エーザイの招集通知がすごいということを3年ほど前に聞いたのですが、この3月期にようやく権利取りしまして、現物を目にすることができました。
B5判になっていまして、ほとんどの会社の招集通知がA5とかA5変形なのと比べると、紙面が大きく1ページ当たりの情報量も多いのですが、その分、フォントも大きめのゴシック体を基本としており、明朝体などを使っているページを探すほうが苦労します。
おそらく、個人株主の中には高齢の方も多く、見やすさに配慮したものと思われます。
何はともあれ、一度、見てみてください。
■エーザイ 株主総会招集通知
http://www.eisai.co.jp/pdf/ir/stock/inv97_all.pdf
表紙等を除いて総ページ数224ページ
しかも、写真や図表をふんだんに取り入れた4色フルカラー、紙面のデザインもタブが付いていたり(しかも色分けしてある)、ところどころにあるQ&Aのページや巻末資料のページは紙の色じたい変えてあったりと、これでもかというくらい、工夫がしてあります。
いや~、かなりおカネかかってそうな作りです。
驚くのはそれだけじゃない。
上記のPDFを見ていただければ分かりますが、これが送付されてきたのが何と5/22~23頃です
エーザイの株主総会開催日は6/19ですから、4週間前発送です。
それだけならあぁ頑張ったね、というくらいかもしれませんが、総会が1週間よそより早いですし、エーザイのIR HPを見ると分かりますが、決算発表は5/14になっていますから、これだけの冊子の印刷をして信託銀行に納品、封入、発送と考えると、少なくとも5/22の2週間前くらい前には校了・印刷開始してないと間に合わないのではないでしょうか。
いったい、何人がかりでいつ原稿を書いているんだ というくらいのスピードです。
ウチも似たようなスケジュールですが、決算発表前に決算短信の原稿を仕上げながら、招集通知の校正がかぶってしまって青息吐息・・・という状況だったことと比べると、雲泥の差があります。
正直、開示関係の実務をやっている立場からすると、絶句するほどすごいことです。
ちなみに・・・、議案自体はまぁ普通です。
第1号議案 定款一部変更の件・・・株券電子化対応
第2号議案 取締役11名選任の件
第3号議案 ストック・オプションとして新株予約権を発行する件
この2号議案が圧巻で、取締役候補者1人1ページ、カラーの顔写真入りで、「株主の皆様へ」という形で所信表明が本人の弁として載っていますし、会社のスタンスからはなぜその候補者なのかという理由(独立性・中立性を含む)まで詳細に書き込まれています。
さらには、会社や取引先との特別の利害関係の有無や、「企業価値・株主共同の利益の確保に関する対応方針」(いわゆる買収防衛策)に対する賛否まで、1人ずつ個別に記載しています。
この取締役候補者のページをめくっていて、初めて、われわれの業界では知らぬ者とてない内部統制の大家・八田進二教授が、エーザイの社外取締役(エーザイは委員会設置会社なので、八田先生は監査委員会委員長や社外取締役独立委員会委員を務めておられます)に就任されていることを知りました。
いや、お恥ずかしい・・・。
こりゃ、会社担当者としては、なおさら大変ですよ
八田先生の厳し~い内部統制の視点で見られているわけですから、これだけの分厚い招集通知に記載してくる社内もろもろの取締役会決議やら諸手続に間違いがあっちゃいけないでしょうから、気が休まらないでしょうなぁ。
P.48~のコーポレート・ガバナンスの記載もカラーの図解で分かりやすく表記していますし、監査体制・内部統制の記載も当然ながら充実しています。
また、コンプライアンスについての説明も充実しており、社内のコンプライアンス研修は毎年120~130回行なわれており、2009年3月期は約11,000名が参加、eラーニング実施率は99.2%にものぼります。
業績の説明についても、昨年の数字と比較しながら、前期比(%)や増減額をも表形式で見やすく記載しています。
この辺は、欧米のアニュアルレポートに似た作りになっています。
おまけに巻末資料で、会社法施行規則の各条文が何を求めている条文であり、この招集通知だとどのページに該当するかまで書いてあって、まさに会社法のテキストか何かを見ているようです。
ちなみに、エーザイの招集通知は、6/18の日本経済新聞で「招集通知に想定問答集」などと取り上げられる記事が掲載されています。
いやぁ~、ホントにエーザイの招集通知には脱帽です。
開示関係の実務担当者なら、やはり一度現物を見てみるべきですね。
HPからPDFをダウンロードしいて見ているだけじゃ、このすごさは伝わらないと思います。
エーザイの株主総会は、以下のとおり。
日時: 2009年6月19日 AM10:00~
場所: 東京 水道橋JCBホール
監査報告は、監査委員長である八田先生から行なわれました。
また、社長がスライドを用いながら、1時間弱、事業報告を行なうなど、説明の丁寧さや、将来への成長戦略、株主還元方針とキャッシュフローとの関係など、株主に迎合するだけではない、会社のポリシーが感じられる事業報告でした。
質問は、11名程度、1時間55分くらいで終了しています。
事業報告や、株主からの質問は、製薬会社らしく専門用語や薬剤の名前が飛び交うなど、ちょっと当たりがつかいないと、さっぱりわからないという部分も多いかもしれません。
それでも、議長である社長が、補足説明を随所に入れるなど、なるべく専門知識のない株主にも理解してもらおうという配慮が多く感じられ、非常に好感の持てる株主総会だと思います。
個人株主さんの中には、何年か連続で総会に足を運んでいる、という方もいましたし、株主に対する説明をしっかり行なってよく分かってもらおうという姿勢がエーザイのファンを増やしているように思われました。
総会のお土産はこれ↓
チョコラBB、のど飴、アロエクリーム、水筒とテーブルルーペです。
写真だと分かりづらいかもしれませんが、画面中央下のほうで、「hhc」のロゴが大きく見えてますでしょ。
これは棒状のテーブルルーペで拡大されたものです。
近くの新聞紙が読みづらくなってきた個人株主さんには、嬉しいかもしれませんね。
また、来年も行きたくなるような優等生なエーザイ招集通知&株主総会でした。
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