そら     3話 | ほのぼのりんご日和。

ほのぼのりんご日和。

他愛もない日常の戯言。

「初めまして。天音夏空です。ここに来て間もないので分からないことばかりだけど、みんなと仲良くしていけたらうれしいです!よろしくお願いします。」

9月1日。初めての転入。

転入先は、叔母さんの家の近くの中学校。

私のクラスは1-2だった。

入ったときはすごく騒がしかったけど、私が話し始めると静かにしてくれたからよかった。

楽しいクラスになりそうだなぁ~。

「じゃあ夏空の席は・・・。桃の隣なぁ~」

桃・・・。ももちゃんかぁ~。

先生の指を指した席に行ってみると、

「よろしくねぇ~。」

そこに座っていたのは、可愛い女の子だった。

ゆるいカールに茶色の髪。そしてなんといっても大きくて綺麗な瞳。

まるでお姫様。

「よろしくね。」

私もにっこり笑ってみたけどこうゆう子の前だと顔の筋肉が引きつる。

「何でも聞いてね。でもこんな時期に引越しなんて珍しいね。」

「あっ。それは・・・。」

「ごめん。なんか聞いちゃいけなかったのかな。どうしよう。ごめんなさい~」

あたふたする桃ちゃんはとっても可愛い。

「大丈夫だよ。桃ちゃんなら話してもいいかなぁ~」

初めて私に話しかけてきて来れた人だし。

それにこの子となら仲良くなれそうだし。

「え?いいの?」

「うん。その代わり誰にも内緒だよ。」

「うん!」

私は小声で今までのことをすべて桃ちゃんに話した。

「辛かったねぇ~。よしよし。」

そう言って私の頭を撫でてくれた桃ちゃんの手はとても暖かかった。

それから私たちは仲良くなった。

どこに行くにも一緒とゆう関係になった。

「ねぇ~。明日休みだし、遊びに行かない?」

桃ちゃんがお昼休みにそう言ってきた。

「うん。いいよ。初めてだね。二人で遊ぶの。」

そう。4,5人で遊ぶことはあっても、二人だけで遊んだことはなかった。

「じゃあ、あたしの家のこない?」

ニコニコと可愛い笑顔で桃ちゃんは言った。

初めてだ。友達の家に遊びに行くの。

小さい頃から、あまり友達がいなかったせいで、他の人の家なんて入ったこともなかった。

「じゃあ、地図送るから来てね。」

「は~い」

その日帰った後、桃ちゃんからのメールで、家までの地図が本当に送られてきた。

よし!明日は初めて二人だけで遊べるだもん。

早く寝なきゃね。

私はこのとき、そこに行ったゆえに、自分が苦しむなんてそんなこと全然思ってもいなかった。

「ふぉ!?でかっ!!ホントにお姫様だったとは・・・・。」

地図を辿って来たけど、すごく時間がかかった。

あっちで迷い、こっちで迷い・・・・。  ってしてたら行くはずだった時間に1時間もアウト・・・。

どうしよう。よかったかな。

ピンポン~。

「は~い。」

意外にも普通に桃ちゃんが出てきた。

でも・・・。出てきた桃ちゃんの格好は普通とは言えなかった。

「入ってはいってぇ~。」

普通してるっぽいけど全然普通じゃない・・・・。

なぜなら・・・。

ブランド物のドレスにファーてあなたどこに行くつもり?

「桃ちゃん・・・。」

「どう?あたし気合入れてみたんだけど・・。」

いや、気合の入れ方間違ってるよぉ~。

てなことで、桃ちゃんちに入ったけど。

す、すごい・・・・・。

全部ブランドものの家具だよ・・・・。

「す、すごいねぇ~本当にお姫様だったんだね」

「・・・・・・・こんなの、すごくもないし、なんにもなんないよ。」

「え?」

「あ。いや、なんでもない。あたしの部屋いこっか。」

俯いてそう言った桃ちゃんは今まで見たことのない、悲しい表情をしていた。

「うん」

螺旋階段を上ると長い廊下の隅に小さな扉があった。

「入って」

ドアノブを回すとそこには綺麗な部屋があった。

「きれいだねぇ~。いいなぁ~」

中に入るなり私はそう言って辺りを見回した。

綺麗な骨董品。

綺麗に真っ白な家具たち。

ふかふかなベット。

「桃ちゃんはいいねぇ~。一人っ子でしょ?」

そう言ってまた桃ちゃんを見ると、また俯いたままだった。

「どうしたの?」

桃ちゃんに近付き、覗き込むと

「こんな物。いらないの。全然すごくもないし、綺麗でもない・・・。」

「え?」

そう聞き返すと、桃ちゃんはいきなり顔を上げてにっこり微笑み言った。

「聞いてくれる?私の過去のお話」

「うん」

私たちはベットに座り、桃ちゃんは話し始めた。

「本当はここはあたしの家じゃないの。   あたしはただ、今のお父さんとお母さんの会社の人形としてここに来ただけなの。     

あたしのお父さんとお母さんはとっても有名な、青木グループの社長なの。だから、後継者が必要でしょ?    でもあの人たちには何年かかっても子供ができなかった。

そこで連れてこられたのがこのあたし。

あたしは・・・・・・。  本当は、養子なの。

あたしね。  お母さんに捨てられて、七歳まで孤児院に居たの。

で、あたし普通にしてたら、お嬢様って感じでしょ?だからあたしは選ばれちゃったの・・・。

青木グループの娘に・・・。

ここに来てからいいことなんてひとつもなかった。

あたしはただ縛り付けられているだけ。

だから、自由気ままな夏空ちゃんが羨ましかった。」

そんな。そんなの悲しすぎるよ。

「よしよし。辛かったね~」

桃ちゃんが私にしてくれたこと。

すごくうれしかったから私のお返しだよ。

「うぅ~。ひっく。ありがとぅ。夏空ちゃんだけだよ。そんなに言ってくれての。」

「ううん。お相子だよ。」

「そういえばさぁ~。夏空ちゃんって好きな子いるの?」

おやつを手に取ろうとしていたら、桃ちゃんは突然そう言い出した。

「え?」

そう聞き返したけど・・・。

なんとなく頭の中に顔が浮かんだ。

‘星那くん・・・’

て一回しか会ってないじゃん。

ピリリリリ・・・・・。

「あっ。ごめんね。ただのメールだから。」

「取っていいよ」

「ありがとぅ」

申し訳なさそうに桃ちゃんは携帯を取った。

「あ。なっちゃんからだ。」

そう言いながらとてもうれしそうな桃ちゃん。

「誰?」

「あ。あたしの好きな人。」

恥ずかしそうにでもにっこりしながら桃ちゃんはそう言った。

「どんな人?」

「ん。とってもやさしくてね、いつも空を見つめている、不思議な人なんだけね、すっごくかっこいいの。」

「そっかぁ~」

・・・・。

桃ちゃんのその言葉が胸にひかかったけどただの偶然だよって自分に言い聞かせた。

星那くん・・・。

元気かなぁ~。