この交響曲はアマチュアオーケストラでも比較的良くプログラムに上がる曲の1つで、2楽章には「家路」と言う名前で単独で抜き出されているくらい有名なコールアングレで奏でられるフレーズがある。
こればかりはチームプレーなので、プロオケならともかく、メンバーもまともに揃わない様なアマオケで、直前で誰が何処を弾くと言うのを配分して決めるので、大抵の場合は今ひとつ感がある。
今回も、現役3人で残り全員エキストラだから、普段の練習でも4声部が全部揃ってない状態で練習していて、エキストラが全部揃ったのは本番前の2日だけと言う状態。
本番当日のリハでもかなり酷かったが、リハ後ににステージ上を静かにして貰って、合わせて本番は「どうにか」と言う感じだった。
前日、一番最初に現役のトップから言われるままに弾いてみたのだが、あまりに酷く、時間も回数も少ないので、すぐに、現役3人の配分はそのままにしてエキストラの音の配置を僕が指定して変更した。
本番では8人で4,4と並んだのだが、最終的には、前列がトップからF、D♭(上)、A♭、F、として後列がステージ側からD♭(下)、A♭、D♭(下)、D♭(上)と言う具合にした。
音数としては全て2本ずつで、縦4人で×2で和声が出来るように並べている。
つまり、1プル+3プル、2プル+4プルでそれぞれ前後で和声になるようにして、出来るだけ和音が作りやすくしたのだ。
これを横並びとかで和音を作るととてもじゃないが聞き合わせるのが難しい。
この和声はD♭メジャーの和音だが、実は3度に来るべきFが転回して一番上に来ていて、その為、A♭とは短6度の関係になって、ここだけ聞くと安定して聴こえない。
その為、この最後のハーモニーを上手く作ろうと思うと、先ず、Fは外して考える方が良い。
ところが、大抵の場合は上手な人間がFを弾くのでFを外して考えることが少なく、実際に音を出す場合も、G線は弦が細い為音が出やすいのでFから出てしまうことが多いがこれは避けるべきだ。
やり方としては、最初にD♭のユニゾンを合わせ、それにオクターブ上のD♭を合わせる。
その後A♭の5度を乗せて、先ずD♭の「パワーコード」を作る。
「パワーコード」と言うのはロック系などで使われる用語だが、完全五度がハモると1つの音(この場合はD♭)に聴こえる事からそう呼ばれる。
ちなみに、D♭の倍音には必ずこの完全五度のA♭が含まれる為、実はこのA♭はそれ程必要な音では無く、響きを豊かにする為の音と理解した方が良い。
その為、A♭を弾く人間はあくまで下のD♭と響く様にあまり主張せずに鳴らしておく事が必要で、場合によっては音数を減らして、耳の良いバス弾きに任せると言う方法もありだ。
実は前日に最初に指定してやったのは 後列をD♭(下)、A♭、A♭、D♭(下)と言う並び。
つまり後列でD♭のパワーコードを作って、残りを前に任せると言う方法だ。
配置的には後列のステージ側に僕が座って「一番最初にD♭(下)音を出すから、皆それより後に出るように」と言ってあった。
一番下のD♭を外側で鳴らし、D♭とA♭を並べて、尚且つ音程の合いにくいA♭を隣同士にして音を聞き合わせると言う方法だった。
ただ、これだと上のD♭が少なくなる為、響きが少し重くなるかもしれないと思い変更した。
この辺りが中々難しいところだが、何れにしても、こうして作った5度の音のD♭にFを長三度で明るく響くように乗せると高い音で長三度が響き、あの最後の少し儚い和音が出来上がる。
仮に、このFがオクターブ下のFだった場合、和声の並びとしては正しくとも一気に響きが重くなって凡庸となってしまう筈だ。
敢えてコントラバスを使って和音を作らせ、この長三度のFを上に乗せたと言う辺りにドボルザークの真意がある様な気がする。
その為、このFの音程が低いと、D♭Minorに近くなって響きが暗くなり、2楽章の最後の幸せなハーモニーとならないのだが、このFは音域としては一番上の為、とても音が取りにくい。
特にA♭の音を聴いてしまうと先に書いたように微妙な音程に聞こえて難しくなる為、出来るだけD♭を聴いて合わせるのが重要だ。
そう言う意味もあって、実はトップの周囲にD♭の上下を配置して、トップを弾いている現役には「高めに弾くように」と言って、A♭を弾いている人には「あまり主張せずに弾いて欲しい」と言っていた。
もうひとつのFは前列最後部の腕の立つコントラバス奏者に頼んで弾いてもらう様にした。
まあ、それでも最後は当たるも八卦になるのだが、出来るだけそれを避ける為、僕はこの場所は基本的にD♭A♭に関してはその半音上のフラジオを4で取ってそこの半音下を2で取るようにしている。
こうすればまるで掛け離れた音程になる確率は少ない。
ちなみに、音を取るのは、その前にチェロのアルペジオがあって管楽器がバーンとやるところで取っている。
Fの場合だとGのフラジオから1音下を取る様にするし、こうすると低い方には行きにくくなる。
実際の演奏の場合でも練習同様D♭下→D♭上→A♭→Fと言う具合に、Fは最後に出てくるのが良い。
Fは和音のキャラクタを決める音なので後からそっと出てきても全然悪くない。
まあ、それでも8人とかでやると中々合わないのだが、この和音のコンセプトを理解して音を合わせる練習をしていれば、本番ではそれ程ひどい事態にならず「微妙」と言う線で済む筈だし練習時間が取れるならかなり良い線に行くはずだ。