7月12日、ソグネフィヨルドを前に朝を迎える、フロム。
バルト海を越え北限の地にはローマもゲルマンもやって
来なかったが、ノルウェーの凍らぬ海の浅い入江(フィヨルド)
には少しずつ漁を営む人たちの村は形成されていく。
この深い入江(フィヨルド)には9~11世紀にかけて欧州の
海岸地域を脅威に陥れたバイキングが住み、喉かな山村で
束の間のオフを家族とともに過ごした。
それから何世紀もの間、凍らぬ海辺の日当たりの良い谷に
農民達は山羊を飼い暮らし、谷に沿って川を登り農地を
拡げていった。
短い夏の間に草を刈り、ミルクを絞りチーズを造り、
肉は加工してハムやサラミにした。
長い冬が訪れると、陸は凍てつき村は陸の孤島と化した。
1850年代冬でも交通が可能な鉄道が内陸に引かれはじめ、
いくつかの孤島が繋がりはじめる。
そして海からは、蒸気船がやって来た。
村人は恐る恐る戸口から顔を覗かせ、突然の訪問者にビク
ついたが、彼らは山を見上げ海を覗き込み、何やら感動して
いるようだった。
観光という産業がもたらされた瞬間だった。
1900年代には村人のためというよりは、観光のために
今まで手付かずだった裏山に道路が出来、20世紀も半ば
を過ぎると、村と村を貫通するトンネルが次々と開けられた。
ここフロムは500人程が住む村だが、夏の間一日にして平均
5000人の訪問者がやってくる。1923年に開通した鉄道により
オスロからもベルゲンからも繋がったからだ。
世界最大のソグネフィヨルドは全長210㌔、世界最大水深で
1308m、その本流から南に枝を伸ばした後さらに枝分かれした
東にフロムがありその水路をアウルランフィヨルドと呼ぶ。
枝分かれした西側の水路はネーロイフィヨルドと呼ばれ、
その先にグドヴァンゲンの村がある。
今日のソグネフィヨルドクルーズは、フロムから1992年に開通
した11㌔のグドヴァンゲントンネルを抜け、
ここグドヴァンゲンの港からスタート。
ネーロイフィヨルドの向こうから遊覧船がやってくる。
海から210㌔も泳いでやって来たアザラシもいるが、僕だけ
見ることが出来なかった。
海から210㌔も飛んできたカモメが沢山いる、
ノルウェーの朝食のパンが美味しいからか、
船にも沢山よって来る。
振り返りグドヴァンゲンの町、これぞV字谷。
ネーロイフィヨルドにもいくつもの滝が流れ込む。
僅かな日照時間のため海の蒸発は少なく、流れ込む水は
豊富なため海水の塩分はわずかのみ、
落っこちたら、沈むのみ。そう1308mの海底へ。ゾクッ、
枝分かれした水路を、フロム目指してアウルランフィヨルドに
入る。
ここから先は、山並みも海にかけてなだらかさを増し、
海辺には喉かな集落がいくつも確認できる。
朝方まで降っていた雨もすっかり止み、深い谷に太陽が
射す。2時間のクルーズ中そのほとんどをデッキで過ごせるのは
そう何日もない。
フロムの町が近づいて、クルーズは終了。
今日も賑わうフロム港。
大型のクルーズ船まで入港している。
海を眺めて昼食を取り、午後は裏山を抜ける鉄道の旅だ。