休日のお昼過ぎ、
なんだか少しだけ、
いつもと違う空気を吸いたくなったんです。
せっかくのお休みですし、
家にばかりいるのも、
もったいない気がして。
そこで、
少し足を伸ばして、
『いつもより遠くのスーパー』まで、
歩いて行ってみることにしました。
こういうのって、
やっぱりいいですよね。
ちょっとしたお出かけ気分が味わえますし、
運動にもなります。
私は、
お気に入りのスニーカーを履いて、
ウキウキしながら、
家を出発しました。
でも、
ここで、
問題が発生したのです。
それは、
思った以上に、
風が強かったということです。
歩き始めて、
ほんの数分。
なんだか、
空模様が、
急に怪しくなってきました。
青空だったはずなのに、
遠くから、
まっ黒な雲が、
すごい勢いで迫ってくるのです。
これは、
ただ事ではありません。
まるで、
私の行く手を阻むかのように、
冷たい風が、
ビュービューと吹き荒れ始めました。
ここで、
引き返すべきか。
それとも、
前へ進むべきか。
私は、
その場で、
真剣に立ち止まってしまいました。
こういうとき、
人間って、
ものすごく深いことを考えてしまうものですよね。
「私は、
いったい、
何をしているんだろう」
「ただの夕飯の食材を買いに行くだけなのに、
なぜ、
こんな過酷な環境に身を置いているのだろう」
そんな、
どうでもいい哲学的な問いが、
頭の中をぐるぐると駆け巡ります。
でも、
ここで引き下がるのは、
なんだか悔しい。
せっかく、
ここまで歩いてきたのです。
私の小さなプライドが、
「進みなさい」と、
ささやいている気がしました。
だから、
私は、
コートの襟をキュッと立てて、
さらに歩幅を広げました。
『人類の生存競争』
そんな大げさな言葉が、
頭をよぎりますが、
気にしてはいけません。
要するに、
ただの買い出しです。
けれど、
気分はもう、
大冒険の主人公でした。
強い風に押されながらも、
一歩、
また一歩と、
足を進めます。
途中で、
飛ばされそうになった帽子を、
必死のパッチでキャッチするという、
小さなハプニングもありました。
こういうのって、
後から思い出すと、
けっこう楽しいんですよね。
そして、
悪戦苦闘すること、
およそ二十分。
ついに、
目的地のスーパーが、
目の前に現れました。
そのときの感動は、
言葉では言い表せないほどでした。
まるで、
砂漠の真ん中で、
オアシスを発見したかのような、
そんな心地よさです。
自動ドアが開いた瞬間、
ふんわりと温かい空気が、
私を包み込んでくれました。
「生き返った……」
思わず、
声が出てしまいました。
店内の明るい照明と、
美味しそうな総菜の匂いが、
私の荒んだ心を、
優しく癒やしてくれるのです。
なんだか、
ものすごく、
平和な世界がそこにありました。
外の嵐が嘘のようです。
こういう日常のギャップに、
人間は、
幸せを感じるのかもしれません。
カゴを手にした私は、
まるで、
戦から帰ってきた戦士のように、
ゆっくりと店内を歩き始めました。
目的は、
もちろん夕飯の食材です。
でも、
このときの私には、
普通の主婦とは違う、
どこか誇らしげなオーラが、
漂っていたに違いありません。
野菜売り場を通り過ぎ、
お肉コーナーを覗き、
気がつけば、
予定にはなかった、
ちょっとお高めのアイスクリームを、
カゴに入れていました。
「これは、
今日よく頑張った自分への、
ささやかなご褒美です。」
心の中で、
そう言い訳をしながら。
こういう時間って、
意外と大事なのかもしれません。
いつもと同じ日常のなかに、
ほんの少しの事件と、
大きな安らぎがある。
それだけで、
休日の価値が、
何倍にも跳ね上がるような気がするのです。
レジを済ませて、
外に出てみると、
いつの間にか風はピタリと止んでいて、
きれいな夕焼け空が広がっていました。
さっきまでの大荒れが、
まるで嘘のようです。
私は、
レジ袋をぶら下げながら、
鼻歌まじりで家路につきました。
帰り道に見上げた空は、
なんだかいつもより、
少しだけ広く見えた気がします。
みなさんは、
ちょっとそこまでのつもりが、
大冒険になってしまった経験は、
ありませんでしょうか。
こういう予想外の出来事も、
後になって振り返れば、
すべて笑い話になるんですよね。
そう考えると、
