タカラレーベン(8897)の株主総会をご紹介します。
お、ir-manにしては珍しい銘柄を取り上げますね?と思った方、スルドイです。
理由は後で分かります(笑)
日時: 2009年6月23日(火) AM10:00~
場所: 東京新宿 ハイアットリージェンシー B1F クリスタルルーム
タカラレーベンは、首都圏中心に、分譲マンション「レーベンハイム」シリーズを販売しています。
その他、不動産賃貸事業、不動産管理事業(レーベンコミュニティ)、債権回収や介護事業などを行っています。
■タカラレーベン IRホームページ
http://www.leben.co.jp/corp_ir/ir/index.html
監査役の監査報告の後、代表取締役副社長からスライドを用いて事業報告が行われました。
・・・ここでちょっと違和感。
パワポまで用意しておいて、代表取締役とはいえ、副社長から事業報告するってのは、あまり聞かないなぁ。
副社長は、招集通知の「会社役員に関する事項」で肩書きを見ると、総合企画本部長兼経営企画室長となっています。実質、CFO的な方なのでしょうかね。
ふぅ~ん、それならありうるかも。
不動産業なので、ご他聞にもれず、今期はひどいありさまです。
事業報告では、分譲マンション事業は1,151戸販売したとか、一戸建ては71戸販売したと誇りますが、前期と比較すると見る影もありません。
ご紹介しようと思って、決算説明会資料のページを見ると、あらら・・・、第2四半期決算説明会の資料はアップされていますが、2009年3月期の決算説明会の資料がアップされていません。
IRスケジュール等を見ても、決算説明会が行われた形跡がありません。
もしかして、本決算の説明会まで切り詰めちゃったのかな
まぁ潔いといえば潔いですが、業績悪いときであってもきちんと継続的にIRしていったほうがよいと思いますよ。
決算説明会を行わないのは、コスト削減とベネフィット(どれだけアナリスト・機関投資家が集まって、レポートや投資判断の材料になるか)の問題なので、やむをえないにしても、決算説明会資料に類するものは作成して、継続的にアップされることを望みます。
■2009年3月期 決算短信
http://www.leben.co.jp/corp_ir/ir/lib/pdf/h21_3_tanshin.pdf
決算短信によれば、2009年3月期の業績は以下のとおり。
売上高 57,652百万円 (前年同期 64,778百万円 ▲11.0%)
売上総利益 784 〃 ( 〃 15,884 〃 ▲95.1%)
営業利益 ▲8,751 〃 ( 〃 7,272 〃)
当期純利益 ▲12,471 〃 ( 〃 3,506 〃)
大幅赤字転落はリーマンショックの影響もあるかと思いますが、粗利段階での大幅減少は売上原価の大幅な増大によるところが大きいです。
これは、棚卸資産の評価に関する会計基準を適用したことによるもので、会計方針変更の注記によれば、10,448百万円の影響が発生しています。
問題は、この棚卸資産評価損の影響を終わった期の業績予想をする段階できちんと折り込んでいたかどうかでしょう。
■2008年3月期 決算短信
http://www.leben.co.jp/corp_ir/ir/lib/pdf/h20_3_tanshin.pdf
一年さかのぼって、2008年3月期の決算短信を見ると、2009年3月期の業績予想はこうなってました。
売上高 76,500百万円(18.1%)
営業利益 5,450 〃 (▲25.1%)
当期純利益 2,300 〃(▲34.4%)
2008年3月期の売上高は11.7%の伸び、営業利益も17.8%の伸びと、この時は非常に好調だったんですね。
しかし、P.5の次期の見通しにあるように、2009年3月期に入るところでは、これまでの3期ほどで自社の力量を超えた在庫を抱えた面がある旨の表現が見受けられました。
2008年3月期の期末在庫は、56,269(前年51,098)百万円と、在庫が10%ほど増加していました。
同時期のキャッシュ・フロー(CF)計算書を見ると、在庫評価損が新たに145百万円ほど計上されていますが、それ以上に、営業CFの額がガクガクです。
2007年3月期の営業CFは▲17,848百万円、2008年3月期は▲1,841百万円と大きく改善しています。
