・・・RN1ステラカスタムSHINOで見えてきた制御環境の整え方・・・

 
 
RN1 ステラカスタムRS “SHINO”。
この半年間、冷却風、熱、CVT、GND、接点、制御環境を少しずつ見直してきました。
派手な部品交換ではなく、車両全体の成立条件を整えることを重視しています。
 
 
 

RN1ステラカスタムRS”SHINO”、外気温38℃から40℃。

この条件で、23℃設定のオートエアコンを使っている方が、トルクレスポンスが良く、乗りやすく、きびきび走る。

 

普通に考えれば、少し不思議な現象です。

エアコンを使えば、コンプレッサー負荷が増えます。
軽自動車であれば、その影響は決して小さくありません。

 

エンジンの負担は増えます。
燃費も悪化しやすくなります。
低速域では、発進や再加速に重さが出やすくなります。

 

実際、昨年までのSHINOはそうでした。

夏場にエアコンを使用すると、ノーマルモードではかなり動きが鈍く感じられました。

街乗りでも、スポーツモードを使わないと流れに乗りにくい場面がありました。

 

しかしスポーツモードを使えば、当然ながら回転数は高めになります。
燃費も落ちます。
何より、車が常に少し無理をしているような感触があり、乗っていてストレスがありました。

ところが、今年のSHINOはそこが大きく変わっています。

 

もちろん、エアコンをOFFにすればコンプレッサー負荷は減るため、機械的にはさらに軽く感じます。

これは当然です。

しかし今回面白いのは、外気温38℃から40℃という条件でエアコンをONにしていても、以前のようなトルクの薄さや反応の鈍さが出にくくなっていることなのです。

むしろ街乗りでは、オートエアコンを使用している状態の方が、ECUとCVTの制御が負荷を正しく読んでいるように感じられます。

 

・発進
・再加速
・低中速域のつながり
・アクセルを軽く踏み足した時の反応
・CVTが変速比を探る時の迷いの少なさ

 

このあたりが、昨年とは明らかに違います。

実は今回の変化は、ひとつの部品交換によるものではありません。

この冬から進めてきた、SHINOへの一連の取り組みの総合結果だと考えています。

 

まず大きかったのは、インタークーラー冷却風の見直しです。

 

 

SHINOは、EN07スーパーチャージャーを搭載する上置きインタークーラー車です。

上置きインタークーラーは、ボンネットダクトから外気を取り入れ、過給後の空気を冷却します。

しかし、外から見て空気が入っているように見えても、それが本当に冷たい外気なのか。
ラジエターを通過した後の熱気が混じっていないか。
エンジンルーム内の熱が回り込んでいないか。
冷却風が入ったあと、きちんと抜けているのか。

ここを見なければ、本当の働きは分かりません。

 

SHINOでは、インタークーラーへ向かう冷却風に、ラジエター通過後の熱気が混じっている可能性が存在する事に気付きました。

これはかなり大きな気付きでした。

 

過給圧が同じでも、インタークーラーに当たる風が熱を含んでいれば、過給された空気を十分に冷やすことはできません。

吸気温が安定しなければ、燃焼も安定しにくくなります。
ECUの補正も入りやすくなります。
結果として、アクセルに対する反応が濁ります。

 

過給車で大切なのは、ブースト圧だけではありません。

圧送された空気が、どの温度で、どの密度で、どのようにエンジンへ入るのか。

ここが重要です。

 

そして冷却風は、入れるだけでは足りません。

抜けが必要です。

 

風は、入口だけ作っても流れません。
出口がなければ、圧が溜まり、熱が残り、次の冷たい空気が入りにくくなります。

これはインタークーラーだけの話ではなく、ラジエター、エンジンルーム、アンダーフロア、ブレーキ冷却、車体周辺の空気の流れにも共通する考え方です。

 

空気は、入れることと抜くことがセットです。

SHINOでは、この「抜け」を意識したことも大きかったと思います。

 

次に大きかったのは、CVTフルードを純正に戻したことです。

CVTは、単なる変速機ではありません。

エンジン側のトルク、アクセル開度、車速、負荷、油温などを見ながら、変速比やロックアップ、つながり方を制御しています。

つまり、エンジンECUとCVTマネジメントが協調して、車両の動きを作っています。

 

ここに、純正設計と異なる摩擦特性や油圧応答を持つフルードが入ると、必ずしも制御が気持ちよく働くとは限りません。

もちろん、社外フルードがすべて悪いという話ではありません。

しかし、SHINOという車両においては、純正フルードに戻したことで、CVTのつながり方、負荷変動への追従、街乗りでの自然さが明らかに良くなりました。

 

エンジンだけ元気でも、CVTがそのトルクを自然に受け止められなければ、走りは整いません。

軽自動車の過給CVT車では、ここが非常に重要です。

 

さらに、電装とGND環境の見直しも行っています。

エンジンブロックやCVTケース周辺のGND条件。
主要カプラー。
点火系。
ECU周辺の接点状態。
バッテリー周辺から車体側への補助的なGND経路。

 

こうした部分を、Air Repairでは制御環境として見ています。

GNDは、単なる電気の戻り道ではありません。

現代車では、センサー信号をECUが判断するための基準にもなります。

基準が揺れれば、ECUが見ている世界も揺れます。

センサーが出している信号が正しくても、その基準となるGNDや接点状態が不安定であれば、ECUの判断環境は濁ります。

これはエンジン制御だけではありません。

 

