6/9付 日本経済新聞に「株主優待、曲がり角」との記事が出ていました。
記事は、おそらく株主優待本を出している野村IRのデータ提供によるものと思われます。
これによれば、株主優待実施企業数は、2008/9月期の1,064社から直近では1,043社と減少に転じているとのこと。
1992年以来、一貫して増加してきた株主優待企業数の増加に歯止めがかかっているということです。
具体的には、2009/3期の優待廃止企業90社>新規導入企業46社、ということで純減になっているとのこと。
もちろん、その背景にあるのは、未曾有の経済危機からくるう企業業績の悪化です。
企業としては、何とか経費節減に努めている折、株主優待ばかり何億円もかけていられない、という考えが働いているようです。
終わった期(2009/3期)に減配となった企業も多く、機関投資家は減配をくらってパフォーマンスが悪化したのに、個人投資家は配当のほかに株主優待で何千円かの株主還元を受けている、といった点が、機関投資家からの不満として、企業側に伝わっているように感じられます。
業績好調で配当が機関投資家にもたくさん行っているときは、彼らも何も言わないんですけどね。
やっぱり、機関投資家も個人投資家も同じ株主である以上、株主平等の原則にのっとって、同じ配当でのみ取り扱ってほしいということでしょう。
一方、記事では、安定株主開拓の意味で、長期保有の株主には優待を上乗せ拡充する動きもあることを紹介していました。
ただ、私はこの長期保有株主に対する優待の拡充については、懐疑的です。
というのも、そもそも株主優待そのものに対して、会社法の見地からは「株主平等の原則」に反するのではないか、という見解がくすぶっているところに持ってきて、さらに同じ個人株主の間でも、短期の人は優待が少なくて長期保有の人は優待が多い、ということに対して、合理的な説明ができるのだろうかと思われるからです。
確かに長期保有の方からすれば、3年も5年もの長い間、会社を応援してずっと株主でいるんだから、少しは優遇してよね(しかも、今日び株価も低迷しているし、売るに売れず塩漬けになってるし・・・)、という気持ちは分からなくもないです。
ただ、どうなんでしょう、長期保有だといっていたとしても、単に中間期末や年度末だけ権利を取って、株主名簿に名前は載るけれども、その間ずっと保有していたかどうかははっきり言ってわからない、というのが正直なところではないでしょうか。
おそらく、いったん売却して再び株主になったとしても、株主番号は変わらないんじゃないかな。
(直接、信託銀行との窓口にはなっていないので、正確ではないかもしれません。以前、どこかの会社で長期保有の要件として、連続して何回、株主名簿に同じ株主番号で記載されていること、といった内容をみたことがあります。この辺、株主名簿に詳しい方、コメントをお寄せください。)
しかも、株券電子化がかんでいるので、今後はとろうと思えばずっと同じ株主番号で売却しているかどうか、コストをかけて定期的に名簿を締めれば(総株主通知でしたっけ)、ほんとに継続保有かどうかウォッチしていくことは不可能ではないでしょうけれど、そんなコストをかけるぐらいなら、配当したほうがナンボかましというところでしょう。
かつ、そもそもの株主平等の原則に反しているかも、という点には、何ら回答していませんし。
そんなわけで、日経新聞の記事は、この会社法に反しているかもという点について、まったく触れておらず、会社にとって不利な、長期保有優遇策も増えています的な書き方になっています
単にこんな優待をやっている会社もある的な紹介にとどまらず、ちゃんと会社法学者の意見も拾ってきてもらいたいものです。
さる筋からの情報によれば、上記の長期保有優遇策が増えたといっても、2009年5月末でまだたったの50社超のようです。1,000社以上の優待実施企業に対して、たった5%ですからね。まだまだポピュラーになったともいえません。
こうした長期保有優遇策を含めた株主優待制度そのものについて、業績悪化という契機ではあれ、もう一度存在意義や必要性を問い直すよい機会かもしれませんね。
(といいつつ、私個人の投資行動としては、同じような銘柄があって、配当額ないし配当性向が同様であれば、おそらく間違いなく株主優待がある銘柄を選択します。
まぁつまり、個人的には「通常程度の」株主優待までは否定するものではありません。
上場廃止基準のうち株主数基準にひっかかるケースでは、優待の導入が効果てきめんということもありますし。
長期保有優遇策は行き過ぎではないか、というのが正直な気持ちです。)
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