日々の暮らしって、
本当に面白いなと思います。
また今度、
天気のいい日を狙って、
別の遠くのスーパーにも、
行ってみたいなと思いました。
今度は、
何が待ち受けているでしょうか。
ちょっとだけ、
楽しみだったりします。
そういえば、
スーパーの帰り道って、
どうしてあんなに足取りが軽くなるんでしょうね。
両手にぶら下げたレジ袋の重ささえ、
なんだか心地いいトレーニングみたいに感じられたりして。
こういう小さなことの積み重ねが、
私たちの生活を、
少しずつ豊かにしてくれているのかもしれません。
ちょっと大げさでしょうか。
でも、
本当になんでもない日常の中に、
小さな宝物が隠れているんですよね。
いつも通っている道でも、
ふと脇道にそれてみたりすると、
新しい発見があったりします。
たとえば、
ずっと気になっていた小さなパン屋さんを見つけたり、
可愛い野良猫に出会ったり。
そういう偶然の出会いって、
予定調和の休日には味わえない、
特別なスパイスみたいなものだと思うんです。
思い返せば、
今日のスーパーでの出来事も、
まさにそんなスパイスの一つでした。
最初は、
「夕飯の材料を買いに行くだけ」
という、
ごくありふれた目的だったはずなのに。
いつの間にか、
新しいお醤油との出会いがあり、
店員さんとのちょっとした会話があり、
外に出てみれば劇的な夕焼け空が広がっていて。
人生って、
案外そういうサプライズに満ちているものなのかもしれません。
準備万端で臨む旅行も楽しいけれど、
こういう日常の延長線上にあるプチ冒険も、
悪くないですよね。
むしろ、
気負わなくていい分、
心からリラックスできる気がします。
家に着いて、
買ってきた戦利品をキッチンのテーブルに並べてみました。
特売のトマトに、
ちょっといいお肉、
そして、
あの迷いに迷って買ったお醤油です。
並べて眺めているだけで、
なんだかニンマリしてしまいます。
こういう瞬間って、
子どもの頃におもちゃを買ってもらったときのワクワク感に、
ちょっと似ているかもしれません。
大人になると、
なかなか純粋にドキドキするようなことって、
少なくなってしまいますよね。
仕事に追われて、
家事に追われて、
気づけば一日が終わっている。
そんな毎日を過ごしていると、
心がすり減ってしまうこともあります。
だからこそ、
こういう小さなときめきが、
必要なのかなと思うのです。
それは、
高級なブランドバッグを買うことでもなければ、
遠くの高級リゾートに行くことでもありません。
ご近所のスーパーで、
思いがけないお醤油に出会うこと。
そんなささやかな出来事で、
心がいっぱいになる。
人間の心って、
本当はもっとシンプルで、
些細なことで満たされるようにできているのかもしれません。
そう考えると、
毎日の暮らしも、
もう少し面白くできる気がしてきます。
明日は、
どんな一日になるでしょうか。
特に特別な予定は入っていません。
いつも通りの朝が来て、
洗濯をして、
掃除をして、
いつものお仕事を片付ける。
きっと、
そんな平凡な一日が待っているはずです。
でも、
もしかしたら、
また何か小さな発見があるかもしれない。
そう思うと、
明日を迎えるのが、
ちょっぴり楽しみになってきます。
冷蔵庫にしまったお醤油は、
今日の夕飯の冷奴に使ってみようと決めていました。
きっと、
いつものお豆腐が、
何倍も美味しく感じられるはずです。
どんな味がするのか、
今から想像するだけで、
お腹が鳴ってしまいそうです。
食卓を囲みながら、
今日のスーパーでの大冒険を、
夫にも話してみようかな。
「今日ね、こんなことがあってさ」
って話し始めたら、
また笑い話が一つ増えることでしょう。
こういう時間を家族と共有できることも、
かけがえのない幸せの一つなんだろうなと思います。
当たり前のように過ぎていく日々の中には、
見落としてしまいそうな小さな幸せが、
たくさん転がっている。
それを一つずつ拾い集めていくような気持ちで、
これからの毎日も過ごしていけたらいいな。
そんなことをぼんやりと考えながら、
私はエプロンのポケットに手を突っ込みました。
指先が触れたのは、
今日のお買い物のレシート。
そこには、
ちゃんとあの謎のお醤油の名前が、
印字されていました。
それは、
今日一日が確かに私のものであったという、