・CVT制御
・点火
・燃料
・スロットル
・エアコン負荷補正
・電動ファン制御
・各種センサー入力

 

それらはすべて、電源、GND、接点、配線、負荷状態の上に成り立っています。

 

SHINOでは、そこを少しずつ整えてきました。

だから今回の変化を、単純なトルクアップとは考えていません。

エンジンだけが強くなったのではなく、車両全体が無駄に頑張らなくなった。

この表現の方が近いと思います。

 

昨年は、エアコンONで車が重くなり、ノーマルモードでは反応が鈍く、スポーツモードで回転数を上げて補っていました。

それは、ある意味で制御の鈍さを回転数で誤魔化していた状態だったのかもしれません。

 

今年は違います。

ノーマルモードでも、エアコンONでも、街乗りの流れに自然に乗れる。

アクセルを大きく踏まなくても、車が前へ出る。

CVTが変に逃げたり、迷ったりする感触が少ない。

高温環境でも、トルクレスポンスが濁りにくい。

 

これは、エンジン、過給、冷却風、CVT、GND、接点、ECU判断環境が、ようやく同じ方向を向き始めた結果だと感じています。

SHINOには、すでにブーストアッププーリーが装着されています。

 

スーパーチャージャーのプーリー交換は、過給機の回転数を機械的に変えるという意味では、比較的分かりやすい方法です。

クランクから機械的な仕事を取り出し、過給機を多く回して空気を押す。

理屈としては素直です。

 

ただし、ブーストUPとは、単に圧力を上げることではありません。

過給圧が上がれば、そのままシリンダーに入る酸素量が比例して増えるわけではありません。

圧力が上がっても、吸気温が上がれば空気密度は下がります。

インタークーラーに入る冷却風が熱気を含んでいれば、過給された空気を十分に冷やせません。

冷却風の抜けが悪ければ、熱は残ります。

 

さらに、そのトルクをCVTが自然に受け止められなければ、エンジン側で作った力は走りに変わりません。

つまり大切なのは、ブーストを上げることだけではなく、圧送された空気が燃焼と駆動にきちんと変換される環境を整えることです。

 

ターボチャージャーの場合は、さらに複雑です。

ターボは本来、排気として捨てている熱エネルギーや圧力エネルギーを回収し、吸気側の圧縮仕事へ変換する装置です。

そのため、吸気側のブースト圧だけを見ても、本質は見えません。

 

・排気温度
・排気流量
・排圧
・タービン効率
・コンプレッサー効率
・吸気温
・インタークーラー能力
・点火時期
・燃料
・ノック限界
・排気系の抜け

 

すべてがエネルギー収支としてつながっているのです。

そこを見ずに、ブースト圧だけを追いかけると、エネルギーの流れを見失います。

 

SHINOはスーパーチャージャー車ですが、この考え方は同じです。

圧を上げることが目的ではありません。

圧送された空気が、ちゃんと仕事になる環境を整えること。

この冬からのSHINOへの取り組みは、まさにそこでした。

そして結果として、ブーストアッププーリーや単純な過給圧制御による変化が影を薄めてしまうほど、車両全体の反応が変わりました。

 

これはとても面白い経験でした。

マフラーを交換したわけではありません。
さらに大きくブーストを上げたわけでもありません。
派手な部品を追加したわけでもありません。

 

それでも、街乗りでの扱いやすさ、夏場の安定感、エアコンONでのストレスの少なさは、大きく変わりました。

この半年間のSHINOへの取り組みは、単なるチューニングではありませんでした。

 

むしろ、この世代の軽過給CVT車をどう読み、どう整えるのかを学ぶ作業だったと思います。

マフラーを交換するより、ブーストを追いかけるより、はるかに多くのことを教えてくれました。

 

SHINOで目指しているのは、軽スポーツではありません。

どちらかといえば、軽GTカーとしての味付けです。

 

速さだけを追うのではなく、日常で気持ちよく走れること。
高温環境でも、エアコンONでも、制御が崩れないこと。
CVT車として自然に流れに乗れること。
古くなった車両を、現代の目で読み直すこと。

 

そのため、シートはあえてOP装着のフルフラットアレンジ・水洗い可能シートを踏襲しています。

実用性や日常性を捨ててまで、スポーツ方向へ振るつもりはありません。

ただし、ステアリングとシフトノブは、純正の質感があまりにもチープだったため交換しています。

これは見た目のカスタムというより、ドライバーが車と対話する操作系の品位を上げるためです。

 

SHINOで行っていることは、単なる修理でも、部品交換でも、旧車的な保存でもありません。

基本構造を尊重しながら、冷却、電装、GND、制御、CVT、空気の流れを現代の視点で整え直す。

だから私は、これを “Re-Bornプロジェクト” と呼んでいます。

 

古い車を古いままありがたがるのではなく、古い車が本来持っている構造を、今の知識でどう活かすか。

SHINOは、そのための教材でもあります。

 

外気温40℃で、エアコンONでもストレスなく走る。

その感触は、単にエンジンが強くなったからではありません。

車両全体の成立条件が整い始めたからだと思っています。

いきなり足さない。

まず読む。

 

・熱の流れを読む。
・空気の流れを読む。
・GNDの基準を読む。
・CVTの反応を読む。
・ECUが何を見ているのかを読む。

 

そのうえで、必要な場所に、必要なだけ整える。

SHINOが教えてくれたのは、そこでした。

 

まだ序章の”SHINO Re-Bornプロジェクト”。

これからが楽しみです。

 

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