東京証券取引所は9/25に、新規株式公開(IPO)する企業の幹事証券会社が事前に調査すべき内容や、幹事証券会社が整備すべき体制等についてのルールを発表しました。
今のところ、パブリックコメントの形になっており、10/25まで意見募集、その後2007年12月をメドに実施に移す考えです。
■東京証券取引所 取引参加者における上場適格性に係る調査体制の整備について
http://www.tse.or.jp/rules/comment/070925-kosa.pdf
幹事証券会社は、IPOの際に企業の社内体制・内部統制の状況、反社会勢力の関与の有無等を調査し、経営内容が上場に適していることを表す推薦書を東証に提出することになります。
幹事証券が行うこの調査を、東証では「上場適格性調査」と呼んでいます。
これらに反して上場させた場合には、証券会社に過怠金を課すこともありうる、という強い姿勢で臨んでいます。
また、幹事証券会社では、IPO予定企業に体制整備を求めるだけでなく、東証から自らの体制整備をも求められています。
例えば、
・上場適格性調査部門を設置すること
・調査担当者は、IPO獲得のための営業推進業務やIPO企業に対する指導業務に携わらないこと
・調査部門の担当役員は、営業推進部門やIPO指導部門を担当しないこと
を求めており、また、これらに係わる社内規則・社内マニュアルの制定や記録・情報を5年間保存することを義務付けています。
さらには、その社内規則については東証に提出せよ、上場適格性調査結果の(意見)形成過程に関する記録も保存しておけ、という締め付けぶり
あるいは、IPO予定企業が予定していた幹事証券会社・監査法人・上場予定取引所を変更したことを知った場合には、その幹事証券会社は変更の理由を確認するとともに、その合理性について十分検討せよ、上場申請から上場日までの間に、上場適格性調査の結果に影響を及ぼすおそれのある事項が生じたら、東証へ報告せい、とまで言っています。
こりゃぁ、大変ですねー
以前、当社がIPOしたときは上場審査が比較的ゆるい方に振れていた時期でしたが、それでも主幹事の引受審査は厳しいなぁ、彼らがIPO時のリスクを背負うんだからしかたないか・・・、などと感じていましたが、上記のように、東証からこんなにぎゅうぎゅう締め付けられると、当然そのあおりはIPO準備企業のほうにやってくること間違いなしですね。
善意に解釈すれば、すでに上場審査は厳しくなっているとも聞きますし、大手証券会社であれば、企業側の立場で指導してくれる公開引受部のような部署と、審査を担当する上場審査部のような部署はすでに分かれていて、相互に牽制が効いているかと思います。ですので、今とそんなに変わらないかも・・・、と期待する面もあるかもしれません。
しかし、中堅以下の証券会社や新興の証券会社が、初めてIPO主幹事を獲得したりするケース(*)では、過去にもいろいろと問題が生じており、本来の意図としてはそういうケースに対してアミをかけて行きたいというところなのだと想像します。
(*)エ○チ○ス証券とか、旧ラ○ブ○ア証券とか・・・(^^;
ちなみに、パブリックコメントに上がっている文書では、上場適格性調査はこう表現されています。
「経営者の識見、内部管理体制及び業績その他の上場適格性に係る調査」
つまり、経営者の識見なども調査の対象だということです。
今はやっているかどうかわかりませんが、証券会社による経営者面接も強化されるかもしれませんよ(^^;
昔、JASDAQが店頭市場と呼ばれていた頃、店頭公開する会社は、主幹事証券会社が責任もって推薦する仕組みになっていたそうで、当時の主幹事による審査は、それはそれは厳しいものだったと聞きます。
大量公開時代を経て、また時代は厳しい少数上場時代に逆戻りした感がありますね。
厳しい主幹事審査、厳しい監査を経て、さらに取引所の厳しい審査をクリアしないと上場できない、そんな時代になってきたようです。
なお、上記のパブリックコメントには別表として「上場適格性調査に係る調査項目」が具体例として添付されていますから、IPO準備企業の会社さんはぜひ確認しておかれたほうがよいと思います。
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