2007年3月期は何が悪かったかと言うと、棚卸資産増加額が▲15,930百万円となっており、在庫が猛烈に積み上がっていたことが分かります。
ははぁ・・・、この辺の在庫管理の巧拙のことを言っていたのですね。
しかし、2009年3月期の業績予想の段階で、これだけ積み上がった在庫に対して、どの程度の在庫評価損を見込まなければならないかについては、記述は見受けられません。
まぁ販売していく中で在庫の削減を図っていくことを考えていたのでしょうから、それが棚卸資産評価の会計基準の適用になるからといって、相当の額を落とさなければならないことは想定していなかったかもしれません。
しかして、そこを襲った金融危機と不動産業界に対する資金供給の猛烈な収縮・・・。
在庫評価損104億円。売上高576億円。 実に、売上の18%にも達する巨額な評価損を、売上原価の中に含んでいるからこその粗利の急減と営業赤字への転落です。
ですが、EDINETに2009年3月期の招集通知が有価証券報告書の添付資料として掲載されていますので読んでみてほしいのですが、こんな事情は事業報告のどこからも読み取れません。
まぁ「自らが自らの首を絞めたことを大いに反省して」なんてくだりはありますが、こんな抽象的な説明じゃ事業報告としていかがなものか、と。
せめて、上記のような1年前、2年前からの状況や取組みを説明したうえで、在庫削減に取り組んでいたのに、今回の危機が来るほうが早かった、か何か締めくくれば、株主さんも納得するでしょうに。
それから、2009年3月期の在庫評価損をいくらと見込んでいたかと、結果として100億円を超える評価損となってしまったかの見込みの差異を説明したほうがよかったでしょうね。
まぁそんな状況下の株主総会ですので、質問も2人ほど。
(1) 業績、販売状況がこんな状況下、取締役1名増員(第3号議案)するというのはいかがなものか?
(2) 1株当たり純資産の低下が著しい(2008/3期:1,166.76円→2009/3期:387.80円)が、どのような対処をはかっていくのか?
役員に対する質問が出ていたので、招集通知のP.9~10を見てみますと、2009年1月26日(第3四半期決算発表日)付で、結構、がさがさ動いています。
2人の取締役さんが辞任、1人が昇格、2月末でもう1人の取締役が辞任で、今回取締役を1人補充っと。
何だか、社内闘争やら派閥争いの臭いが漂ってきますなぁ(違ってたらゴメンなさいね)。
総会自体は40分程度でしょうか、あっさり終了しています。
で、なぜ私がこの会社を取り上げているかというと、従来、タカラレーベンさんは株価的には低位なのですが、割と配当利回りもよく、かつ、株主優待もおトク(お米券5kg分)だったので、期末だけ(笑)応援させていただいておりました。
しかし、今回、業績悪化&無配転落を記念して、株主優待までも廃止することになってしまいました。
■たな卸資産評価損の計上、通期業績予想(連結・個別)の修正及び配当予想の修正に関するお知らせ
http://www.leben.co.jp/corp_ir/ir/news/pdf/press_090427_01.pdf
■株主優待制度廃止に関するお知らせ
http://www.leben.co.jp/corp_ir/ir/news/pdf/press_090427_03.pdf
うぅむ・・・残念です。
私もIR担当者、会社側の立場も分かりますので、やむを得ない判断だと思います。
年間どのくらい、私のようなコメ食い虫(笑)がついていたのか分かりませんが、優待を廃止するならするで、第3四半期の決算発表のときには、おそらく年度末厳しいことは分かりきっていたはずなので、廃止の発表は年度内にするべきでした。
無配にするかどうかは、最後まであきらめません、というポーズでもよかったでしょうけど。
上記のURLから分かりますように、どちらも年度末超えてから4/27発表ですからねぇ。
決算が固まってきて、こりゃ難しいねって話になったのでしょうけど、3月末の株主が権利確定してから廃止の発表をするのは、予測可能性を害しますし、株主からの信頼を裏切る行為です。
将来に向けて無配だ、株主優待の廃止だというなら、むしろ早めの発表でえらいなぁと思いますが、過去に遡及しちゃいけません。
株主の信頼はホイホイ裏切ってもいいけど、マンションを買ってくれた顧客の信頼は裏切りません、なんて信じられる
どっちも同じステークホルダーでしょ。
