先日の学生オーケストラを聴きに行った時に非常に不満があった事があった。
オーケストラの配置というのは時代の流れその他で色々変わる。
今回は管楽器には言及しないので、弦楽器の並びを考えた時、以下の番号が振られると思う。
その時は
1) 1stヴァイオリン
2) ヴィオラ
3) チェロ
4) 2ndヴァイオリン
5) コントラバス
と言う配置だった。
つまり、コントラバスが 1stヴァイオリンとヴィオラの後ろへ配置されていたのだ。
曲目は
シューマン/交響曲第4番
チャイコフスキー/「くるみ割り人形」組曲
ベートーヴェン/「献堂式」序曲
トップの子にその事を尋ねたら、指揮者の指示らしい。
又、コントラバスが異様に先に出るのも非常に気になったのだが、それも同様に指揮者の指示だったらしい。
正直、どんな効果を期待してそう言う要求をしたのか全く理由がわからない。
客席で聞いた限りは、コントラバスだけがオーケストラのアンサンブルと噛み合わずに孤軍奮闘と言う感じで、チェロと離れている為、低弦のまとまりも当然無い。
低弦のまとまりが無いと当然、全体のアンサンブルもまとまりが無い。
時々聴こえる異常な早出しが余計に気になる。
コントラバスの場合、確かに、fff等の出の時に5弦の下の音等、先に音が聴こえる様に若干早く弾き始める場合はあるのだが、これはチェロの後ろに居て効果があると思っている。
つまり、チェロの後ろから背中を押すような感じで少し早く出る事で低弦全体がまとまって下から聴こえて来る状態を作る事が出来る訳で、それも限度があるのに、こんな離れた場所で早出しをしても単に邪魔なだけだ。
実際に客席で聴いてもそう聴こえた。
ベートーヴェン時代の対向配置やストコフスキー以降の上手へ低弦が並ぶ配置等色々あると思うが、チェロバスをこれだけ離す配置は聞いた事が無い。
先の曲目でも、大抵、チェロバスは同じ事をオクターブでやってる事が多いので、この辺が合わないのも非常に気になった。
僕は指揮者の素性は全く知らないが、そんな事をプロオケで言ったら馬鹿にされるだけだろう。
ただでさへ技術も低い学生と言う事を考えると、音程は個人レベルの話だから仕方ないとしても、リズムやアンサンブルは出来るだけ合うような方向へ持って行くべきだろう。
申し訳無いが、学生オーケストラだからと言って実験台に使うのは止めて欲しいもんだ。
ただ、コントラバスの場合は上手、下手両極端に位置する事になるが、楽器の構造を考えると⑤の場所の方が楽器の正面が客席へ向きやすいので、音は良く聞こえるのでは無いかと思っている。
その点では先日はフルメンバーで5人だったので、下手へ位置させるのは賛成だが、それなら普通の対向配置とすれば良かった筈で、なんとなく「奇をてらった」感じがする。アンコールで赤いサンタの上着を羽織る位だから多分、変わった事が好きなんだろうなと、その時は思った。
しかし、コントラバスとして、対向配置で良いなと思うのはその位かもしれない。
対向配置の場合、譜めくりは、裏の奏者から譜面の右端が遠くなるのでちょっと面倒だが、めくる動作は楽になるので半々と言うところだろう。
問題はアンサンブルだ。
⑤の配置で最も嫌いなのはコンマスの顔(目)が見えない事だ。
その点では⑥はコンマスの顔が見える。
又、ヴァイオリンと近いと言っても、楽器は反対向きだ。その点では、弓の動きが把握しやすいと言う意味でも⑥の方が合わせやすいし、駒よりで弾いているのか、どう言うニュアンスで弾いてるのかも分かりやすい。
この際、音速がどうのと言う議論はしない。たまにそう言う話をする人が居るが、音速は通常330m/s程度だ。
いくら広い舞台と言っても、0.1秒以下で音は届く。
