『紳士と猟犬』M・J・カーター、高山真由美訳(ハヤカワ文庫)
帯には、「読書好きの軍人&猟犬の異名を持つ”探偵” 異色コンビが消えた詩人の謎を追う」
って書いてあるけど、こんな軽いコンビ話じゃなかった…。
舞台は、イギリスが誇った東インド会社の支配下にあるインド。
首都カルカッタ、から始まって。
読書好きのウィリアム・エイヴリーは、インドにあまり馴染めてない借金まみれの高身長、ちょっと男前な東インド会社所属の軍人さん。
探偵、と自称するジェレマイア・ブレイクは、インド現地の言葉や風習に精通している、過去に色々あってやさぐれちゃった元軍人(凄腕諜報員?)。
1837年、インドの英国人社交界を賑わす、スキャンダラスな内容の物語を出版した詩人が行方をくらまし。
その詩人ゼイヴィア・マウントスチュアートを探し出すよう、会社から二人に命令が下る。
ところから話は始まるんだけど…
この二人、この命令によって強制的に一緒にインド横断の旅に出されるから、最初は意思疎通を図る仲になかなかならない。
他に、お供として随行してるミル・アジズというイスラム教徒の人とか、現地人の人とは交流するのに、ブレイクはエイヴリーを全く無視。
コンビ話じゃないよね?ww
と思った。
一応この話。
実際の、1800年代の東インド会社の統治について書かれた文献を元にかかれてるのかな?
作者は、歴史に関するノンフィクションも書いているらしく。
だから、インドの村々の様子とか、市場、気候とかの描写が、本物の土を触って匂いをかぐように感じられる。
でも、コンビ話じゃないよね?
と思いながら読み進めてたw
当時の東インド会社の統治方針がどのように変貌していき、悪癖も含めどんな影響をインドに及ぼしたか。
が、とてもよく分かる。
「サグ」というインド特有の信仰を持つとされた暗殺集団。
その取り締りを目的として、東インド会社の中で力をつけてきているサグ対策部。
会社の統治に従わない藩王国。
イギリスから派遣される会社上層部と、統治初期からインドを知る会社の人間との軋轢。
あまりよく知らなかった歴史でもあるので、面白く読めた。
すごく人が死にましたが。
で、最後らへんはね。
裏切りに裏切りが重なり。
誰が真の敵なのか。もしくは味方なのか。
ドキドキ、ハラハラの展開で。
そうこうしてやっと。
後半も後半になってから。
自称探偵と軍人の二人の意思疎通が図られて、絆が生まれてた感じ。
そして結局、あまり誰も救われていないような…
と思わなくもなく。
納まるところに納まるようなハッピーな結末部分も、一応あるにはある…かな。
エイヴリーみたいな人、好きだな。
それなりに能力も高いのに、物を知らず、失敗をやらかしてしまったり、余計な意地をはってしまう。
でも最後には、自分で間違いだと思ったことを自分で正せる人。
頭が固いようで、柔軟性があるというか。
プライドは高いけれど、正しいと思うことのために腰を折ることができるというか。
それでいて、あくまで普通の一般人、みたいな雰囲気ww
ブレイクは、超人。天才。
だけど、人間味がある。
最初は、どこに注目しながら読めばいいのか分からなかったけど、謎が解明されていくと、どんどんおもしろくなったかな。
解説・あとがきを見て、どうやらシリーズ物で、第二作があるらしいと知る。
あ、そこでは最初からコンビなのか、と納得。
第二作は、果たして翻訳・出版されるのか。
が気になる…。
シリーズ物と大きく出ていない時点で、今のところ未定なのかも。
もし出たら読みたいなぁ。