06/27 チェンバロコンサート「名刺代わりのこの一曲」 | いぽぽぽぱんぱのブログ

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主に聴きに行った演奏会のことを書こうかと。

新潟市で2011年から演奏会に頻繁に行くようになりました。
主に地元で活躍されている演奏家さんメインです。
楽器経験もなく技術的なことはまったく書けません。
素晴らしい、楽しいなど抽象的な感想になると思います。

チェンバロ:笠原恒則さん

おまけステージ
 ソプラノ:外山しのぶさん

会場は個人のお宅「田代邸」。
当然初めて入ったのですがが、元々名の通った名士のお宅のようで、
すごい家ですね(汗)。

庭園の感じとか演奏会場となった部屋の雰囲気などは小澤邸を思い出させますね。
いい雰囲気ですし、個人主催の公演をこうやって一般に公開していただけるというのが、
うれしいですね。

公演は「名刺代わりのこの一曲」と名づけられていましたが、
いろいろなアーティストさんの有名な曲を紹介しようという趣向です。
私個人的には笠原さん個人の名詞代わり...的な曲というか公演かな?
とも思っていたので「なるほど」という感じです。

ただ、上記で「いろいろなアーティスト」と一言で済ませてしまいましたが、
この守備範囲が笠原さんでしかありえないんですよね(笑)。

バッハ、パッヘルベルなどは、まあ当然というか王道ともいえる選曲だとは思うのですが、

モーツァルト、ベートーヴェン、サンサーンスは、通常のクラシックなら普通ですが、
チェンバロソロでやろうとすると、なかなかないよな、と思いつつ、

さらには、
日本の舟木一男、いきものがたり、AKB48.
この辺は私はもう笠原さんの公演を何度も聴いているので驚きません(笑)が、
会場にはチェンバロを初めて聴くというお客さんもいらっしゃったので、意表を突かれたのではないでしょうか。

そして、締めはタンゴの世界から、
ディアンス、ピアソラ。

ホントに笠原さんの世界でしたね。
楽しい公演でした。

また、本編終了後にエクストラステージとして、
ソプラノの外山しのぶさんの演奏も披露されました。こちらも本格的で素敵な歌声でした。


今回特に印象に残ったのは、
バッハの「肖像画のカノン」および「パッヘルベルのカノン」。
それぞれの曲が持っている特徴をわかりやすく言葉で説明してくれたあと、
それを実際に演奏してくれたのですが、それがまた面白かったのです。

上記の曲はそれぞれ、一人では手が足りなくて演奏できないのですが、
足りない分を録音したモノで代用、、、という形式だったのですが、
その「録音したもの」を事前に準備しておくのではなく、その場で説明しながら演奏&録音、
次にそれを再生しつつ、残りの半分のパートを演奏して曲として成立...

いや、本当に説明しながらその場で録音してすぐにあわせるなんていうのは、笠原さんしかやらないですよね。
本当にオリジナリティあふれる工夫というか臨場感というか。

バッハの「肖像画のカノン」
・楽譜(A)があって当然ですが普通に聴いてもいい曲
・Aを逆さまにしても楽譜(B)として成立して、これまた曲として成立している。
・さらに(A)と(B)を同時に演奏(Bは一小節遅らせる)すると、これまた素晴らしい曲となる。
→まず(A)を演奏&録音したあと、改めて(B)を合わせて演奏。

パッヘルベルのカノン
・この曲は元々は3本のバイオリンとチェロの合計4人での演奏であるけれども、バイオリンの3名はすべて同じ楽譜を使っていて、
それを2小節ずつずらして演奏している。
→まずチェロと1本のヴァイオリン分を演奏&録音したあと、改めてバイオリン2人分を合わせて演奏。

面白かったです。


舟木一男やAKB48など日本の曲もそうですし、タンゴアンスカイも、リベルタンゴも、
王道というか常識的に考えるとチェンバロの独特の音色には合いそうもなさそうなのですが、
実際に聞いてみるとすごくいい曲に仕上がっているんですよね。


タンゴアンスカイ時には、本来ギターをたたいて音を出すところをカホンをたたくことで対応していました。
私はこの曲を聴くのは2回目だったので、心の準備ができていましたけど、知らない人はどこから音がでていたのだ?
と思った人は多いのではないでしょうか?...というか、公演中も今回は特にトーク等でもカホンについては触れられなかったので、
今でもわからないままの人は結構いると思います(笑)。

タンゴアンスカイで2回ギターたたく音を代用するためだけに、後半全曲をカホンを椅子代わりにして演奏。
なかなかのこだわりですね(笑)


終演後、これもいつもの光景といいましょうか、
「ちょっといいですか」と自然発生的にお客さんがチェンバロを取り囲みます。
こういうのも、今回の公演の笠原さんのトークや演奏などから、チェンバロという楽器、そして、笠原さん自身に興味がわくんでしょうね。
いい光景です。


笠原さんも最後にお話されたのですが、
今日はいろいろな作曲家の『名刺代わりの1曲』を演奏したけれども、もし、笠原さん自身の『名刺代わりの曲』といわれたら、
チャップリンの言葉を借りるようですけど「Next One(次に出演、演奏する曲)」とのことです。シャレてますね(笑)。

でも、私としては今日の公演は、
枠にこだわらないさまざまな選曲、そして、ネタ、丁寧なトーク等、笠原さんの特徴がよく出た公演で、
まさに「名詞代わり」だったと思います。

ただ、笠原さんはいろいろな奏者さんとのアンサンブルでも大活躍ですから、そちらを聴くとそれはそれでまた「名刺代わり」みたいになってしまいそうですけどね(笑)。


会場ではときどき猫さんの「にや~お」という鳴き声も(笑)。
通常の会場ではありえない、まさに個人のお宅ならではです。

(田代邸 1000円)

開演前にチェンバロ調整中の笠原さん。
ちょっと遠くをみているような表情ですが、音に集中しているんですね。
このときも含めて前半は座っているのはカホンではなく、普通の椅子でした。