昨日は、1,2楽章だったが、今日練習が始まる前に2楽章のこの部分に関して学生さんから質問があった。
ここは大抵元々のアーティキュレーションとは異なるボウイングとする場合が多く、ここでは、4つづつで弓を返していた。
指揮者のTさんは、この返す部分が目立たたない様に弾いて欲しいと要求された。
至極当然な要求で、これを防ぐ幾つのかの方法として、返す場所をズラすと言う方法があるが、そう言う裏技的なことでは無く正攻法でやるとすればどうやったら弾けるのか?
速い速度で急ブレーキを掛ければ道路にブレーキ痕が残るし、反復横飛びの場合、左右に反転する為の靴跡が残る。
もしゆっくり動けばこの後は残らない。
一つの方法はこれだが、ゆっくり動けない場合はどうしたら良いか?
自重を軽くするのだ。
バスと軽自動車が同じ速度で急ブレーキを掛けた場合に、重たいバスの方が跡が残るし、反復横飛びでも小柄な方が靴跡は少ない筈だ。
これを弓で説明すれば、反転するポイントに近づくにつれて圧力を抜いていく様にすれば良いのだ。
但し、例えば、均等な圧力で弓幅を40センチ使う速度が求める音量であるとすれば、同じ40センチでこれをやってしまうと両端での音量は当然落ちてしまう。
その為、これを補う為に、反転するポイントに近づくに連れて弓の速度は速くするのだ。
そして、40センチが標準ならば、例えば両端10センチ(これはもっと必要かもしれない)オーバする程度に弓を使用する様にすればよい。
こうすれば、両端の場所では圧力は殆ど掛かってない為、弓を返しても殆ど返すショックが目立たない。
つまり、音量のコントロールを圧力→弓の速度へ交換して、出来るだけ弦の振動速度へ近づける様にするのだ。
弦というのは目に見えないが大きく振動している様に見える中に小さい振動が発生しているのでそれに同期させる様にすると弓の返しが目立たないのだ。
これとは逆の話だが、上記のフレーズを弾かせてみると聞かせたい音(例えば3小節目のD♭)等の場所で弓の速度が速くなってしまう。
聞かせたい場所では弓を沢山使うと良いと思っている様だが、「聞かせたい場所では弓の速度を落とす」と言う事も話した。
先に説明したことと全く逆だが、速度を落とした場合、同じ音量にしようとすると自然と圧力を増やさなければならないが、そうすると自然と音が「立つ」事になる。
又、ビブラートと言う左手を振動させて音を震わせるテクニックがあるが、仮に左でビブラートをしっかり掛けてもその振動に右手が負けると(振動を吸収するくらい圧力が低いと)効果も半減する。
この辺は最初に説明したテクニックとは全く反対のテクニックとなるが、弦楽器の弓と言うのは決して同じ速度や圧力で動いている訳では無いのだ。
ロボットがヴァイオリンを弾きますと言う様なデモンストレーションを見るが、大抵、こう言う事を考慮していないので無味乾燥な演奏にしか聴こえないのもそう言う理由だ。
意外に弦楽器と言うのは物理の法則と照らし合わせることでそのヒントが見つかることが多い。
まあ、名人やプロと言うのはこう言う事を理屈抜きで身体で覚えているのだが、アマチュアの場合はそれだけの時間を掛けてないので考えることが大切だと思っている。