新体操・バレエ選手がなる股関節痛 外閉鎖筋損傷予防のトレーニング
新体操・バレエ選手が股関節痛で来院することは多いです。疲労骨折や関節炎、筋肉の付着部炎など様々なケガがあるので整形外科での診察が必須です。その中でも「外閉鎖筋」という筋肉の損傷を経験するので、私が考える原因や予防方法をまとめてみました。
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■外閉鎖筋の働き
外閉鎖筋は股関節を開いたり、股関節を安定させる働きがあります。特に股関節を安定させる働きが重要で、股関節を曲げた状態で、股関節内旋(膝が内側に入る動き)を止めたり、股関節内旋時に後方関節包を支え、股関節を安定させる働きがあると考えられています。
参考
河原郁生ら 「股関節後方支持要素としての外閉鎖筋の重要性」日本関節病学会誌36(4)2017
■新体操やバレエで外閉鎖筋を使う動きの例
新体操やバレエではパンシェのように上半身を倒しながら、脚を挙げて行くときの軸足の股関節を安定させる際に外閉鎖筋に特に負荷がかかっていると考えられます。股関節屈曲した状態で内旋という動きで特に負荷がかかりますがパンシェでは以下の動きになります。
・股関節屈曲
➡️上半身を前に倒す動き
・股関節内旋
➡️上半身固定し膝が内側に入る動き
➡️軸脚を固定し上半身が外を向く動き
■外閉鎖筋を痛める原因(バケツの水があふれる)
オーバーユース(使いすぎ)により柔軟性や筋力が低下していき、ある時に強い負荷がかかった際に損傷するケースが多いと感じます。バケツの水がたまっていき、ある瞬間にあふれてしまった時に痛みが出るイメージです。
■ウエイトトレーニングを活用して予防する
ーバケツの水を減らす(使いすぎを減らす)
オーバーユースにならない為には練習量や方法を調整する(バケツの水を減らす)必要がありますが、現実的にはなかなか難しいようです。同じ動きをなるべく繰り返さないように練習プログラムを組むのも一つだと思います。
ーバケツ自体を大きくする(強くなる)
もう一つは柔軟性と筋力を改善する事が重要です。(バケツ自体を大きくする)
柔軟性の改善にはストレッチがすぐに思い浮かびますが、ウエイトトレーニング(筋トレ)をしても柔軟性は改善しますし、更に筋力も向上出来ますので効率的だと思います。
私自身もウエイトトレーニングを行い、お尻の深い部分が筋肉痛になる事があり、外閉鎖筋など深層の小さな筋肉を使ってるんだろうなと実感しますし、大臀筋など浅層の大きな筋肉も強化出来るので効率的だと思っています。
▪️ストレッチ例①
・うつ伏せになりかかとを地面に近づけるように動
▪️ストレッチ例②
▪️ウエイトトレーニング例
リバースランジ
■ストレッチやウエイトトレーニングをする際の注意点
新体操やバレエ選手は自分でも気づかない内に股関節に不具合を生じている選手もいて、ストレッチやウエイトトレーニングなどで深く曲げる動作を繰り返すと更に悪化するリスクもありますので注意が必要です。女子選手は臼蓋形成不全や股関節前方インピジメント(FAI)により股関節唇を損傷する選手もいますので特に注意が必要です。下記に当てはまるような選手は、ストレッチやトレーニングでは期待している効果が得づらいケースもあり、まずは不具合を改善してからトレーニングを行う必要があると思います。
・4の字固めテストで痛みや左右差あり
・股関節を深く曲げると前側がつまる感じがある
・あぐらをかくと片方だけ開きにくい
など
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▪️まとめ
・新体操やバレエ選手は外閉鎖筋を損傷するケースがある
・パンシェなどの軸足に負荷がかかりやすい
・原因はバケツの水があふれる状態になるから
・予防はウエイトトレーニングが効率的
・ストレッチやウエイトトレーニングをやる前に注意しないといけないことがある