首相、新国立競技場建設計画「白紙に戻す」
安倍総理大臣は総工費が当初の2倍近くの2520億円に膨らみ、批判を浴びている新国立競技場の建設計画を白紙に見直すことを正式に表明しました。
「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直す、そう決断いたしました」(安倍首相)
総工費が当初の計画の倍近い2520億円に膨らんだ新しい国立競技場の建設計画。世論の批判に応える形で安倍総理は17日、正式に見直しを表明しました。
「コストが当初の予定よりも大幅に膨らみ、そして、国民の皆様、あるいはアスリートたちからも大きな批判がありました。このままでは、みんなで祝福できる大会にすることが困難であると、そう判断したわけであります」(安倍首相)
費用が膨らんだ大きな原因とされているのが「キールアーチ」と呼ばれる巨大なアーチ構造ですが、このデザインを取り込んだ案について、安倍総理は当初、こう述べていました。
「2020年の東京大会では、誰も見たことのないような新しいスタジアムをお見せするだけでなく、財源まで確保できると、お約束できます」(安倍首相)
そして、政府は先週まで計画案の変更に慎重な姿勢を示していました。
「安易にデザインを変更することは我が国の国際的信用を失墜しかねない」(菅 義偉 官房長官、6日)
IOC=国際オリンピック委員会の総会でのプレゼンテーションでも示したデザインを変えれば国際的な信用を失いかねないほか、今から計画を変更すれば建設が間に合わないリスクも出てくるからです。
「国際コンペをやって、新たに新しいデザインを決めて、基本設計を作っていくということでは時間が間に合わない」(安倍首相、10日)
しかし、オリンピックメダリストの有森裕子さんが涙ながらに抗議し、巨額の費用はスポーツ振興などに使うべきと訴える姿が伝えられたりするなど批判は収まる気配を見せず、政府・自民党内には危機感が広がりました。
「この問題は安保と違って分かりやすい。だから、支持率が下がる原因になる」(自民党関係者)
安全保障関連法案の採決強行で批判が出る中、この問題を放置すれば支持率の低下も加速しかねない。そこで、官邸は見直しを決断しましたが、一つハードルがありました。
計画を変えれば競技場の完成は遅れ、2019年に行われるラグビーワールドカップの会場としては使えなくなることに。そこで、安倍総理は16日夜、東京オリンピック組織委員会の会長で日本ラグビー協会の会長も務めた森元総理と会って理解を求め、17日午後、正式に森氏と総理官邸で会談し了解をとりつけました。
「政府がやるんでしょ」(森 喜朗 元首相)
「東京都、それから国交省、ぜひオールジャパンの中で協力していただけるよう、丁寧にお願いしていきたい」(下村博文 文科相)
安倍総理と会談した下村文部科学大臣は、計画を白紙に戻してもオリンピックには間に合うという調査結果を専門家から得たと明らかにした上で、できるだけ速やかにコンペの募集を始めて、半年後に新しい案を選び、2020年の春までに完成させると説明しました。ただ、費用のメドについては「これからです」として明言しませんでした。
また、当初のデザインを変更することについては・・・
「当然、契約の当事者であるJSCにおいても、財政やゼネコンについて適切に対応する必要がある」(菅 義偉 官房長官)
「オリンピックは国民皆さんの祭典。主役は国民お一人お一人、そしてアスリートの皆さんです。ですから皆さんに祝福される大会でなければなりません。国民みんなで祝福できる、そして世界の人々から称賛される大会にしていきたい」(安倍首相)
「やっぱりオリンピックは建物どうこうじゃない。国民の心が一つになることが大事だ」(首相周辺)
半年後に決めるという新しい計画は、オリンピックの成功に向け日本が一つにまとまっていけるものとなるのでしょうか。
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【新国立競技場問題】五輪 負の要素に思われたくない 有森さん(岡山出身) 涙の訴え
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