目を開けるともう朝で、部屋中にコーヒーの香りがただよっていた。
とにかく頭が重くて痛い、生まれて初めて体験する二日酔は想像以上に
厄介なものらしい。
ガンガンとなる頭を無理矢理起こして周りを見渡すと、彼女は台所で
何やら支度をしているところだった。
「おはよう~」
もそもそと動く音が聞こえたんだろう。背を向けたままのご挨拶。
「うーん、おはよう。。。」
自分の声さえ響く二日酔の頭がちょっと憎々しい。
そうだ、昨日は久々に燃えて燃えまくった恋愛が、見事な一人相撲に
終わり、決定的な失恋をして泣きながら彼女のアパートに転がり込んだんだっけ。
ありとあらゆるお酒を持ち込んで、そして飲んで、泣き事ばかりの私の相手は
さぞ大変だったろう。
「昨日はかなり飲んだね~、さすがに二日酔じゃないの?」
くすくす笑う彼女の声がまたまた頭に響いてくる。
「うん。。。ごめん、コーヒーは胃にきそう。。。」
目の前のカップに注がれたコーヒーの香りさえ、胃に響いてくるようでつらい。
「OK~。いいものあるよ。」
台所から彼女が手に持ってきたのは大き目のグラスになみなみと注がれた
トマトジュースだった。
「トマトは胃にいいんだよ、そうそう、これにビールを入れれば丁度、誰かさんの
目と一緒の名前のカクテルになるしね」
にこっと笑う彼女。驚いて鏡を見るとなるほど、すっかり泣きはらした私の顔は
ウサギのような真っ赤な目だった。
「さ、乾杯しようよ」
彼女はコーヒーのはいったカップを持ち上げた。
つられて私もグラスを持ち上げる。
「乾杯?何に?失恋に?」
「ううん、真っ赤な目をしたままでいても、二日酔でいてもいい、
休日をつくってくれた神様に乾杯しよう」
なれないウインクをする彼女を見てちょっと笑ってしまいそうになった。
「かんぱーい」
昨日は一緒にいてくれて本当にありがとうっていうのは後にして、
とりあえず見知らぬ神様に二人で乾杯をして飲んだトマトジュースは
ほんのり苦くて、そしてどんなお酒よりもとても美味しかった。