ここ2年ほど、メインで使っていたBespokeの松脂
掛かりはSanctusの方がある印象ですが、Sanctusは音色があまり美しくなく、音色の点でBespokeを使っていました。
只、今年「ル・グラン・タンゴ」を演奏する為、もう少しパワフルな松脂が無いのか?と考えてました。
そこで、気になったOldMaster GoldのDarkを手に入れてみました。
この松脂同じDarkでも出荷のロットの違いなのか分かりませんが、ラベルには幾つかバージョンがあるようですね。
自分が手にれた物のラベルは「Dark Gold」となっていて「2」や「Ⅱ」と言う数字は入ってませんでした。
名前の由来は1,500年頃のレシピを元に4種類の松脂を混合して製造されたと言う所から来る様ですが、Goldと言うのは24kの金が含まれている意味だそうです。
開けてみると缶の底部にしっかり貼り付けてあります。
色の感じはSanctusに近い様です。
この状態で塗ることが出来るのはSanctusと同じで、塗りやすく、乾燥もし難いでしょう。
他の松脂との圧倒的な印象の差は音の明るさと音量です。
「掛かりの良さ」「グリップの良さ」と言うのとはやや違う気がします。
確かに、乗せた場所からあまり圧力を掛けなくともパーンと音が出ますから、手応えに関しては言う事はありませんし、その辺の差はSanctusと余り差がないのですが、大きな違いは音が明るい事です。
他の松脂も同様ですが、美しさ=やや落ち着いた音、悪く言えば暗い音に対して、高域の響きが良く出ている様です。
つまり、他の松脂が弦の中心部分をしっかり引っ張って振動させているのに対して、OldMasterの場合は弦の表面を高速に振動させているイメージで、その為、響きが明るく、同時に音も大きく感じるのかもしれません。
例えるなら、他の松脂が分厚いナタなら、OldMasterはキレ味の良いカミソリと言う感じでしょうか。
その為、下手すると「匕ー」と言う音が出そうになり、実は最初に使った印象は「粉っぽくてやけにギラギラした音、ヒーと時々雑音もするし失敗したかな?」と思って、速攻御蔵入りだと思ってました笑
どうやらこの松脂は塗って暫く弾いて(温度を上げて)毛に馴染ませるのも必要な様で、その上で適度な弓圧とスピードで弾けば非常に明るく圧倒的な音量で楽器が鳴ってくれて、ル・グラン・タンゴの様にパワフルでキレの良い音を要求される曲に威力を発揮してくれそうです。
OldMasterは24kの金が含有されているそうですが、松脂に含まれている金の成分が、松脂単独で引き出せない高域の振動に寄与しているのかどうかは分かりませんが、他の松脂とは明らかに異なります。
勿論、全ての曲に向いていると言う訳では無く、音が立ち過ぎるので、小編成の室内楽や古典の場合はこれまでのBespokeが良いかもしれません。
オールドマスターには自分の手に入れたDarkの他、Light及びコントラバス用のBassDarkがあります。
追記)
Facebookでこの松脂を気に入った事を書いたら(自分のFacebookは基本、音楽関係の直接の知り合い)、意外にチェロ友は知っている人が多く、人気があると言うのを知りませんでした笑
自分の場合、Bespokeや弦のワーチャルの様に、一度気に入ると結構続けて使って、その他の情報を積極的に求めないので知りませんでした。
その後、自己考察ですが、金が入っているメリットは松脂の粘性だけに頼った場合、引っ掛かりやグリップを求めると、響きが重くなる(上記でナタと書きましたが)事を防ぐ点では無いかと考えてます。
粘性が高いと言う事は、振動を吸収しやすいと言う事を示しているので(振動吸収用のジェル等をイメージするとわかりやすいでしょう)、当然、弦の高域の振動を吸収する筈なので、良く言えば、柔らかい音、悪く言えば、地味な暗い音になる筈ですし、一方で硬い松脂は高域の振動を吸収し難い反面、掛かりが悪くなるので、低弦の場合、太い弦等は弾き難くなるでしょう。
世の中の弦楽器用の松脂はバイオリンからコントラバスまでの対象に対して配合を工夫して求められる音を出す様に作られていると思いますが、金の様な柔らかい金属が松脂の中に含まれていれば、その金が弦を捉えてくれるので、極端に粘性に頼らず掛かりの良さを得ることが出来るのでは無いでしょうか。
又、最初に毛に塗られた松脂は弦にも付着しますが、金属は基本、余程の高温で無ければ形を変えませんので、弦と毛に付着した金同士がお互いに引っ掛かる事で摩擦係数を高めて手応えを良くしているのでは無いかと思います。
この松脂はかなり粉っぽいのですが、恐らく、毛から弦へ付着する必要もあるのでは無いかと思います。
実はオールドマスターではストリングクリーナーを出しているので、自身の松脂が粉っぽくて弦に付着するのは想定内なのでしょう。
ちなみに、下記は国内在庫切れっぽいですね。
代表的なショップを掲載しておきます。
話を戻しますが、コントラバスの松脂等はポップスに代表される様な、夏場になると「水飴かい?」と言う状態になる様な柔らかい物がありますが、ここまで来ると少し塗り過ぎると弦に毛が張り付いて運弓が止まってしまうと言う現象も発生します。
当然、細かい動きも出来ない訳で、場合によってはオーケストラでバイオリンと同じ動きを要求されるチェロには不向きでしょう。
金属が含まれている松脂としてはリーベンツェラーやラリカ(銀が含まれている物もあるらしい)が知られていて、自分もチェロを始めた初期の頃にリーベンツェラーを使った事がありましたが、経験値が少なかったので、当時、他の松脂との違いは良く分からなかった気がします。
ちなみに、今回は、音量(華やかな音色はオプション)を求めてこれにしましたが、かなり粉っぽく、直接音はギラギラしていますし、実は自分の好みではありません笑
粉っぽい松脂ってハイポジションを弾くと指に付着して徐々に弾き難くなるし、第一、弾いた後の掃除が大変。
それに弾いていて、ギラギラした音ってやはり気持ち良くはありませんよね笑
自分で弾く分には、音が小さくとも柔らかい美しい音が良いです。
低遅延Bluetoothのモニターシステムを使って、遠くから雑音が無い音色を聴いてみて、ハッキリとしたクリアな音になっている事が分かるくらいですから、弦はヤーガーで柔らかい音色が好きと言う人には向かないと思います。
自分もケース・バイ・ケースで、音量は然程求められない小編成の室内楽とかはこれまでのBespokeを使う場合もあるかもしれませんが、取り敢えず、ピアノがバンバン鳴るソロやオーケストラでは役に立ちそうです。
追記)
ストリングクリーナーを販売しているので探してみましたが手に入らなかったので、取り敢えず手持ちのダダリオのストリングクリーナーで弦を綺麗にした所、ギラギラ音=ノイズが無くなりました笑
うーん。弦はたまにこびり着いた松脂を落としておかないといけませんねぇ。