反社会的勢力排除とコーポレート・ガバナンス報告書 | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

昨日に引き続き、ディスクロージャー実務のトピックをもう1つ。


2/4付で東証から、「反社会的勢力排除に向けた上場制度及びその他上場制度の整備に伴う有価証券上場規程等の一部改正について」 という通知が発せられています。


要するに、有価証券上場規程を改正して、以下のポイントについてフォローするものです。


① 上場会社に対して、反社会的勢力の排除に向けた対応を求める

② テクニカル上場時において、以前に改善報告書等の提出を求められているとき、それを引継ぐ

③ 企業グループの構造が特殊な会社への対応を図る


有価証券上場規程が2008.2.6から施行されており、これに基づき、反社会的勢力排除に向けた体制整備についての内容を反映したコーポレート・ガバナンス報告書を、2008.4.30までに東証に提出することが求められることになりました。


これに伴い、コーポレート・ガバナンス報告書の記載要領(監査役設置会社用、委員会設置会社用)も改訂されています。



これら一連の動きは、上場制度整備懇談会 のなかで議論されていたもので、反社会的勢力排除の点については、1月の議事要旨 のなかでも触れられています。


また、コーポレート・ガバナンス報告書というのは、東証が求めている上場会社のコーポレート・ガバナンスについて記載した書類で、金融商品取引法上求められているものではありません。


内容的には、有価証券報告書や会社法上の事業報告(広義の招集通知)などとも、相当程度記載内容が重複しており、ディスクロージャー実務的には負担になっている面もあります。


以前は、決算短信にコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方を記載することが求められていたので、毎回の決算であまり変化がないにも係わらず、いたずらにページ数が多くなっていたのを、コーポレート・ガバナンス報告書の形式で括り出すことによって、決算短信の整理と発表の早期化、および、定型化されたコーポレート・ガバナンス報告書によって企業間比較がしやすくなったというメリットがあります。


コーポレート・ガバナンス報告書をご覧になったことがない方は、東証のHPからお好きな会社の報告書を閲覧できます ので、ぜひご覧になってみるといいと思いますよ。


かなり、企業の考え方が出る書類だと思います。


さて、コーポレート・ガバナンス報告書に何を記載しなければいけないかというと・・・。


会社によっては「内部統制システムに関する基本的な考え方及びその整備状況」のなかに、反社会的勢力排除に向けた体制整備について記載しているかもしれませんが、それを独立項目として追い出す形になります。


記載していない会社については、新たに記載が求められます。


●反社会的勢力排除に向けた基本的な考え方

 反社会的勢力による経営活動への関与の防止や、そうした勢力による被害を防止するため、会社としての基本的な考え方(基本方針)について記載する。


●反社会的勢力排除に向けた整備状況

・企業として組織全体で対応することを目的とした倫理規定、行動規範、社内規則等の整備状況、及び社内体制の整備状況について記載する。

・反社会的勢力からの不当要求に備えて、平素からどのような対応状況をとっているか記載する。例えば・・・。


 (1) 対応統括部署、不当要求防止責任者の設置状況

 (2) 外部の専門機関との連携状況

 (3) 反社会的勢力に関する情報の収集・管理状況

 (4) 対応マニュアルの整備状況

 (5) 研修活動の実施状況


犯罪対策閣僚会議「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」 (2007.6月)を参考に記載することが考えられる、としています。


また、上記指針の解説文 も、具体的に記載されていて、わかりやすいと思います。



コーポレート・ガバナンス報告書に記載するだけなら対応は早いでしょうけれど、実効性ある活動を伴わせようと思うと、少し時間がかかりそうですね。


対応マニュアルを作成したり、総務部門や法務部門を中心に、お客さまとの対応を含め、外部から電話がかかってくる部署すべてに、一度は研修受けてもらったり、マニュアル配布して説明したりしないといけないでしょうし。


また、そうした体制を作って運営しますよ、ということを、役員会なり取締役会なりで、いったん承認してもらっておいたほうがよいでしょうしね。


そうやって考えると、社内体制作って動かし始めてからコーポレート・ガバナンス報告書に書こうと思うと、いっぱいいっぱいなスケジュールかな・・・。



通常ですと、3月期決算会社は6月の株主総会で、役員体制(取締役、社外取締役、社外監査役など)が変わりますので、その内容を反映してコーポレート・ガバナンス報告書をアップデートしたものを東証に提出するわけですが、今回は4/30までに、一度、反社会的勢力の排除がらみの部分を追加して提出せよ、ということですから、二度手間にはなります。


時期はずれであるとともに、4月中なんて、決算発表やら、総会準備やらで、何かと立て込む時期ですから、忘れないようにしないといけませんね。



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