「海賊と呼ばれた男」 | 色塾BLOG-

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日々のビジネス・社会に対する思いや、起業に向けた考え、読書に対する感想など様々な話題を、海外で働くマーケターとしての第3者の視点から展開。


「永遠の0」を書いた百田尚樹氏の新作小説。
最近は、ビジネス系の本も、いわゆる自己啓発っぽい本もほとんど読まなくなり、専ら小説ばかり。

友人に、「なんかこの本を読んでいたらお前を思い出した。」というメールを頂き、2週間の週末をかけて、「海賊と呼ばれた男(上下」」を読み、そのストーリーとなった背景の出光佐三という人物に関する本を数冊読んだ。

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海賊とよばれた男 下/講談社

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これは、出光佐三という出光石油を作った人物のノンフィクション物語。
1人の日田という人物から、大金を託されて創業。太平洋戦争時に「一人の馘首もならん」と言い切り、1人の首も切らずに芯を貫き通した男の物語。GHQの支配から始まる、石油メジャーによる2次的な産業支配のなかで、如何に一人の気丈な男が信念を貫いていくかが書かれてあった。

3つの心に残った言葉を残しておきたい。
・「黄金の奴隷となるなかれ」
・「私は、人間を信頼するという考え方を広めていくことこそ、日本人の世界的使命と行っています。」
・「互譲互助、無我無私、義理人情、犠牲とかはみんな『お互い』からできている。その『お互い』ということを世界が探している。」

彼にとって、創業とは「利益の追求」ではもちろんなく、「拡大させていく資本主義ゲーム」でもなく、植民地支配を続ける物質主義的価値観を持った欧米による戦争ゲームに使われる戦略的資源を持つことで国・市民を守るための仕事。また、人々の生活必需品としての石油を安定供給するための仕事だった。

そして、別の本で、こうも言っている。
「出光には定款が二つ存在する。一つは、法律上の定款で、石油事業である。もう一つは精神上の定款である。人間がお互いに仲良くすれば、こういう力が出るということを示すことである。それが出光の本当の仕事である。」

魂を掛けて戦う彼の姿は、僕が憧れる存在に非常に近く、心を鼓舞された。

「お互い」を「信頼」し、「お互い」のために「働く」
というシンプルな生き方をしたい。

よく言われる、
「自分」の「市場価値」を高め、「スキル」を磨き、「お金持ち・傲慢」になって、自分の「自由」を得て、ゆっくり「幸せに」暮らす。

なんて生き方は、本当にダサイ。

友人のシェア以来、頭を離れないこの物語をシェアして締めよ~っと。・・・

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メキシコの田舎町。海岸に小さなボートが停泊していた。
メキシコ人の漁師が小さな網に魚をとってきた。
その魚はなんとも生きがいい。それを見たアメリカ人旅行者は、
「すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの」 と尋ねた。

すると漁師は
「そんなに長い時間じゃないよ」
と答えた。旅行者が
「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。おしいなあ」
と言うと、
漁師は、自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だと言った。

「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」
と旅行者が聞くと、漁師は、
「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、
女房とシエスタして。 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、
歌をうたって…ああ、これでもう一日終わりだね」

すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。
「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、
きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、
漁をするべきだ。 それであまった魚は売る。
お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。
その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。やがて大漁船団ができるまでね。
そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。
自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。
その頃にはきみはこのちっぽけな村を出てメキソコシティに引っ越し、
ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。
きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」

漁師は尋ねた。
「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」
「二〇年、いやおそらく二五年でそこまでいくね」
「それからどうなるの」
「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」
と旅行者はにんまりと笑い、
「今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ」
「それで?」
「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、
日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、
子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、
夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、
歌をうたって過ごすんだ。 どうだい。すばらしいだろう」

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