「星那・・・。ごめんね・・・。あたし・・・。なにしてたんだろう。馬鹿みたいだよね。ごめんねごめんね・・・。」
そう言いながら泣く桃は、今までのことを後悔しているように思えた。
「夏空・・・。」
そう言うと桃はスッと立ち上がり、私に近付いてきた。
「夏空・・・。ごめんね。あたし頭おかしかったよ。・・・・こんなあたしだけど「桃のやったことは許さない」
私がそう言うと桃は、また顔を歪めた。
「なぁ~んて言うと思った?そんなわけないじゃん!桃は何があっても私の一番の友達だよ!」
にっこり微笑みながら私は言った。
「あっ、ありがとう。あたしは・・・あんなにひどいことしたのにね・・・。」
そう言った後桃はもう一つ小声でつけたした。
「あなたたちにはかなわないなぁ~」
私の選択は合っていたの?
そんなの分からなくてもいいよ・・・。
私は今とっても幸せだから。
世界で一番幸せ・・・。
ねぇお母さん。
私、今すごく幸せ・・・。
こんな気持ちになるのは久しぶりだよ?
ありがとう。お母さん・・・。
産んでくれてありがとう・・・。