青の情歌

〈夢語りシリーズ第2巻  第2節

     「月のほのほ」に収録〉

   湯口聖子 箸

   1987年(昭和62年)刊

   秋田書店

   ボニータ コミックス


こんばんは~照れ


今日は

鎌倉時代を描いた少女マンガ

夢語りシリーズ第2弾です!


第1弾はこちら↓


だいぶ昔にこちらも書いています↓


前回紹介した「月のほのほ」は、
北条政子の妹・育子(作者のつけた仮名・後の足利義兼室)が主人公でしたが。

今回の「青の情歌」の主人公は、
同じく北条政子の妹・泰子(仮名)です。
育子と同じく、政子の同母妹という設定ですチュー


以下、
完全ネタバレにつき注意注意


はっきりした性格の泰子は、父・時政が持ってくる縁談を片っ端から断っています。
“政略結婚なんて絶対イヤ!
 そんなに(嫁に)行かせたいなら父上が行けばよい”

戦で死んだ想い人を胸に秘めながら足利に嫁いだ姉・育子や、まだ恋も知らないうちに嫁がされた昭子(仮名・畠山重忠室)のことを思うと、どうしても素直に親の言うことを聞く気になどなれませんえー

実は泰子は恋をしていました。
2ヶ月前に出会った、小山田有重の子、稲毛三郎重成。
家の者に内緒で逢瀬を重ねていました爆笑

そんな中、鎌倉に木曽義仲の嫡男・義高(清水冠者)が、頼朝の長女・大姫の婿としてやってきます。
名目は婿でも実際は人質。
大姫の遊び相手として、義高は御所の女房たちに愛されます。

大姫も、元来人見知りなのに義高になつき、ふたりの姿は愛らしく、兄妹のようだ、と皆が言います。
けど泰子は、兄妹なんかじゃない、ふたりの間に大人の思惑など関係ない純粋なものを感じますキョロキョロ

そのうち、泰子に稲毛重成との縁談がきました。
喜んで一度は受けた泰子でしたが、実は自分と重成の出会いが、仕組まれたものだったと知りますガーン
出会ったのが2ヶ月前、縁談が持ち上がったのは3ヶ月前。
重成は縁談を前提に泰子に近づいたのでした。
怒って重成と別れようとする泰子びっくり

けれど、大姫と義高をみていると、偽っている自分の気持ちに気付くのです。
“わたしだって、重成さまを好きなのよ”

姉・育子に“素直になれ”と諭され、泰子は重成に会い、大姫と義高の仲睦まじい様子を見せます。
“あのふたりがうらやましい”

そう訴える泰子の横で、重成は顔色を変えます。
“姫さまはそんなに清水冠者になついているのか”
“ふたりを引き離せ!”

実はその日、木曽義仲を討つための出陣の命が下されたのでした。
人質の義高が誅されるのは必至えーん

義高を逃がすために、手引きをする泰子。
そんな泰子に、重成は秘かに家来をつけて泰子を守ります。

無事に鎌倉を出た義高でしたが、追っ手をかけられ、入間川のほとりで斬られてしまいましたショボーン

大姫の耳に入らないよう気遣う政子と泰子でしたが、大姫は知ってしまいます。
“父上が義高さまを殺した~”

食を取らなくなり、涙にくれる大姫をなだめ、世話をする泰子は、おのれの感じたことが間違いでなかったことを知ります。
大姫は確かに義高を慕っていたのです。大姫6才、義高11才。
(年齢は推定)

大姫の世話で少しやつれた泰子と再会した重成は言います。
“戦続きの世の中がどんな悲しい想いを生みだすか”
“幸せになれる者はなろう
  哀しみの上に立つ幸せだけど”

泰子は重成の手を受け止めます。
愛する人と結ばれる幸せをかみしめながら・・・ニヤリ

〈完!〉


末尾に追記がありますが、
泰子はちょっとした因縁で吾妻鏡にその存在を残しています。

建久6年、義高の死から約11年後。
泰子こと、稲毛重成の妻は亡くなります。
頼朝上洛に随行していた重成は、帰路にその報せを受けとり、急ぎ自領へ帰ったといいます。
妻の死を哀しみ、重成は出家。
(上記一部はWikipediaから抜粋)

3年後、妻の追善供養として重成(稲毛入道)は相模川に橋をかけます。
その橋の落成供養に出席した帰り、頼朝は落馬。
この落馬をきっかけに初代・鎌倉殿・頼朝は床につき、やがて死を迎えます。

頼朝の死のきっかけを作った人物として記録に残ってしまった?泰子ですが。
実際はどんな人だったんでしょうね~ニヤリ

湯口聖子さんの夢語りシリーズは、だいたい無名な人たちが主人公で。
名を残した有名人の、弟妹とか、従者とか。
中には架空の人もいますが、少し記録はあるけど有名じゃない人が多いチュー

泰子も実名は不明ですが、いちおう吾妻鏡に上記のような存在あり。

シリーズの多くに出てくる北条時房(同じく政子の弟)も、少しは記録がありますが、母は不明ですし、妻もひとりしかわからない。
けど、残っているエピソードや伝説・推測はそれなりにあって。

湯口聖子さんはそこからイメージを膨らませて描かれたのでしょうね~秀逸です爆笑

歴史は決して名を残した人たちだけが作ったものではないし、名のある人の周りには、彼らを支えた多くの名も無き人たちがいた。

そうゆうことを感じさせてくれるシリーズです。

いまとなっては高額古本でしか手に入らないらしいですが。
ぜひ読んでほしいな~ウインク

ちなみに、北条政子の妹たちを主人公にした話はこの2話だけです。

なぜかいちばん有名な妹、阿野全成(頼朝の異母弟・今若丸)の妻となった阿波局(実名は不明)はいっさい出てこない。

畠山重忠の妻となった妹(このシリーズでの名は昭子)は、畠山重保の母として、後の争乱の時に少し名だけが出てきます。

牧の方(時政の後妻)の子の、政子の異母弟妹では、政範だけがちょっと出てきます。
牧の方もそれなりにニヤリ

大河ドラマでいま注目の時代ですが、35年も前にこんなマンガが出ていたんですよ~爆笑
とても人間味ある魅力的な時代ゆえだと思います。
殺伐している部分もあるけどねキョロキョロ

にしても35年前か~ニヤリ
私が初めて読んだのはたぶん30年くらい前。
どちらにせよ四半世紀前アセアセ
年を取るわけですガーン


以上、夢語りシリーズでした。

お読みいただき、ありがとうございました。