京都の「夏」 7月 豪雨・猛暑・台風…異例の祇園祭 神事変更、人出も減る
京都市内で1カ月間繰り広げられた祇園祭は31日、「夏越(なごし)祭」で幕を下ろした。期間中、西日本豪雨や連日の猛暑、台風など天候に振り回されて神事や行事が変更を迫られた。例年にない過酷な条件下で行われた祭りを、京都地方気象台や市災害対策本部の記録を交えて振り返る。
祇園祭が始まった7月1日の最高気温は34・9度。長刀鉾の稚児たちが「お千度の儀」で訪れた八坂神社(東山区)の上空には本格的な夏到来を告げる青空が広がっていた。
だが、好天は続かず、長刀鉾で「吉符入り」が行われた5日には大雨警報が発令。会所に集まった人々の携帯電話に避難勧告・指示の緊急速報メールの着信音が響き渡り、同会稚児係は「神事の妨げとなる」と携帯電話の電源を切るように要請した。この日だけで7月の平年の77%にあたる171ミリの雨量を観測。その後も雨は続き、西日本豪雨の災害を引き起こした。
猛暑の影響は大きかった。前祭(さきまつり)宵山期間の14日から酷暑が続き、まちなかへ人は出たものの、17日の「前祭山鉾巡行」の人出は、昨年比5万5千人減の16万5千人だった。
18日から後祭(あとまつり)の山鉾建てが始まった。20日には「曳初(ひきぞ)め」が行われたが、御所南小(中京区)は熱中症予防のため、4年生約180人の参加を見送った。後祭巡行日(24日)に実施する「花傘巡行」は参加者の体調を考慮して2003年以来の中止となった。
「後祭巡行」の24日は、午前8時には気温が30度を突破。祇園祭山鉾連合会は観客に無理をしないように呼び掛け、各保存会に曳子(ひきこ)やかき手にペットボトルを携行させるよう求めた。
同日夜の「還幸祭」では、3基ある神輿(みこし)の一つ中御座神輿を先導する久世駒形稚児は、熱中症予防のため一部行程を自動車に乗って進んだ。綾戸国中神社(南区)の杉浦匠宮司は「何かあってからでは遅いと思って判断した」と話す。
祭り最終盤に差し掛かり、鴨川の水で神輿を清める「神輿洗い」の28日には台風12号が襲来。京都市には午後4時前に暴風警報が発令された。例年、神輿は四条大橋まで運ぶが、今年は八坂神社境内に置いたまま、鴨川の水を運んで神事を行った。同神社によると境内での「居祭(いまつり)」の神輿洗いは1946年以来という。
31日の夏越祭。集まった山鉾や神輿の関係者らを前に森壽雄宮司は「大雨、猛暑、台風と相次いだ。さまざまな影響があり、いつも以上にお疲れだと拝察する」とあいさつし、1カ月間の祭りを支えた人々の苦労をねぎらった。