3/29、注目のサッポロホールディングス(2501)の株主総会が開かれた。
総会出席者は昨年の840人を大きく上回る1,157人と言われているよう。
ずいぶん多かったんですね。
買収提案している米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドが反対していた新たな買収防衛策の導入は、3分の2超の株主の賛同を得て承認されました。
つまり、スティールの負け、サッポロの勝ち
サッポロは昨年2月に取締役会の決定で導入した防衛策を株主総会の承認を得た防衛策に切り替えるため、今回の総会に提案。筆頭株主のスティールは、「プロキシー・ファイト(委任状争奪戦)」を仕掛けたが、否決に必要な過半数を獲得できなかったということになります。
ちなみに、2006年12月末時点のサッポロの株主構成は・・・。
外国法人(米スティール等):30%
個人その他:21%
その他の国内法人:15%
国内証券会社:2%
国内金融機関:32%
関係者によると、スティールを支持した票は約32%だったそうです。スティールのウォレン・リヒテンシュタイン代表は「多くの株主が私どもを支持し、非常に喜ばしい」とのコメントを発表したといいます。
スティールはサッポロの株式の66.6%を1株825円で買い付ける公開買い付け(TOB)を提案していますが、仮にTOBの成立条件を、株主総会における特別決議を否決できる3分の1に引き下げたとしたら、スティール支持票から想定するとTOBの成立が視野に入ってきます。
スティールのTOBは、彼らの戦略としてホワイトナイト(友好的買収者)を引き出す手段という面もありますから、今後のスティールの行動から目が離せないといえます。
参考までに、アサヒビールの株主総会では・・・。
「サッポロホールディングスとの提携が取りざたされているアサヒビールは27日、東京都内のホテルで定時株主総会を開いた。米系投資ファンドのスティール・パートナーズから買収提案を受けているサッポロについては、株主から「昔の兄弟会社として援助を求められた場合は支援すべきだ」との意見が出たが、荻田伍社長は「国内酒類事業のM&A(企業の合併・買収)は検討していない」と述べ、当面は静観する考えを示した。」毎日新聞 2007年3月27日
としており、音なしの構え。
確かに、ここでサッポロの支援に乗り出すとか言ってしまったら、スティールの思惑に乗ることになりますから、今はそんなことはおくびにも出さないほうが賢明といえましょう。
以前、このブログでも書きましたが、いちごアセットマネジメントvs東京鋼鐵のときも思ったことです。
プロクシー・ファイトはIRの総力戦!まさに情報戦争でしょう。
ホームページをきれいに、見やすく作ることは初歩の初歩。まずは、広報、IR部門の力量が試されます。
法的な開示書類としての、招集通知、議決権行使のための参考書類をきちんと正確に作成するためには、法務部門の協力も必要でしょう。
しかも、取締役会や委員会をしっかり開催して、適宜、マスコミに会社の見解を公表していかなければ、世間の支持は得られません。
相手は、ISSやグラスルイス等、機関投資家に影響力を持つ議決権行使助言会社がバックについたりするのですから、手ごわいですよね。
こういったピンチを切り抜けた会社のご担当者さんたちは、喜びもひとしおだと思いますし、何より、その渦中で仕事をやっていた、そのこと自体が財産になりますよね。うらやましいなぁ・・・。
東京鋼鐵や大阪製鉄に比べると、サッポロさんはHPはきちんと作られているように思いました。
まず、サッポロのHPトップ(http://www.sapporoholdings.jp/ )に「株主の皆様へ重要なお知らせ」として、
・ 当社株券等の大規模買付行為への対応方針について (http://www.sapporoholdings.jp/newsrelease/070316_01.html
)
・ スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピーが開示した「事前警告型買収防衛策導入反対のお願い」における当社の意見について (http://www.sapporoholdings.jp/newsrelease/070316_02.html
)
という2点への動線が、ユーザーに意識させずに出来上がっています。
やっぱり、この事件に興味をもってサッポロHPを訪れた方が、真っ先にクリックするよう配置しているといえます。
上記の2文書、ぜひチェックしてみていただきたいのですが、大規模買付ルールの流れですとか、図解にしてあって非常に見やすいです。
EDINETに3/30付で、サッポロの有価証券報告書・有報の添付書類としての招集通知、添付書類などがアップされていますから、そっちと比べてみて下さい(EDINETコード185001 または 「さ」の4ページ目)。
プロクシー・ファイトになると、まさに招集通知でいかに会社の考えを説明するか、相手方の提案もきちんと載せてあげないと争いになりますから、議案とその説明だけで、招集通知はなんと39ページにものぼってます。
事業報告や計算書類(連結・単体)や監査報告書などは、まとめて添付書類にしてますが、こちらも48ページとすごいボリューム
事務方の皆さんのご苦労に頭が下がります・・・。
ですが、やはり本チャンの招集通知は文字だらけ・・・。これじゃぁ、個人投資家から「何が論点だかわからない!」という声があがるのも無理ないと思います。
ふつー、読まないでしょ。(でも、個人投資家の方でサッポロの株主総会に出てみようというからには、それなりに予習していかないと、スティールの代理人の言ったことがよくわからなくて、つまらないと思うんだけど・・・)
だから、HPでの分かりやすさ、訴えかけが大事なんだなーと思いました。
これだけの理由じゃないけど、少なくとも東京鋼鐵がいちごAMに負けて、サッポロがスティールに勝った要因の一つではあると思います。