奏法に関する覚書 「ボストン デタッシェ」 | iPhone De Blog

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仲の良いブログ友達のMs.Violinistさんの「なう」に


セパ交流戦の季節。じつはプロが投げる直球は「変化球」なんです。何も考えずにボールを投げてみると、山なりのカーブになりませんか。まっすぐに行くように変化させているのが、直球の真の姿。弦楽器のボウイングも、弓先でスピカートが掛かるのを、調整してデタッシュになっているんですよ。 』と言うのがあった。


僕も楽器は弾いてるし、ピッチャーの投げる光景もテレビで見るが、読んでひらめき電球と言う感じだった。


いつも彼女の視点に感心するが、僕も今日読むまで気が付かなかった。

が、実は、僕自身、誰かを指導する必要がある場合(プロでは無いので普段から当たり前の様に指導する事はやらないが)、必ず、このリリースの瞬間と言うのを指導する様にしている。


つまり、ピッチングと言うのは投げる瞬間=リリースの瞬間が最も重要であり、その後と言うのは、本人もどうしようもないのだが、これは鍵盤楽器に似ている。


鍵盤楽器は鍵盤に連動したハンマーで中の弦を叩いて音を出すわけで、構造上、ハンマーで叩いた後の音はどうしようもない。


その為、ピアノ奏者は、厳しい訓練をして、このタッチを絶妙にコントロールして様々な音色を引き出す。


一方、弦楽器の場合は、弓を弦に乗せて音を出す擦弦楽器と言う性格上、弓を乗せて音を出し始めた後でも調整出来る為、ピアノのタッチやピッチングのリリースに当たる、「弓を乗せて音を出し始める瞬間」を疎かにしやすく、特にアマチュアの場合は、先で言うところの「山なりのカーブ」のボウイングをしている事が多く、大抵の場合、弓が動き始めてから暫くしてから音が出ると言う人が多い。


良く「ロングトーン」と言って、何度も弓の元から先まで往復で音を出す練習をするが、ただ、漫然とやっていると、いつまで経っても「山なりのカーブ」の音しか出せない。

「ロングトーン」の場合は既に弦が振動していると言う事もあり、その状態で何百回往復してもリリースの瞬間は覚えられないからだ。


その為、一般的なロングトーンと異なる、リリースの瞬間を覚える為の練習方法を別に指導している。


これは「ボストン デタッシェ」を身につける練習方法なのだが、この「ボストン デタッシェ」に関しては、僕の師匠が自身のHPでの質問に答えている内容が分かりやすいので引用したい。



ある質問者(アマチュアコントラバス奏者)が


例えばチャイコフスキーの悲愴の1楽章のHのあたりや、4番の4楽章、それからベートーヴェン英雄の4楽章の16分音符等を、クリアーに弾くのが当面の(遠い)目標です。

これらをバイオリンのようなリッチなデタッシェで弾くのは不可能なのでしょうか。 』と言う質問に答えているところだが、師匠は二つの説明をしている。


ちなみに質問者は短い音をクリアに出す練習をしている様で

バイオリンの初心者が楽器を始めるとき、ロングトーンではなくて短い音で良い音を出す練習から始めるというメソッドの話を伺ったのがきっかけです。


しかし、ストロークが短くなると腕からというより、手首のあたりで弾いてしまう感じで、どうも良い音になりません。

腕というか肩から弾いて、ストロークが短くなるにつれて、手首のあたりを固定する感じでやってみても、人形のような動きになってしまいどうもうまくありません。

良い練習方法を求めて試行錯誤しています。』と言う状況だ。

実はこの『固定する』と言うのは最も反対な行為なのは後で分かる。

() 及び 下線部は僕の補足


この質問は基本的に ON THE STRING、つまりスピッカート系のストロークではなく、弓を弦から離さないストロークに関するものだと解釈していいでしょうか?


(弦楽器には大きく、 ON THE STRING、 OFF THE STRING=アメリカ式表現。と言う二つの奏法が存在する。

音と音の間で弓が弦を離れるかどうかの違いで、離れないのがON系、離れるのをOFF系と言っている。

先のMs.Violinistさんが『弓先でスピカートが掛かる』と書いているが、弦楽器の弓はバネの様な状態となっている為、普通に乗せると必ずボールの様にバウンスするスピカートとなるが、このスピカートは弓が弦から離れる為OFF系だ。

この様に、演奏する側でも、その箇所をどちらの技術で弾くのか?と言うのを判断するのは大切だ。)

「英雄」の4楽章の16分音符なんかは少し跳ね気味のストロークでもいいと思いますが、つけて短い音を弾く場合(ON THE STRING)
には僕は指をなるべくバネのようにやわらかくするようにしてます。

