リハビリ医療の現状 | 筋肉ドクターの気まぐれ日記

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Killing Timeに日記を書き候

昨日来られたご高齢のご婦人が、10年膝が痛くて整形外科へ通っていたが、温めて、電気当てて、全身なんかして、全然変わらなかった。
うちへ来て凄く脚が軽くなったと喜ばれていて、テレビでも筋力はいくつになっても強くなると言っていたが(谷本先生か?)、何故他の整形外科ではやってくれないのか?と疑問に思っておられた。
 
まず、医学という学問の言う効果的な方法と、現行行なわれている医療の方法に乖離があります。
医療が縦割りで専門分化して、リハビリというものが医療から独立した理学療法士の世界になっているのもあるでしょう。
で、そもそも筋力を強くする方法を理解できている医師、理学療法士が皆無だというのも大きい。
 
1点目ですが、医学と医療の乖離。これはある。医学と言うのは科学的手法の西洋医学というものですから、要素還元論でメカニズムを解明するのと、統計的に有意な相関があるのかという大まかにこの2方向から学問する。
そして、メカニズムの予想からやってきた治療と統計的な相関に矛盾が生じることが多々ある。
そうなった場合にも医療はメカニズムの予想からやってきた方法を簡単に放棄できない傾向が強い。既得権益が完成するのも大きいだろう。
なので、現行保険制度で治療として認められている医療の中にも、有効性が疑問視されるものも多々含まれる。何十年も使われてきた薬剤が有効性の無いことがやっと証明されて消える場合もある。
リハビリ分野もこの顕著な例だ。腰椎が年取ると潰れているように見えるから、引っ張ったら良いんじゃないかと太古の昔から牽引治療と言うのがあった。効果はあるのかないのか程度でどっちでも良いようなものだと証明されているが、まだ最新牽引機器が作られ続けている。
 
2点目ですが縦割り医療でリハビリが医療から理学療法士の独立した世界になっている話。
リハビリ専門医なるものも作られているが、結局、じゃあ医師がリハビリをやりなさいと言われてできる人はいない。
医師の中でも専門分化して科が違うと、知識が乖離する。
私の思うところ、精神科の身体表現性障害と整形外科の線維筋痛症は同じ疾患だが、他科との交流が少ないためか、行く科によって病名が変わる。
廃用症候群、運動器不安定症、サルコペニア、フレイル、ロコモティブ症候群など、運動不足による筋力低下に数々の病名がつけられているが、これもそういう影響があるのかもしれない。
で、リハビリというのは理学療法士業界のもので、医師が介入できる分野では無いように感じている。
私など医師で運動を指導するなど異端中の異端なのはそういう業界の影響が大きい。
 
最後に筋力をつける方法をそもそも医療者が知らないという問題。
これは医学部の教育でも、筋力は自分で筋肉を動かす自動運動をすれば、効果的というのが正解だ。
なので、歩けば筋力がつくと多くの医療者は学校でそう習うので信じている。
だが、比較対象が悪い。
恐らく安静との比較だ。
だが、安静というのは動物にとって超不自然な状態だ。
だいたい、安静にしていて食事が与えられる動物なんて人間しかいないし、医学的には安静の有害性が明らかで有効性は皆無。
有害なものと普通に動くのと比較して普通に動くのに有効性があるって、毒を食べるのと何も食べないのと比較して食べない方が良いから何も食べないのが身体に良いって言ってるようなもの。
 
なので、うちはまだまだ世界唯一にならざるを得ない。