チェロのホール練習とフォーレ「夢の後に」 | iPhone De Blog

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2009年12月7日からスタート
iPhone3GSからiPhoneユーザのLEONがiPhoneやAndroidなどを中心にしたデジタル系ガジェット、IT関連ネタ、趣味のコントラバスやチェロを中心としたクラシックネタ、2022年から始めた自家焙煎に関する話や日常の話まで幅広く書いてます。

僕の地元では無いが、郊外に席数が600程の中型音楽ホールがある。

そこはホールを格安で使って練習が出来る企画があり、普段は反響板無しなのだが1月はお年玉企画で反響板付と言う事で、前月に予約して2時間ほど練習が出来た。

元々、ピアノを弾く人の為の練習で使えると言うことで、ホールにあるスタインウェイとベーゼンドルファーが舞台上に2台設置され好きな様に弾けるのだが、僕はチェロを持って伴奏者の人と二人で借りた。

企画の価格だと1人1,500円/時間で、2時間借りたので1人3,000円だが、冬の寒い時期なので暖房も入り反響板付きでピアノも2台弾けるという事ならかなり格安な金額と言える。



広いホールで弾くと言うのはとにかく最初は肩に力が入る。


普段狭い家などで弾いてるだけなので広さに圧倒されて右手も左手もガチガチとなる。

しかし、この響きに慣れてくるとホールと一体感を感じる瞬間もあり、非常に良い経験となる。

たまに発表会などで大きなホールで弾くこともあるかもしれないが、時間をタップリ使える事は先ず無い。

僕もコントラバスでこのクラスのホールでソロを弾いた経験は数える程しかなく、それもゆっくり時間が無かったので、ホールの音に慣れる頃には演奏が終わっていると言う事が多かった汗

今回、発見したのは、良くオーケストラの練習などでは「遠くの音を聞け」と言われるが、ソロで遠くの音を聞こうとすると普段聞き慣れない音を聞かないといけない為、演奏以外に注意力が必要となり余計に無駄な力が入ってしまう。と言う事。

やはり先ず自分の楽器の音に耳を傾ける事で普段聞き慣れた音が入って来てリラックスが出来る様になる。

響きの良い場所で弾いてるのだから、普段よりも絶対良く聴こえてくるのは間違いない訳で、そこで安心感を得ると言う感じだろう。



ピアニストにも客席側で聞いて貰ったら後ろまで良く聴こえてくると言う事だった。

合わせたのは近くなったN響のFさんの公開レッスンで受講するフォーレの「夢の後に」と先日レッスンを受けたチャイコフスキーの「感傷的なワルツ」



あーだこーだと言いながら合わせてると2時間なんてあっと言う間苦笑

いつも伴奏で付き合って貰ってるSさんは御自身でヴァイオリンも弾かれるのでボウイングがどうのと言う話も出来る。

実は今回付けたボウイングは歌に近いニュアンスで付けている為、楽譜を見ながらボウイングが面白いと言われた。

その時少し話をしたが折角なので「夢の後に」で僕が少し研究した内容をここで書いておきたい。

【夢の後に】

「夢の後に」はチェロだけで無く、ヴァイオリンなどでも良く弾かれる曲だが、実は元々歌曲だ。

フォーレと同僚だったビュシーヌと言う人が既にあったイタリアのトスカーナ地方の伝承詩をこれまた意訳して、これにフォーレが曲を付けたものだ。

但し、原曲の歌詞はフランス語なので、僕は全く分からない苦笑

しかし、フランス語の意味やニュアンスと言うのは意識した方が良いと思い、
IMSLPで原曲のPDFを探した。

※ちなみにこの曲はOp7-1になる

http://javanese.imslp.info/files/imglnks/usimg/4/40/IMSLP129941-WIMA.c57c-Faure_Op.7no1_Apres_un_reve.pdf

原曲の歌詞はこれ

Dans un sommeil que charmait ton image 
Je rêvais le bonheur, ardent mirage,
Tes yeux étaient plus doux, ta voix pure et sonore,
Tu rayonnais comme un ciel éclairé par l'aurore;

Tu m'appelais et je quittais la terre
Pour m'enfuir avec toi vers la lumière,
Les cieux pour nous entr'ouvraient leurs nues,
Splendeurs inconnues, lueurs divines entrevues,

Hélas! Hélas! triste réveil des songes
Je t'appelle, ô nuit, rends moi tes mensonges,
Reviens, reviens radieuse,
Reviens ô nuit mystérieuse!

ただ、日本語訳をそのまま見てしまうと翻訳者の変な意訳が入るので、こういう場合、自分がある程度分かる英訳を見るようにしている。

フランス語と英語と言うのはラテン語系なので、比べてみれば分かるがかなり似ていると言う理由もある。

まあ、これも意訳があるので全く同じとは限らないんだろうけど、英語版はこれ。

In a slumber which held your image spellbound
I dreamt of happiness, passionate mirage,
Your eyes were softer, your voice pure and sonorous,
You shone like a sky lit up by the dawn;

You called me and I left the earth
To run away with you towards the light,
The skies opened their clouds for us,
Unknown splendours, divine flashes glimpsed,

Alas! Alas! sad awakening from dreams
I call you, O night, give me back your lies,

Return, return radiant,
Return, O mysterious night.