車のサスペンションのような役割ですね。これはレヴィンソン(ニューヨークフィル首席)から学んだ考え方です。


もちろん手首も硬直しないように気をつけなければいけませんが、手首を動かしすぎると、特に速い音符では音がスカスカになってしまう可能性が大きいので指によるより繊細なショックの吸収というこの方法が僕は音質的に好きです。


(この為には、弓を深く握りこまずに、やわらかくした指が動かせるだけの遊びが必要だ。

僕は個人的に「フィンガーグリップ」と呼んでいるが、以前、少しやったゴルフでもこの様な考え方が主流だったと思うし、車のサスペンションでもサスペンションが働くだけの遊びが必要なのと同じだ。

『(意図的に)手首を動かしすぎると、特に速い音符では音がスカスカになってしまう』とあるが、先のピッチングでも手首のスナップが重要だが、このスナップは意図的に手首を動かすと勘違いしている人が多い。

手首を柔らかくした状態で、指先でボールの重みを感じながら投げることで、自然とボールについて手首が動いていきリリースの瞬間に「ピシ」と言う感じで動くだけなのと同じだ。

弦楽器の初心者が一生懸命手首を(意図的に)動かして弾いてるのを良く見るが、プロや上級者の手首は動いている様に見えても「動かしているのでは無い」のだ。)

速い音符を弓を弦につけて弾くいわゆる一般的に弦楽器でいうデタシェの場合には、このように指の働きにも注目してみてはいかがでしょう。


ご質問にある、ヴァイオリンのようなリッチなストロークというのはよくわかります。

こちらは弓を弦から一回一回リリースする感じのストロークのことですね、たぶん。これが一番難しい。


長いスピッカートというか、スローモーションで言うと、弦の中にぐっと入った弓がリリースされて次の音にいくというタイプ。


このストロークは特にジャーマンボウには非常な訓練がいります。


(日本で多い、ジャーマン弓の場合は、弓元と弓先のバランスが大きく異なる為、特にこのリリースのバランスが難しく、逆にスピカートなどのOFF系は非常に楽だ)


弓全体を「運ぶ」感覚をまず身につけるといいと思います。

ちなみに Ed Barker(Edwin Barker =ボストン交響楽団首席 )をはじめとするボストンの流派ではこれをデタシェと呼んでいます。ちょっと紛らわしいですが。

この指の弾力を使うオンザストリングのデタシェはわりと弓の圧力を高くして、弦の中に食い込むかんじでフォルテを出します。というかリリースがまったくない、コンスタントに弓が弦にグーッと乗ってるストロークです。


英雄の4楽章の16分音符なんかはこのストロークよりはリリースの入ってるBoston的なデタシェのほうがいいと思います。


指の弾力を意識することはボウイングの上達にとても有益だと思いますよ。


スピッカートの時には、僕は指も手首も動いているようには見えないでしょうけれども、弾力はとても大事です。


他の弦楽器にしても、コントラバスのフレンチ奏法にしても、指は積極的に使いますよね。


ジャーマンボウ奏者ももっと積極的に使えば、より幅の広い繊細なボウコントロールの可能性が増えてくるのではないかと思ってます。


ジャーマンボウの場合特にそうではないかと思うのですが、スピッカート系のストロークとオンザストリング系のストロークの中間あたりというのが非常に難しいですよね。


少しリリースのあるデタシェとか、ゆっくりとした長めのスピッカートとか、その辺がジャーマンボウは非常に難しいので、根気よく訓練する必要があると思います。


以上だが、僕が、師匠から教わった「ボストン デタッシェ」を身につける練習方法が、先の最初と最後だけを弾いて途中は弓を運ぶと言う練習方法だ。

具体的には、写真の○の箇所で弓を乗せるのはロングトーンと同じだが、乗せた後、すぐにリリースして通常のボウイングと同じ様に弓先(弓元)へ弓を浮かせて(毛を弦に乗せない状態で)移動させて反対側へ到達する前に乗せて又リリースと言う練習だ。
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つまり、弓が弦に乗った後、『弦の中にぐっと入った弓がリリースされ(る)』ぐっと入る瞬間とリリースの瞬間の二つをこれで覚える訳だ。

最初は、特に乗せる瞬間にMs.Violinistさんが書いている様に単に弓がバウンスするだけだが、やっているとそのうちピタッとバウンスを抑えられて吸い付くようになる。


師匠も言っている様に、『弦から一回一回リリースする感じのストローク』と言うのは中々難しいが、このテクニックを覚えると、ピッチングでも大切なリリースの練習となり「山なりのカーブ」を立ち上がりの良い「直球」とできる訳だ。


Ms.Violinistさんの「なう」で、あらためて、僕自身、整理する切っ掛けになったので覚書とした。