吉野家 株主総会 | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

月が替わってしまいましたが、先月末、吉野家HD(9861)の株主総会が開催されました。


日時: 2009年5月28日 午前10時~

場所: 中野サンプラザ サンプラザホール


議長は、安部修仁社長です。


吉野家HDも、ドトール・日レスとともに、昨年に引き続き2回目の権利取りですが、やはり私が忙しかったのと、総務部門のスタッフに出てきてもらったほうがよいとの判断から、代わりに見てきてもらいました。


監査報告については、連結計算書類の監査報告については安部社長から、単体の監査報告については監査役さんから行われたようです。


事業報告については、映像とナレーションによって説明されました。


事業報告の詳細や、吉野家の業績については、吉野家のHPやEDINETの有価証券報告書の添付書類を参照してください。


■吉野屋HD 2009年2月期決算短信

 http://www.yoshinoya-holdings.com/ir/library/pdf/2009_quarter4.pdf


■吉野屋HD 第52期定時株主総会招集ご通知

 http://www.yoshinoya-holdings.com/ir/info/pdf/20090427.pdf



事業報告に係る株主からの質問。


(1) 吉野屋のテーブル型の郊外型店舗の客数が伸びていないのではないか?

 アールワン等、多角化戦略の是非について(反対意見)


→単品牛丼時から、1人で利用する客が85%超であり、カウンター主体の店舗ではグループ客の獲得が進んでいない。郊外型店舗では、グループ客をとくに土日に獲得する必然性が高く、また、実験を進めているところでは土日に5ポイント程度売上獲得効果が認められる。


→アールワンの不振については月間1億になんなんとする赤字を3,000万円レベルにまで圧縮している。

 1Q(3~5月)の業績を見て、是々非々で判断する。
 上海エクスプレス(宅配中華)については、失敗と考え売却を進めた。

 相場的にはかなり下がっている状態なので、優良案件が安くなっているため、早めのキャッシュフロー回収を重視しつつ(M&Aを)進めて行きたい。


(2) 株価が非常に下がっている。会場内で儲かっている方、手を挙げてほしい。
   店舗での牛丼の実物が写真見本と異なり、肉が少ない。店舗ではマニュアル通りにやっているといい、お客様相談室室でもマニュアルどおりにやっているという回答だが、納得いかない。

 社員教育はこれでよいのか。再び、お客様相談室のあり方はこんなことでよいのか?
(ややクレーマーっぽい方のようです。)


→回答の中で、牛丼(並)は、ご飯260g、肉85gなのだそうで、あわせて345gと思うと、高めのカップラーメンなんぞよりは満足感高いなぁと思いました(笑)

 出射吉野屋社長によれば、写真見本との違いはどうしても出てきてしまい、「煮上がり歩留まり」のようなものはあるとのこと(そんな用語があるんですね~)。マニュアルの周知徹底は各店へ行なっているが、どうしてもばらつきはあるのはやむをえないとの回答。


(3) リピーターの確保のやり方について

 →来店頻度主義=お客様の来店客数を重視している。
  客数増は新規orリピーターによることになる。 テーブル型フォーマットの展開により、新規客(ファミリー、グループ客)の取込みを図る。


(4) 牛丼以外の他の事業をどうやるかさっぱり見えない。せっかく牛丼という強いブランドをどう活かすかわからない。


 →安部社長としては、中長期的な成長は、①国内吉野屋の成長、②国外吉野屋の成長、③国内の他ブランドの成長を目指す、特に中国吉野屋には注力していくとのこと。
京樽ははなまるなど、業績がよいということと、買ったときが高値だったかどうかはまた別の話。

いずれにせよ、短期的に、国内吉野屋だけやっていればよいとは考えていない。


(5) 吉野屋のよいところは、安くてうまくて早いということ。株価についても、何年後かにこうしたいという希望を述べてほしい。


 →目標、指針については、先の3つの成長目標通り。

  売上高で2,000億、経常利益で200億の中期計画。
  「早い」が損なわれているのではないか?との問いについては、豚丼やしょうが焼き等、多品目フォーマットに切り替え中のため、「早さ」を犠牲にしている面があるかもしれない。

 なぜ、多品目に走らざるを得ないかといえば、輸入牛肉については厳しい制約の中でやっており、貿易制限のなかで、以前の10~15%程度での供給しかないところでメニューミックスでオペレーションしている。その制約の中で、成長させていかなければならないと考えている。

 いずれ、制限が緩和された折には、牛丼の吉野家の本領を発揮でき、かつての価値を取り戻せるであろう。
単品のときのようなクイックサービスとはいかないが、改善向上は日々行なっている。


(6) 地方では(ライバルの)すきやはメニュー豊富だが、地方では吉野屋は牛丼、豚丼くらいしかない。地方に広げていくためにはメニューが豊富でなければいけないのでは?


 →メニューバラエティも重要だが、私たちは一品ごとの価値を高いものにしていこうと考えている。メニューの豊富さと、その価値のバロメータであるお客様の数は比例しない。我々の観測では、同業他社よりも一店当たりの獲得客数は勝っていると考えている。これに満足せず、より高い価値を実現していきたい。



(7) (2009年2月期の)営業利益26億の内訳について

 →牛丼とすしで6億ずつ減益だそう。その他、アールワン、どんが足を引っ張っている。



(8) 去年は18~20万くらいの株価だったのに「どん」を買ったら株価下がったのではないか?

 ステーキの店の名前を「ヨシノヤアメリカンステーキ」などにすれば、”おお吉野屋がステーキを始めたか、ぜひ食べてみたい”と思うのではないか。新しいネーミングで若い人たちを取り込んでほしい。


 →具体的なご提案に感謝。どんの社長に伝える。

 株価については、先の質問で日経平均との連動で説明したが、それでよしとするのではなく、多くの方の評価損を真摯に受け止めて株価の回復を目指して行きたい。


(9) 株価については、(我々株主は)応援団なんだからあれこれ言うな、盛り方に文句をいう人も、(株主優待で)3,000円の食事券ついているんだから、もっと高いものを頼めばよい。
店頭に食券の機械を入れたり、レトルトのお持ち帰り等をもっと店頭でも盛んに導入して、販促・効率化を。

 →安部社長としては、江戸前の築地の粋さを機械に変えたくないという思いもあったが、最近の若い人たちに押し付けるわけにもいかないし・・・とお悩みの様子。

 レトルトは、冷凍食品や通販等でやっているが、店頭でもやっていきたいが、肉の量の制約もあるので・・・。チャネルの拡大は図っていくが、もともとは店舗がない地域でもご賞味いただきたいということ。店舗でも検討していきたいが、もう少しお時間をいただきたい。



けっこう細かい質問も出ていますが、クレームっぽい内容も、吉野屋を愛している/よく利用しているからこそのもの、という面もあり、会社にしてみればおそらく「うるさいなぁ・・・」と思う反面、「真摯に受け止めるべきお客様からのご意見」という部分もあるので、無碍にもできないといったところかと思われます。



その後、議案の上程、議案についての個別審議方式により、シャンシャンと採決して終了~、という状況だったようです。


安部社長の回答の模様を教えてもらうと、日経ビジネスの巻末で何回か連載があった内容と比べると、わりあいとベタなオペレーションを重視しているような印象を受けました。

紙面のほうは、言ってみれば校正可能ですから、多少IRや広報担当者の手直しが入っているのかもネ(笑)


吉野屋は、株主総会入場票に牛丼(並)が2杯食べられるチケットがついています。

総会に参加すると、ちょっとお得な気分になれる銘柄のようですね。



IR担当者のつぶやき-吉野家_総会入場券



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