日本は外国人投資家に嫌われる? | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

10/31付 日本経済新聞では「公取委、合併・株取得審査を強化、投資ファンドも対象」との記事が、

日経金融新聞では「日本で嫌われるスティール」という記事が、ともに1面の扱いで掲載されています。


日経金融の記事では、スティール・パートナーズがブルドックソースに関する買収防衛策での争いに敗れてから、米国から日本に対する冷めた見方が強まっていることを紹介しています。


10/29にニューヨークで行われた「国際企業統治ネットワーク(ICGN)」の会議で、パネリストとして参加した企業年金連合会の理事に対して、司会者から「ブルドック判決の意義を聞きたい」との質問が飛んだと伝えられています。

出席した記者にまで、「日本は豊かな国だから外資は必要ないのか」とか、「最近のM&Aを巡る判決に従えば日本の経済活動が止まるのでは」といった皮肉めいた質問もあったそうです。


(このICGN、以前当社にご訪問くださった外国人機関投資家の方が、後日、ここのコーポレート・ガバナンスに関する報告書の和訳を送ってくれました。

最初は、勉強せい、ってことかな!? と思って、ちょっとムッとしましたが、毎年、送ってくるので、一律の処理なんだ・・・と納得した経験があります。)


コロンビア大学法科大学院での日本におけるM&Aのセミナーでも、日本では経済に関する法律も裁判所の判断も、経済合理性より優っていると批判されたといいます。


ましてや、イギリスのエコノミスト誌で発表している直接投資額ランキングから、日本に関して説明したページがなくなってしまった、とのくだりを読んで、正直、慄然としました。


海外にブルドック判決がどのように紹介されたかまでは、私は知る由もないですが、おそらく、相当センセーショナルに伝えられているのかもしれません。

海外からの投資=外国人投資家による日本株買い、に振り回される日本市場において、外国人買いが細ったらどうなってしまうのでしょうはてなマーク


東証で発表している株式分布状況調査を見ても、明らかです。


■東証 平成18年度株式分布状況調査結果の概要

 http://www.tse.or.jp/market/data/examination/distribute/h18/distribute_h18b.pdf


(平成18年度というと、ちょっと古く感じますが、大きく捉えれば、現在、日本株式会社の28%は外国人の持分といっても過言ではないと思います。

10年前の外国人の持分は13.4%に過ぎなかったのに・・・。)


総じて、日本の機関投資家も外国人の売り買いに追随するばかりで、日本の運用機関なんだから、日本株をガツンと買ってやる、くらいの意地もないしなぁ・・・。


(とはいえ、今でも相当日本株に対する資産配分は大きいようなのですが・・・。

 このへんについては、こちらのトピックをご参照ください。

 ■東京IRセミナー「株主との関係構築とIR」

  http://ameblo.jp/ir-man/entry-10051640131.html  )


ただ、記事では、米国内におけるスティールの位置付けは”アセットストリッパー(資産はぎ取り屋)”だとし、とくに経営意思などないとも紹介しています。


日本的な感覚からいうと、とんでもない、と感じるかもしれませんが、これは、


「株主の説明責任に対する日米の考え方の違い」


なんだそうです。


米国では、多額の損失計上など、経営上の失敗が明らかでないうちは、株主権は限定されているのだそうです。もちろん、いざ事件が起きたり、経営者のスキャンダル等があれば、株主集団訴訟を懸念しなければなりません。

しかし、平時では、日本で認められているような株主の取締役推薦や、過半数での投票、可決した議案に拘束されるなどの制度がなく、経営関与の余地が小さいといいます。

つまり、通常は経営陣の経営判断がものすごく強く、株主権が日本に比べて制限されているため、情報開示に関するルールを除けば、権利に見合う義務を裁判所も米国社会も課そうとしないという文化なのだと理解したほうがよいようです。


いずれにせよ、日経金融の記事では、


 スティールが米国流路線を継続

→海外投資家のイメージ悪化

→買収防衛策の発動が増加

→対日投資全体が萎縮


といった悲観シナリオを懸念しています。


一方、日経新聞1面トップでは、公正取引委員会が、来年の独占禁止法改正案に向けて、企業の合併審査の対象を広げる方針を固めたことを報じています。


独禁法では、一定規模以上の企業が、他の会社の株式の10%・25%・50%を超えて取得した場合には、公取委への届け出を義務付けており、公取委がM&Aによって市場競争が妨げられないかどうかを審査し、市場占有率が高すぎると判断される場合には、取得した株式の処分を命じることができるとされています。


改正案では、株式取得の事前監視の強化を盛り込み、株式取得後30日以内の報告、を20%を超える場合には事前届け出制に転換するもようです。


しかも、一定以上の売上の企業の支配下にある投資ファンドによる株式取得や、独立系の投資ファンドによる株式取得も、届け出の対象とする方向だとか。


独立系の投資ファンドが、同一業種内で支配下におさめた企業どうしをM&Aさせ、シェアを高めて利益を独占することを懸念しているようです。しかも、組合形態が多い投資ファンドは、株式会社に対して審査している現在の体制をすり抜けているとの批判もあるらしいです。


表面的に見れば、独禁法の趣旨を掲げながら、外資も含めた投資ファンドに対する規制を強めていく方向だと捉えられそうです。


ですが、米国やEUでは、ファンドの株式取得は合併審査の対象になっており、しかもファンドと企業とを区別していないので、国内経済界からは一般企業と同じ扱いをすべきという批判もあったといいます。


なるほどねぇ・・・。

独禁法のほうは、あんまりウォッチしてなかったなぁ。

独禁法も勉強しておかないといけないかな・・・(汗)。


欧米と足並みをそろえるんだと言われてしまうと、批判のしようもないですが、やっぱり外資ファンドに対する敵がい心というか、監視の目を強める傾向が、最近目につくような気がします。


日本企業のなかには、投資ファンドからの圧力をうまく利用して事業の変革に成功した会社(村上ファンド-昭栄とか)もありますし、上手に事業承継に利用した会社もありますから、社会を挙げて、ファンドを目の敵にする風潮は抑えたほうがよいと思っています。


資源もない、人口も減少していく日本で、豊かな生活をキープしようと思ったら、北欧諸国のように、国を挙げてしっかりおカネにも稼いでもらう、という方面を無視できないと思います。

もちろん、しばらくはハイテク技術を駆使したモノ作りでは、トップグループを走れるでしょうけれど。


外国人投資家にあいそを付かされないうちに、日本への投資がしやすくするよう手を打つ必要があるように思われます。

国民性、と言われてしまうと、なかなかすぐには変わりそうもない気もしますが、経営者の受け入れ方次第、という面もあるでしょう。


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今日のスティールの記事で、スティールは米国では、経営者のスキャンダルを調べ上げたりするえげつなさや、同じ会社に何度もプロクシーファイトを挑むしつこさで知られているとのくだりがありました。


だからかどうかわかりませんが、今日は、サッポロHD(2501)が+100円のストップ高ビックリマーク


年末が基準日なので、来年の総会出席用に狙っていたのに・・・(T.T)

(こういうのは買っておいてから言わないと、カッコ悪いんですけどネ(恥))


また、下がる日もあるでしょ。

気長に待ちます。



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