前回はシートポジションに関わる事を書かせて頂きました。シートポジションはドライビングフォームに大きく影響し、操作する上での身体の力の使われ方にも深く影響する事も・・・
(広い意味でいえば煽り運転する側のドライバーの気持ちにも関係します)
今回はシートポジション変更後に交換したシフトノブについて書かせて頂きます。
オートマやCVT、EVやHVにはあまりシフトノブの形状や重さは影響してきませんよね。あるとすれば高さ関係とか位置関係ぐらいですね。
ですがM/T車はシフトノブの高さ、重さ、形状はかなりシフトフィーリングに影響してきます。操るドライバーによってベストな状態は様々なのです。
Air Repair iQを造ってきた中で、どうしても課題が残っていたのがこのシフトノブなのです。純正のシフトノブの形状も高さもまあまあ良いのですが私的にはもう少し重量が欲しい。
”シフトノブは軽い方が良い”というのはダート走行においての話なのです。エンジンマウント類の硬さにもよるのですが、揺れる車でシフトノブの重量が重いと揺れてその慣性力で”ギヤが抜ける”という現象が起きる可能性があるからなんですね。
でも、舗装が中心の場合はシフトノブの重量が軽いと、シフト操作をするのに余計な力を使うようになってしまうんですよ。正確にタイミングよく力を入れる事ができれば問題ないのですがその操作ができるレベルの人間はほとんどいないでしょうね。
トランスミッション内でのギヤが入れ替わるときにはシンクロナイザーが回転し滑りながらギヤを同調させて次のギヤに繋ぐようにしています。このシンクロナイザーを動かし同調させるには本来は僅かな力で良いのです。これを力任せに強引にやったとしたならばシンクロナイザー機構にストレスを与えてしまうのです。シンクロナイザーは真鍮で柔らかいので無理をすると痛めてしまうんです。
このシンクロナイザーを動かすのに力に頼るのではなく、シフトノブの重さによる動きの慣性力で自然に次のギヤに入るためのきっかけを作るために重量を重いものに変えるんですね。
iQのノブを交換する時に一番の問題は、バックに入れる際にリバースリングを引き上げる動作が必要なのですが、このリバースリングを引きあげた際のリングの飲み込み量が微妙で合うものが見つかってなかったんです。
形状からSPARCOの1モデルが使えそうかな?と予測はできたのですが詳細寸法が不明でした。価格がまあまあするのでなかなか踏み込めなかったんですね。しかし、シートポジション変更をしたのを期にトライしてみました。ダメなら勿体ないけど廃棄・・・
仕入れてみて装着前に量ってみるとSPARCOシフトノブは120g、純正のシフトノブは60g。そして少し大きいので10mmほど高さが上がる感じ。高さが増えるとシフト機構までの距離が増えるので、てこの原理から単純な重量増以上に重量が増える事になります。
仮装着してみると?
やっぱりダメでした
ただ、よくよく観察してみれば最初に入れるカラーの長さを短く加工してやればいけそうな予感がしました。短くして仮付けしてみると?おおイケる
何回か加工しながら寸法を合わせていき、最終的にはリバースリングを引き上げた際に1mm程度の隙間が出る位置に決めました。
数日間乗ってみた感じではシフト操作する際の力が少なくて済む(=ミスシフトが減る、ステアリング操作が正確に行える)、シンクロへの負担が減る、シフトアップの際にギヤの繋がりが早くなるために車速がスムーズに乗る、等の効果が得られました
ただ、やみくもに重くするのも注意が必要です。それはシフトレバーの付け根のメカの強度の問題です。iQのシフトレバーの付け根のメカは樹脂製なのです。経年劣化で硬化した樹脂の場合には一番先端のノブ重量が増えた事による動きのストレスを受けて割れたりする可能性が出てくるんですね。
ドリフト車用には500g程度のものがあったりもします。私もランサーエボリューション9MR‐RSの競技車には240gの物を使ったりしていました。効果がある分、他の部分への影響が出るとも限りませんからそのあたりはよく考える必要性があります。
シフトノブの交換はドレスアップ要素だけのように思われているのですが、人間が操るという部分にも大きく影響がある実は操作系チューニングの一つでもあるのです。
Air Repair iQの中でずっと気になりながら今まで放置してきた事がやっと対処できて満足しています
Air Repair iQで実証実験できたので皆様方にも対応可能かと思います(ただしこのSPARCOのシフトノブが流通が不安定なのでご希望の際にはお問い合わせください)。
※シフトパターンバッジをコンソールに装着して完成
※山へ行き操作系の確認
左手のステアリングからシフトノブまでの距離が短くなり、素早く操作する事が重量増し効果と併せて可能になりました