そら     9話 | ほのぼのりんご日和。

ほのぼのりんご日和。

他愛もない日常の戯言。

「夏空ちゃん。ごめんねぇ~。おばちゃん今日から1ヶ月海外出張なのよ。えっと、食費と学費は、いつもの場所にあるからそこから使ってね。」

ある朝。6時に起きると叔母さんは慌しく動き回っていた。

独身の叔母さんは仕事の関係上海外に行くことが多い。

でも私が引っ越してきてからはなかったのに結局今日から1ヶ月行くらしい。

「行ってらっしゃい。」

大きな荷物をすべて玄関に運び終わった後叔母さんは私の名前を呼んだ。

「夏空ちゃん。」

玄関を出る直前になって叔母さんは、急に振り返ってふいにこんなことを言い出した。

「恋っていうのはね、一回しちゃうとすごく胸も痛いしいいことなんていないって思うかもしれない。

でもね。恋はそんなことよりもっともっと素敵なことを教えてくれるはずよ・・・・。」

にっこり微笑んでそう言うと叔母さんは大きな声で

「いってっきまぁ~す!!!!」

と言って車に乗り込んだ。

チンッ。

トースターの音がリビングに響く中私はおばさんの言葉を頭の中で再生していた。

きっと叔母さんには何もかもお見通しだったんだ。

どうすればいいの。

叔母さんから貰ったヒントはこのひとつだけ・・・。

でもこんなこと考えてる場合じゃないんだよね本当のこと言うと。

学校に行けば桃たちが・・・・。

もう誰も私と話してくれない。

なのに私のことを監視するような目でみんなが見る。

もう学校なんていらない・・・・。

行きたくないよ・・・。

そう思ったときだった。

ピリピリピリピリピリ・・・・・―。

「もしもし~」

「あっ。夏空?」

慌しくなる携帯を耳元に当てると、そこから聞こえてきたのは、いつも聞いている声だった。

「星那?どうしたの?」

いつもならメールなのにどうしたんだろう。

なんか非常事態?

「あのな。俺実は、今日から夏空の学校に転入するんだよ。」

すごく明るい声で星那が言った。

今日・・・・・から・・・・?

私は耳を疑った。

「おーい。なんだよ。うれしくないのかよ。」

星那はブーと拗ねたフリをした。

「ううん!すごくうれしい。でもなんで?」

「親父の転勤。」

「そっかぁ~」

そこで深い沈黙が訪れた。

お父さんの転勤・・・。

じゃあお父さんはこの町のどこかにいるのか・・・。

私は、あの日からお父さんには会っていない。

もう会いたくもないよ・・・。

「じゃあ。俺もう学校行くね。」

「うん」

星那の転校か・・・。

どうしよう。これじゃあ私がいじめられてるのバレちゃう。

でも今日行かないわけにはいかなし・・・。

今までは嫌でも、叔母さんに迷惑かけないように行ってはいたけど。

今日からいないわけだし・・・。

「いってきまぁ~す」

誰も居ないリビングに一人声をかけた。

「靴・・・・ない・・・。」

靴箱を開けると、そこにシューズはなかった。

今日はシューズか・・・。

こんなのいつもなこと。

今日の餌食はシューズだった。

いつもは筆箱とか、体操服とか小さなものなのに。

よりによって今日上履きなんて・・・。

購買部で売ってるかな。

上履きを靴箱に入れて、のろのろと購買部に向かって歩き出した。

「いやだぁ~。今度はシューズ?うわっ!」

擦れ違いざまにどこかのクラスの子が呟いたのが聞こえた。

こんなの慣れてるっての。

「あれ。さっきぶり。」

誰だよ。

学校で私に話しかけてくるなんて珍しい。

しかもさっきぶりって・・・。

なんのギャグ?

「はぁ?・・・・・・星っな!」

ゆっくり振向くとそこには星那がいた。

「そんなに驚くとことかよ・・・」

いやっ。普通驚くから・・。

「何?誰?あの子。カッコいいけど、夏空に話しかけるって。」

やばい。星那も大変になる。

「ちょっと屋上行かない?」

「うん。てかどこから行くの?」

私は星那を屋上に連れ出した。

クラスに近い階段を上って、屋上の扉を開けた。

「星那っ!」

扉をバンッと勢いよく閉めて私は言った。

「私は・・・、私はいじめられてる・・・。」

あぁ~!もう!はっきり言っちゃった・・・。

だめだ。

嫌われた・・・・。

「なんで?」

不思議そうに私を覗き込む星那。

「桃が・・・。多分桃が命令してる。」

ボソボソと私が言うと星那は空を見つめて言った。

「上等!!!」

「は?」

私がマヌケ面で聞き返すと。

「俺。桃と話し合うから・・・・」

そう言って、星那は私の手を握り締めた。

「そのときは、俺の告白聞いてくれる?」

にっこり微笑みながら言った。

「分かった!約束ね。」

私たちはきっと結ばれる・・・。

私はそう思っていた。

けど、そんなに簡単なことじゃなかったんだよ・・。

もっともっと、深刻なことだったんだよね。