昨日の日経新聞朝刊にREITを主体とした
不動産マネーの動向に関する記事が掲載
されていましたね。今のところ不動産マネーの
投資先は東京23区がメインとなっていますが、
これはやはり空室率の低下による賃料の上昇の
恩恵を一番最初に受けることができ、その賃料上昇
によるREITの利回りUP又は不動産価格上昇による
売却にREITが期待を寄せている姿が見え隠れして
いますね。まだ当面、東京主体にREIT残高が
伸びていくと思われますが、東京での物件取得が
困難な局面に差し掛かれば、次第に自然と大阪、愛知、
福岡等の地方都市を中心に残高が徐々に伸びていくもの
と思われます。そのような状況になれば、地価の状況に
よる景況感の改善による企業側の投資意欲の上昇も
出てくると思われますし、個人も地価が上がり始めれば、
土地を持っていないことの危機感を感じたり、投資チャンス
であるとも感じ始める人の数も増えてきて更に土地価格の
下支えをする展開となるのではないでしょうか?
東京における不動産価格の上昇はバブルであると
言われており、確かにAクラスビル取引時のキャップレート
も2%という低い利回りとなっている場面もありますが、
Aクラスビルの空室率が0.6%(2006年6月末現在)
という貸し手側優位で賃料値上げも見込まれる状況下
であることを考えると、東京における不動産取引は過熱しつつ
あるものの、まだまだ理解出来る範囲内での不動産取引を
していると個人的には思っています。また実際に2006年5月、
森ビル㈱では「2007年以降の東京23区内におけるオフィスビル
供給量は大きく減少傾向にある」といった内容のレポートを
出しています。供給が減少していく中、オフィス空室率も低下
しているのが、現在置かれている環境であり、需給がマッチ
していない状況となっているわけです。
(日経新聞10月4日朝刊7面より)
流れ込む不動産マネー
収益性で国土を3分 地域の地価格差広げる
不動産投資マネーの伸びが加速している。
投資先は東京以外にも広がり、収益性という尺度で
国土を再評価し始めた。投資対象となった地方では
地価が上昇、一方、対象外の地方は下落が続いている。
9月末、不動産投資信託(REIT)の日本リテールファンド
投資法人が京都市中京区の商業ビル、河原町OPAを買った。
取得価格185億円はREITによる取得では京都で最大。
同区では地価上昇率が30%を超える地点が現れた。
REITの6月末の投資残高は4兆4200億円。前年同期比
70%増え、増加率は前年の53%を上回った。私募ファンド
の投資残高は6兆円超で、不動産投資マネーは10兆円を
超えた。
金融庁は銀行にREIT向けなど不動産融資を慎重にするよう
求めている。しかし個人や海外からREITへの資金流入は
止まらず、それが不動産投資に向かっている。
■地価押し上げ
マネーは一律ではなく収益性で不動産を選別しながら
地方に向かう。それによって国土は3極化の様相を呈している。
ひとつは、再開発で不動産の収益性があがり、マネーが流入
している地域。東京23区と名古屋、大阪の中心部だ。
景気回復を背景に企業のビル取得意欲が強い。
オフィス空室率が低下し、賃料が上昇。この収益性向上が
地価を押し上げている。好循環は2、3年続くとの見方が多い。
2つ目は、地域分散などの目的でマネーが流れ込む地域。
東京の優良物件の投資利回り低下が背景で、東京、大阪の
周辺と地方中核都市が中心だ。
駅前の再開発やバイパス沿いのショッピングセンターなど
一部の収益物件にマネーが流入。収益性向上は局所的で
東京のように面的な広がりはないものの、地価に下げ止まり感が
出始めた。
そうしたマネーの流入県では経済の正常化が進む。約2年前
からREITが投資を始めた岡山市では中心部で地価が上昇。
地価下落が経営を圧迫しなくなった中国銀行は地場企業向け
貸し出しに力を入れている。
■空白県は低迷
ただ、地方の不動産市場は規模が小さく、マネーの流入が
急増すると収益性の伸びを大幅に超えて地価が上がる。
京都のほか千葉、神戸、札幌などで、そうした地価のゆがみが
広がっている。
3つ目はマネーが流れ込まない空白県だ。収益の見込める
投資物件がほとんどないため、マネーに見放された格好だ。
16の空白県の商業地の地価下落率は平均で5.4%。
地域金融機関の不良債権の減少ペースは緩慢で、貸し出し余力
が限られる。そのため景気低迷が続きやすく、マネーをひき付け
られない悪循環から抜けきれない。
収益性で動く投資マネーが地価の格差を広げるのは確か。
ただ医療施設、リゾートなど地方で成り立つ投資物件もある。
地方に必要なのは補助金獲得ではなく、REITマネーをひき付ける
創意工夫にほかならない。
(編集委員 太田康夫)
REITの都道府県別投資残高と地価上昇率
(6月末、単位は残高億円、ほかは%、
伸び率-は前年実績ゼロ、▲はマイナス)
都道府県 残 高 伸び率 商業地上昇率
東京 27,590 68 6.7
大阪 3,869 68 4.7
神奈川 3,760 85 0.1
福岡 1,699 38 ▲3.3
愛知 1,683 61 2.6
千葉 1,304 114 0.5
埼玉 773 50 ▲0.7
宮城 451 74 ▲2.4
沖縄 407 232 ▲2.3
兵庫 375 232 ▲2.5
北海道 374 77 ▲3.2
奈良 330 5 ▲2.2
京都 195 252 3.1
大分 175 12 ▲4.8
滋賀 169 322 0.1
岡山 169 53 ▲2.8
静岡 161 - ▲2.1
熊本 111 - ▲5.6
茨城 108 15 ▲6.2
広島 108 35 ▲3.9
新潟 82 16 ▲4.9
栃木 75 39 ▲5.6
福島 65 62 ▲5.0
石川 56 ▲4 ▲3.9
富山 23 - ▲4.2
香川 21 0 ▲8.4
群馬 19 38 ▲5.0
和歌山 16 0 ▲5.9
佐賀 12 - ▲3.1
三重 4 - ▲4.5
愛媛 0.7 - ▲3.6
青森 0 ▲7.7
岩手 0 ▲5.7
秋田 0 ▲7.2
山形 0 ▲6.9
福井 0 ▲6.0
山梨 0 ▲4.9
長野 0 ▲5.0
岐阜 0 ▲4.7
島根 0 ▲3.0
鳥取 0 ▲6.5
山口 0 ▲5.0
徳島 0 ▲7.8
高知 0 ▲5.9
長崎 0 ▲5.4
宮崎 0 ▲3.3
鹿児島 0 ▲2.8