でも、きっと売上をもたらしてくれるお客さん重視なんだろうね。
ここまでの結果が物語っていますもの。
そんなわけで、タカラレーベン、実は私の中では3月末権利取りとしては外せない銘柄だったのですが、今回だまし打ちにあったことによって、私のポートフォリオから永久追放されることが決定いたしました。
さようなら、タカラレーベン。
(株価と業績を云々しなければ)良い銘柄だったのに・・・。
せっかく、財務情報を確認したので、最後に一言。
株主さんからの質問に出ていたように、2009年3月期の大幅赤字の計上により、著しく株主資本が減少しております。
利益剰余金 2,707(前期 15,549)百万円
株主資本 6,428(同 19,269)百万円
そりゃそうだ、終わった期で約125億円弱の純損失を計上しているのですから。
今期(2010年3月期)、同じことはできません。
そんなことをすると、株主資本がぶっ飛びます。
決算短信を見る限り、GC(継続企業の前提)注記はついておりません。
ただし、GC注記の基準が表面的には緩くなって2009年3月期から適用になっているので、きちんと有価証券報告書を見ておく必要があります。
有報でGC注記の有無を確認することと、仮にGC注記のレベルまで行っていない場合でも、会社が考えるリスクを「事業等のリスク」や「財政状態及び経営成績の分析」(MD&A)等に記載しておかなければなりません。
そこで、EDINETから有報を見てみますと、GC注記はありません(ない場合は項目自体削除してもOK)。
事業等のリスクには、「(14)会社の経営に重要な影響を及ぼす事象」というのが挙げられています。
「当社の当連結会計年度における経営に重要な影響を及ぼす事象としては、重要な営業損失、経常損失、当期純損失の計上、自己資本比率の低下、キャッシュポジションの急激な悪化が挙げられます。当該状況により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。」
あぁ・・・、やっぱり書いてあったよ
ただし、同事象の記述のなかでは、「このような状況のもと当社グループの最重要課題は、資金調達と認識しております。現状において、主要取引金融機関から運転資金、プロジェクト資金等の融資を継続して受けておりますが、これら資金調達に関わる取引条件に著しい変更が生じた場合や、金融環境の大きな変化が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。」との記載も見受けられます。
また、MD&A(Management's Discussion & Analysis)では、
「・・・そのような中、販売用不動産及び仕掛販売用不動産の評価損を計上したことなどにより、当期純損失が12,471百万円発生し、純資産は6,420百万円と前連結会計年度末に比べ12,897百万円減少しており、自己資本比率が9.0%と大幅に低下しております。また、物件の販売が鈍化し完売までに時間を要する状況となったことなどから、現金及び預金は3,865百万円と前連結会計年度末に比べ9,069百万円減少し、キャッシュポジションが急激に悪化いたしました。
当該状況により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。・・・」
となっており、従来基準のGC注記だったら完全に決算短信レベルからGC注記が記載されていたであろうが、新基準になって何とか免れているものの、会社側からの自発的な記載は必要だったことが推測されます。
個人投資家の皆さんには、こういうパターンに気をつけていただきたいですね。
従来なら、GC注記のある会社って、日経新聞にも集計された記事が掲載され、その中で名前だけでも出てきますが、今回のこういうケースですと、有報の記述の中のどこに書いてあるのか、もう分からなくなります・・・。
記述もマイルドになりますが、さらっと書いてある「継続企業の前提に重要な疑義」ってくだりは見逃しちゃいけません。
株主優待がなくなってプンプンしてたら、思わぬ勉強ができたっていう好例ですな(笑)
ぜひ会社を立て直して、再度、株主優待&配当を復活させてください
気長に待ってます。
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