それよりも、コンマスの目や右手や弓、身体の動きを見る方が余程合うし、少し意味合いは違うが、上記の理由からすれば聞いたら遅くなると言うのも外れだ。
とりあえず聞くことは大切だし、それ以上にクリティカルに合わせるなら見るのが一番だ。
もちろん、上級者なら、自分の楽器や奏法その他から来る発音を含めて、様々な要因を調整して、何処で音を出せば求められるタイミングで届くかと言う事も長年の経験で無意識で把握しているはずだ。
まあ、そう言う点で、⑤の位置は個人的にフラストレーションが溜まりやすいのだ。
又、対向配置でホルンが上手へ行く場合がある。
この場合はホルンとアンサンブルを取るのが非常に難しい。
僕はティンパニやホルンと言うのは、弦楽器の次に意識しているパートだ。コントラバスは打楽器的な動きもするし、ホルンと一緒に動く事も多い。
ティンパニの場合は離れていてもバチの動きで分かりやすいが、ホルンは殆ど動きがないので雰囲気等で把握するしか無い。こう言うのは近い方が有利だ。
又、ホルンはラッパの先が必ず右手側になる為方向がある。上手と下手へ泣き別れすると、微妙なタイミングで合わない事が多いのだが、これが、又、ご親切に下手へ配置してくれると、後席で弾いている場合、ホルンのラッパが全部こっちを向いている為、うるさいったありゃーしない。
前に、打楽器群が上手に置かれた対向配置で、「狩り」をやった時は隣で鳴る鉄砲の音に、分かっていてもビックリさせられ手が止まる事がしばしばあった。
まあ、そう言う感じで、個人的には対向配置は嫌いだ(笑)
対向配置が好きな人は、ヴェートーベン等は対向配置を意識して書いたと言うのが一番多い理由だが、少なくともプロオケなら好きなように並んでもらって結構。
どう言う配置でもちゃんとアンサンブルが出来る能力がある人間が演奏しているのだ。
コントラバス等は最後列で横並びで演奏するオーケストラもある。
ただ、アマチュアの場合は如何なものかと思う。
アンサンブルがしやすい配置で並んでも人の音すら聞いてない様な人間が沢山演奏していて、1stと2ndヴァイオリンの掛け合いも無いもんだ。
まして、アマチュアの場合、2ndは大抵の場合は1stよりも初心者メンバーを配置している事が多い。
対向配置で2ndが④へ来ると楽器が客席を向かないので、そこまで考えて演奏できるメンバーが弾かないと単に2ndが良く聞こえないってだけになってしまう。これはヴィオラが来ても、元来あれだけ大きな楽器をしっかり鳴らせる奏者が少ないのでそれもイマイチ効果が出ない。
結局、どの配置となっても1stが最も良く聴こえる場所に位置して来る為、その対面へ来るパートはそれなりに腕の立つパートじゃないと太刀打ち出来ないのだ。
唯一、チェロが来た場合は、客席へ対して楽器が横向きとなるが、それでも少し工夫すれば楽器の面を少し客席向ける事は出来るし、後ろへコントラバスが来るので、なだらかな山脈の様にその箇所で低音がまとまる為、若干有利だろう。
結局、現代の配置というのは良く考えられている訳で、敢えて、作曲者の意図の再現や、懐古的な目的で演奏しているのであればともかく、アンサンブルを楽しみたいと言う事が主たる目的であれば、自分たちの力が発揮出来る形を考えるべきでは無いかと思う。
又、掛け合いに関しても各パートが意図していればどの場所に居ても可能な筈だ。
プロのオーケストラと言うのは手本にすべきだとは思うが、基本的に別の次元で演奏をやっているのだ。
単なる真似事をやってもその先には何も無い。
もう少し足元を見て自分達の力を発揮しながら、伸ばしていく事を考えるのが音楽をやる楽しみでは無いだろうか。