Dotzauerの1巻を終了して | iPhone De Blog

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先日購入したドッツアウアーの教則本、2ヶ月ほどで、ドッツアウアーのメソッドの1巻を終了した。
まあ、自分で進めているので甘いところもあるかもしれないが(笑)前108曲は一通り弾いた。

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このメソッドは合わせて3巻に分かれていて

1巻 拡張を含めた1ポジション
2巻 2から7ポジション
3巻はハイポジションやそれ以外のテクニック

と言う構成になっている。

残念ながら、この3巻は現在出版されていおらず入手出来ないが、IMSLPにはKLINGENBERGと言う人が編纂した物が上がっていて非常にありがたい。

実際には、ドッツアウアーだけでは練習が足りないのでセバスチャン・リーの「40のやさしいエチュード」やポッパーの「15のやさしい練習曲」なども合わせてやっていて、特にポッパーは曲が良く出来ているので非常に楽しい。

ドッツアウアーの1巻を全て弾いてみた感想だが、やはり初学者向けの物としては実に良く出来ていると思う。


当然、進行状態によって、至る所でウェルナーと比較をしていたが、比べれば比べるほどウェルナーの出来の悪さが目に付くだけだった。


非常に荒っぽいくくりになるが、一言で言えばウェルナーはポジション基準、ドッツアウアーは調性基準と言う考え方となっている様だ。

僕の場合は既に他の楽器をやっていて、音楽はある程度理解している為、始まってまもなく臨時記号が沢山出てくる場面でもそれ程面食らう事は無いが、例えば、その楽器で音楽を含めて習得したい場合、やはり簡単な調性から徐々に進むのが普通だろう。

しかし、ウェルナーの様にポジション中心に考えると、そうなるのか出てくる調性がてんでバラバラとなってしまう。

一方のドッツアウアーは、これ(調性の順番)を確実に守りながらポジションに合わせて進行して行く。

一例だが、ウェルナーは4ポジションへ至るまでに出てくる調性に非常に偏りがあり、例えば、ポジションが変わって4ポジションになってすぐにこんなシャープが6個もあるinF#のエチュードなんか出てきても初心者は愕然とするだけだろう。

まさか、チェロの難しさを教えるのが目的ではあるまいが、頑張ってきた初心者も、この辺で挫折する初心者も多いのでは無いだろうか?
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もう少し方針の違いを上げると、例えば、ドッツアウアーでは早い段階でinF(♭1個)が出てくる。
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しかし、ウェルナーでは4ポジションから3ポジションが済んだ後、つまりかなり後半になって初めて出てくる。


photo:03


内容を比較すると、ドッツアウアーは一番高い音はレの音で、ドッツアウアーは1ポジションで弾ける範囲までしか出てこないが、ウェルナーはオクターブ上のファ、つまり2オクターブ出てくるので範囲は広い。

一方で、ウェルナーは、inFの短調であるinDmは1ポジションの後半で出てくる。

普通は長調→短調と進むの音楽の常識だが、この辺りを全く考慮せず、ポジションを基準に進めている為、と言う具合に初出に関連性が無い。
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こちらはウェルナーのinE♭(♭3個)だが、これも相当後で初出するが

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ドッツアウアーでは同様のinE♭も早い段階で出てくる。

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但し、スケールと言っても、ドッツアウアーの場合、1ポジションの範囲で出てくる音までしか出てこない。

要するに、調性は調性、ポジションはポジションとハッキリ別けていて、スケールでもそのポジションで弾ける範囲で終わり、エチュードもその範囲で弾けるものを用意している点が素晴らしいし、チェロの左手が難しい広い形(拡張)の易しい♭系から入っているのも良く考えられている。

実は、ドッツアウアーも2巻で所定のポジションまで進むと、弾ける範囲が上がるので、この様に上まで上がったinE♭のスケールが出てくる。

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ちなみにドッツアウアーでは#及び♭3個の範囲でメージャースケールを先にやり、そのマイナースケールは1巻の後半に順次まとめて出てくる構成になっていて非常に分かりやすい。

2巻ではメージャースケールとマイナースケールは前後してセットとなっている。


但し、ドッツアウアーも良いこと尽くめでは無い。


一番の問題は現代のチェロ奏法では使われない3―4間の拡張が出てくる点で、写真の79番などは、その練習が書かれている。

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これは、当時の技術的な標準だったのかもしれないが、例えば、以下の様なinCmなど、調性を基準にした時にどうしても1ポジションだけでは無理がある事も原因の1つだろう。


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僕は自分で判断して、適時1-2間の拡張やシフトを併用して指を替えたが、指導者レベルの人ならもっと良い解決方法があるだろう。

又、先のinE♭の例の様に、ポジションが上がればスケールの範囲が広がり、その都度同じスケールを練習する構成が冗長なると言う問題がある。


但し、こちらは「音楽の練習」と言う意味では、特に問題無いと思っている。

ドッツアウアーの構成はシンプルでも1巻で108曲、2巻が88曲のエチュードがあり、必ずしも量的に少ないと言う訳でも無く、このエチュードもウェルナーの様に単純な繰り返しが延々と出てくる物では無く音楽的にも優れていると言う点でも評価出来る。

まあ、プロの音楽家を目指すと言う意味で、子どもの頃からのトレーニングなら、ウェルナーの様に取り敢えず音楽は関係なく、繰り返しの多い過酷な訓練をやる方が技術的なハードルを上げるのかもしれない。


しかし、我々の様なアマチュア、それも音楽もそれ程詳しくないレイトスターターと言う点で言えば、徐々に、楽しみながら上達出来るドッツアウアーのメソッドはもう少し見直されるべきだと思う。

http://imslp.org/wiki/Violoncellschule_(Dotzauer,_Friedrich )