青の情歌
〈夢語りシリーズ第2巻 第2節
「月のほのほ」に収録〉
湯口聖子 箸
1987年(昭和62年)刊
秋田書店
ボニータ コミックス
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20220122/21/iovehistory/00/08/j/o1080066115064830412.jpg?caw=800)
こんばんは~
今日は
鎌倉時代を描いた少女マンガ
夢語りシリーズ第2弾です!
第1弾はこちら↓
前回紹介した「月のほのほ」は、
北条政子の妹・育子(作者のつけた仮名・後の足利義兼室)が主人公でしたが。
今回の「青の情歌」の主人公は、
同じく北条政子の妹・泰子(仮名)です。
育子と同じく、政子の同母妹という設定です![チュー](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/008.png)
![チュー](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/008.png)
以下、
完全ネタバレにつき注意![注意](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/111.png)
![注意](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/111.png)
はっきりした性格の泰子は、父・時政が持ってくる縁談を片っ端から断っています。
“政略結婚なんて絶対イヤ!
そんなに(嫁に)行かせたいなら父上が行けばよい”
戦で死んだ想い人を胸に秘めながら足利に嫁いだ姉・育子や、まだ恋も知らないうちに嫁がされた昭子(仮名・畠山重忠室)のことを思うと、どうしても素直に親の言うことを聞く気になどなれません![えー](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/011.png)
![えー](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/011.png)
実は泰子は恋をしていました。
2ヶ月前に出会った、小山田有重の子、稲毛三郎重成。
家の者に内緒で逢瀬を重ねていました![爆笑](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/001.png)
![爆笑](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/001.png)
名目は婿でも実際は人質。
大姫の遊び相手として、義高は御所の女房たちに愛されます。
大姫も、元来人見知りなのに義高になつき、ふたりの姿は愛らしく、兄妹のようだ、と皆が言います。
けど泰子は、兄妹なんかじゃない、ふたりの間に大人の思惑など関係ない純粋なものを感じます![キョロキョロ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/016.png)
![キョロキョロ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/016.png)
そのうち、泰子に稲毛重成との縁談がきました。
喜んで一度は受けた泰子でしたが、実は自分と重成の出会いが、仕組まれたものだったと知ります![ガーン](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/020.png)
![ガーン](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/020.png)
出会ったのが2ヶ月前、縁談が持ち上がったのは3ヶ月前。
重成は縁談を前提に泰子に近づいたのでした。
怒って重成と別れようとする泰子![びっくり](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/014.png)
![びっくり](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/014.png)
けれど、大姫と義高をみていると、偽っている自分の気持ちに気付くのです。
“わたしだって、重成さまを好きなのよ”
姉・育子に“素直になれ”と諭され、泰子は重成に会い、大姫と義高の仲睦まじい様子を見せます。
“あのふたりがうらやましい”
そう訴える泰子の横で、重成は顔色を変えます。
“姫さまはそんなに清水冠者になついているのか”
“ふたりを引き離せ!”
実はその日、木曽義仲を討つための出陣の命が下されたのでした。
人質の義高が誅されるのは必至![えーん](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/018.png)
![えーん](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/018.png)
義高を逃がすために、手引きをする泰子。
そんな泰子に、重成は秘かに家来をつけて泰子を守ります。
無事に鎌倉を出た義高でしたが、追っ手をかけられ、入間川のほとりで斬られてしまいました![ショボーン](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/017.png)
![ショボーン](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/017.png)
大姫の耳に入らないよう気遣う政子と泰子でしたが、大姫は知ってしまいます。
“父上が義高さまを殺した~”
食を取らなくなり、涙にくれる大姫をなだめ、世話をする泰子は、おのれの感じたことが間違いでなかったことを知ります。
大姫は確かに義高を慕っていたのです。大姫6才、義高11才。
(年齢は推定)
大姫の世話で少しやつれた泰子と再会した重成は言います。
“戦続きの世の中がどんな悲しい想いを生みだすか”
“幸せになれる者はなろう
哀しみの上に立つ幸せだけど”
泰子は重成の手を受け止めます。
愛する人と結ばれる幸せをかみしめながら・・・![ニヤリ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/003.png)
![ニヤリ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/003.png)
〈完!〉
末尾に追記がありますが、
泰子はちょっとした因縁で吾妻鏡にその存在を残しています。
建久6年、義高の死から約11年後。
泰子こと、稲毛重成の妻は亡くなります。
頼朝上洛に随行していた重成は、帰路にその報せを受けとり、急ぎ自領へ帰ったといいます。
妻の死を哀しみ、重成は出家。
(上記一部はWikipediaから抜粋)
3年後、妻の追善供養として重成(稲毛入道)は相模川に橋をかけます。
その橋の落成供養に出席した帰り、頼朝は落馬。
この落馬をきっかけに初代・鎌倉殿・頼朝は床につき、やがて死を迎えます。
頼朝の死のきっかけを作った人物として記録に残ってしまった?泰子ですが。
実際はどんな人だったんでしょうね~![ニヤリ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/003.png)
![ニヤリ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/003.png)
湯口聖子さんの夢語りシリーズは、だいたい無名な人たちが主人公で。
名を残した有名人の、弟妹とか、従者とか。
中には架空の人もいますが、少し記録はあるけど有名じゃない人が多い![チュー](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/008.png)
![チュー](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/008.png)
泰子も実名は不明ですが、いちおう吾妻鏡に上記のような存在あり。
シリーズの多くに出てくる北条時房(同じく政子の弟)も、少しは記録がありますが、母は不明ですし、妻もひとりしかわからない。
けど、残っているエピソードや伝説・推測はそれなりにあって。
湯口聖子さんはそこからイメージを膨らませて描かれたのでしょうね~秀逸です![爆笑](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/001.png)
![爆笑](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/001.png)
歴史は決して名を残した人たちだけが作ったものではないし、名のある人の周りには、彼らを支えた多くの名も無き人たちがいた。
そうゆうことを感じさせてくれるシリーズです。
いまとなっては高額古本でしか手に入らないらしいですが。
ぜひ読んでほしいな~![ウインク](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/004.png)
![ウインク](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/004.png)
ちなみに、北条政子の妹たちを主人公にした話はこの2話だけです。
なぜかいちばん有名な妹、阿野全成(頼朝の異母弟・今若丸)の妻となった阿波局(実名は不明)はいっさい出てこない。
畠山重忠の妻となった妹(このシリーズでの名は昭子)は、畠山重保の母として、後の争乱の時に少し名だけが出てきます。
牧の方(時政の後妻)の子の、政子の異母弟妹では、政範だけがちょっと出てきます。
牧の方もそれなりに![ニヤリ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/012.png)
![ニヤリ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/012.png)
大河ドラマでいま注目の時代ですが、35年も前にこんなマンガが出ていたんですよ~![爆笑](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/001.png)
![爆笑](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/001.png)
とても人間味ある魅力的な時代ゆえだと思います。
殺伐している部分もあるけどね![キョロキョロ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/016.png)
![キョロキョロ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/016.png)
にしても35年前か~![ニヤリ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/003.png)
![ニヤリ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/003.png)
私が初めて読んだのはたぶん30年くらい前。
どちらにせよ四半世紀前![アセアセ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/100.png)
![アセアセ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/100.png)
年を取るわけです![ガーン](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/020.png)
![ガーン](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/020.png)
以上、夢語りシリーズでした。
お読みいただき、ありがとうございました。