- セミの一生/橋本 洽二
- ¥1,575
- Amazon.co.jp
夜道で何かが動いていた。
セミの抜け殻はよく見るが、まだその姿のままで歩いているのは
初めて見たかもしれない。つやつやしてこんもりした茶色の虫。
これが、あの抜け殻になるのかぁ。
歩道に向かっていたので軌道修正してあげる。
歩道は自転車や歩行者に踏み潰されてしまう可能性が高い。
しかし、なかなか思うように進んでくれない。
しかたがないので、手を出しておくと、
素直に手に乗ってくる。手のひらをどんどん登ってくる。
腕を登られている感じは、成虫のセミと変わらない。
素早い虫はイヤだが、セミはのろくて平気。
子供の頃から毎夏セミを捕って遊んだものだ。
懐かしい感触。
しかしこのままでは頭のてっぺんまで登られてしまう。
大きな木に移そうとしたが、うまく木の表面をつかめないらしい。
仕方なく、草むらに下ろす。
今夜から明日にかけて、羽化するだろう。
つかまえて観察するというのも一興だったかな…。
帰り道、そこかしこでビビッ!というセミの声が上がっている。
これから、思いっきり鳴く準備をしているものと思われる。