日本語訳も幾つかあるのだが、僕はこれが中々文学的で元詞の受けるイメージに近いと思う。

君の姿に魅了され まどろみの中
燃え立つ幻のような幸福を私は夢見ていた
君の瞳はかくも優しく その声は澄み 響き渡る
君は光っていた あけぼのに輝く空のように

君は私を呼び 私は地上を離れ
一緒に光の方へと逃げ去っていった
空は私たちに雲を開き
そこにかいま見た未知なる輝き、神の閃光よ

ああ しかし 悲しき夢の目覚め
私は呼びかける おお夜よ おまえのいつわりを返しておくれ
再び戻り来れ 輝きよ
今一度帰り来れ おお 神秘なる夜よ

【歌手の話】

歌詞が分かったら、やはり元の歌曲を聴いてみるに限る。

詩の内容から圧倒的に男性が歌う方が良い筈で、やはりフランス人に限る。

これまた便利なことにフランスを代表するバリトン、ジェラール・スゼーが歌ったものがYouTubeにあり、録音の状態含めてこれが最も参考になった。

http://www.youtube.com/watch?v=qRrdWhKuwQ4

もう一つ捨てがたいのがこれで、女性だが、ドビュッシーに絶賛されたソプラノ ニノン・ヴァランと言う歌手。

これはかなり雑音が多いのだが、ソプラノと言っても甘々な感じで無く、何より発音がフランスっぽい?(あ、行ったこと無いからあくまでイメージ(笑))
ソプラノにしては少し低い感じの声も悪くない。

http://www.youtube.com/watch?v=5Rf5up2ob9k


※歌が始まる空白時間がすごい雑音なのでご注意!

【歌詞の話】

さて、これらのデータから実際の演奏に反映させる具体的な例として幾つか紹介する。

現代曲でも歌が先、歌詞が先と言うのがある様だが、この場合は歌詞が先なので歌詞の情報は重要だ。

例えば、「こんにちは」はやはり「こーんにちは」や「こんにちーは」では無いし、「こんにちはー」「こんにちはー」「世界の国から~」となるのと同じ。

実際の曲を眺めるとimageと言う言葉が、3小節目の三連符の最後の音と次の小節に割付されている事に気が付く。


つまり三連符の最後の音は次の音に繋がる音(言葉)なので、そう言う意識があるのと無いのとでは大きく変わる。

しかし、歌詞の2番に相当する箇所(チェロだとオクターブ上がる場所)を見ると、先のフランス語の歌詞ではla terreと言う言葉、英語だとthe earthとなる場所で、18小節目で la 19小節目で terreとキッチリ別れている。

ちなみに、弓順はどちらも同じだが、この歌詞によればここは切っても良さそうな場所なのでそう言うイメージで弾く(1回めと2回めは違う言葉だと言う意識)と言う事になる。

又、7小節目の3連符は「ア~~」と言う単なる伸ばしなので、敢えて1小節をワンボウとしている。

その後の9小節目の四分音符と八分音符の3連は演奏ではスラーで繋がっているが、実は前の八分音符と後の四分音符が一つの言葉で割付されていると分かれば、「ターラ」「ターラ」では無く「タ~ラタ~ラ」と弾く事が分かる。

最後の三小節半など、mystérieuse=mysteriousと言う一つの言葉なので、この辺りで最後だからと変に歌う必要が無いのも分かり、言葉のイメージがあるのと無いのとでは弓順や演奏も変わってくる。

【発音の話】

言語であるので発音も大きな要素で、言葉のスピード感は当然、例えば、最後の部分のReviens, reviens radieuseと言うre、raは特有の舌を震わす様な日本語には無い発音だ。(フランス語は全く知らないのであくまで聞いたイメージ)

昔、アラン・ドロンと言う俳優がCMで洋服の宣伝か何かをしていて、このフランスっぽい発音がカッコいいと思ったことがあるが、この場所は四分音符に割付されている。

もし、この発音の持つイメージがあれば弾き方もかなり変わるのではないだろうか?

この様に歌詞がある曲と言うのはより情報が得られる為、一度元の歌詞を見ておくのは表現にプラスになって良い。

【チェロの演奏】

敢えて、手軽に聴けるYouTubeの範囲で言えば、最後になったが、チェロならやはりこのトルトゥリエの演奏がもっともフランス語の歌詞を理解して歌ってる気がする。

特に先で紹介したRaやreの箇所は、おぉ!と言う感じだ。

http://www.youtube.com/watch?v=uTGt9QkcSPA


話をホール練習へ戻すが、今回練習の画像があるのは練習を動画撮影した為で、自分の演奏を客観的に見るのは非常に勉強になるからだ。

特に、まだチェロは握って1年位なので(知らない人の為に書くとコントラバスは30年以上弾いていて、チェロを始めてからは、プロオーケストラの首席チェリストに月に2回レッスンを受けているので、先に書いたことはそれ程適当な話ではない。)、一番気になるのが右手。



特にレッスンで良く注意される弓の真ん中を過ぎた辺りからの肩や肘の動きを観察する為だ。

この辺りの動きが悪いと弓が真っ直ぐ動かずに綺麗な音が出ない。

上の写真はPhotoshopで3枚の写真を重ねて弓の場所に線を引いたものだが、ダウンからアップまでの一弓でこれだけ角度が変わっている。

肘から先が伸びてない為、それを肩でカバーして肩を上げている為、肘が上がってそれに連れて弓の角度が変わっている。

常にレッスンで注意されているところが、やはり中々治ってないし、実際に自分で見ると良く分かる
ううっ...

その他もビブラートが思ったよりも掛かってなかったりと、ガッカリするところばかりだが、アマチュアにとっての楽器は練習も楽しみの一つてへ

ま、気長にやろう
苦笑