最終的に決定したセッティングはA-Gまでをオイドクサ、C線のみオリーブと言うセッティングで、これはガット弦を使うチェリスト、スティーブン・イッサーリスの推奨セッティングでもある。
オイドクサはオリーブと比べて弦も細く、ガット弦の中でもオブリガードや他のスティール弦にかなり近い。
とは言え、近いと言うだけで太いのは間違いない。
実はそれ以前はA線のみプレーンガット弦も使用してみたので、順番からそちらを先に書く事にした。
プレーンガット弦で有名なToro社の物で、ここの弦は同じA線でも幾つか太さを選ぶことが出来る為、メディアムとなっている120Φ、116Φの2種類を使ってみた。
これは120/100mmと言う値の様で、実際には1.2mm、1.16mmとなる様だ。
プレーンガット弦は、何の変哲もないコードで、何れもVarnish仕上げを選択した。
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Varnish仕上げというのは弦をニスに浸して乾かしたもので、手の湿り気や湿度を吸収しにくく、それによる弦の伸び縮みの影響が少ないらしい。
実際に使ってみた印象だが、メディアムと言われる太さはオリーブに近い太さで、その下の116Φがオイドクサに近い太さの様だ。
音色的にはオイドクサよりもザラつきがある感じだが、ガット弦らしく柔らかい音色で、音量もそれなりに有る。
音量はメディアム>オイドクサ>116Φと言う印象で、太さに比例するが、音色や音量以上に、これは使えないと思った理由があった。
Varnish仕上げを選択した為なのかもしれないが、弾いてると弓が滑る場合があり、時折「ヒー」と言う具合に音が裏返るのだ。
常時でなく、時折なのが困るのだが、A線、D線両方押さえる状態で移弦がある場合(例えば、D線でC#A線でF#)にD線からA線へ移弦するとかなりの確率で音が裏返る。
又、同じA線でもシフトがある場合に、スラーで大きなシフトをする場合も裏返る時がある。
こういう事があるとオケならともかくソロでは安心して弾けない。
オイドクサやオリーブでは全くその様な問題は無いので、このプレーンガット弦特有の問題だろうと思うが、相当慎重に弾いても発生する。
Varnish仕上げにすると表面がツルツルすると言うのは知ってたが、暫く弾けば弓が当たる部分の表面のVarnishが剥がれるから問題ないかもしれないと思っていた。
しかし、メディアムは張った当初からこの音が裏返る状態が発生し、暫く弾いても收まらず、メディアムより細い116Φの方は当初発生して無かったので、こちらは問題ないかと思っていたが、暫く弾いてると、やはり同様に発生して、以後收まらない。
弓の状態にもよるかもしれないと毛替えをした後の状態の良い弓でも発生する為、そうまでして敢えてプレーンガットを選択する必要が無いと言う結論になり、自分の場合は何れも不採用とした。
いわゆるバロック等の演奏であれば問題無いだろうが、ロマン派等の様な動きも大きく、スラーも沢山ある様な曲までカバーしようと思えばプレーンガットを使う理由はあまり見当たらない気がする。
その点、オイドクサ等は曲を選ばず幅広くガット弦の音色を活かせる事からソリストであるイッサーリスも採用しているのではないだろう。