ささやかな証拠のような気がします。
さて、
そろそろ夕飯の支度を始めないとですね。
今日のメニューは、
あのトマトを使った簡単なサラダと、
お醤油を主役にしたお豆腐。
それだけで、
なんだか贅沢な食卓になりそうな予感がします。
みなさんも、
今夜の夕食には、
ちょっとした新しい挑戦を、
取り入れてみてはいかがでしょうか。
いつもの食材を少し変えてみるだけでも、
気分がガラリと変わるかもしれませんよ。
それでは、
そろそろキッチンに向かうことにします。
美味しい匂いが漂う我が家に、
今日も穏やかな夜がやってきますように。
冷蔵庫を開けると、
さっき買ってきたトマトが、
つやつยวと光っていました。
赤くて、
丸くて、
なんだか見ているだけで元気がもらえるような、
そんな存在感です。
こういう野菜一つとっても、
どこで誰がどんなふうに育てたのかなあと、
ふと考えてしまうことがあります。
私たちは普段、
あまりにもたくさんのものに囲まれて暮らしているから、
目の前にある食材の背景まで、
ついつい忘れがちになってしまいます。
でも、
ちょっと立ち止まってみると、
食べ物一つをとっても、
たくさんの人の手を通ってここにやってきているんですよね。
そう思うと、
ただの夕飯の準備も、
なんだか少し違った意味を持ってくるような気がします。
大げさなことではなくて、
毎日のご飯の時間が、
ほんの少しだけ愛おしくなるというか。
そういう気持ちを忘れないでいたいなと、
キッチンに立ちながら、
ふと思いました。
まな板を出して、
包丁を手に取ります。
トントンと、
心地よい音が静かな部屋に響き渡る。
この音を聞いているだけでも、
一日の疲れがスッと溶けていくような気がするから不思議です。
やっぱり、
こういう手作業の時間は、
私にとって大切なリフレッシュなんだと思います。
お仕事をしている方なら、
パソコンに向かう時間だったり、
あるいは家事や育児に追われる毎日だったり。
それぞれに、
忙しい時間を過ごしていることでしょう。
だからこそ、
ほんの数分でもいいから、
自分のための時間や、
心がフッと軽くなる瞬間を持つことって、
とても大切なのではないでしょうか。
それは遠くに出かけることだけじゃなくて、
近所のスーパーで珍しいお醤油を見つけることだったり、
お気に入りのマグカップでお茶を飲むことだったり。
そんな、
日常のなかのささやかな楽しみを、
どれだけ見つけられるか。
そこに、
日々の暮らしを楽しくする秘密があるような気がします。
トマトを切り終えて、
お皿にきれいに並べてみます。
鮮やかな赤と、
お皿の白のコントラストが、
我ながらなかなかいい感じです。
そこに、
今日買ってきたお醤油を、
ほんの少しだけ垂らしてみる。
すっと広がる香りが、
いつもと違っていて、
それだけで気分が上がります。
早く味見をしてみたいけれど、
そこは少し我慢して、
他のおかずの準備を進めるとしましょう。
お味噌汁の湯気が、
ゆらゆらと立ち上っています。
お出汁のいい匂いが、
リビングの方までふわっと広がっていく。
こういう匂いを感じる瞬間が、
私はとても好きです。
あぁ、
今日も無事に一日が終わっていくんだなあと、
心の底からホッとする瞬間。
特別なことは何も起きなかったけれど、
平穏で、
温かい一日。
こういう日々の積み重ねが、
私たちの人生を作っているんですよね。
そう考えると、
なんだか胸がいっぱいになります。
明日はどんな一日になるでしょうか。
もしかしたら、
また新しい発見があるかもしれないし、
いつも通りの穏やかな一日かもしれない。
どちらであっても、
目の前にある小さな幸せを見逃さないように、
丁寧な気持ちで過ごしていきたいなと思います。
お鍋の火を少し弱めて、
味見をしてみます。
うん、
ちょうどいい塩梅です。
そろそろ、
家族も帰ってくる頃でしょうか。
玄関のドアが開く音を聞きながら、
「おかえりなさい」と言う準備をします。
今日も頑張った自分と、
これから帰ってくる家族に、
美味しいご飯を囲みながら、
楽しいおしゃべりができたらいいな。
そんなことを考えながら、
私はお箸をテーブルに並べました。
夜の気配が少しずつ深まっていく窓の外を見つめながら、
明日もまた、
ちょっとしたワクワクを見つけに出かけようと、
心の中でそっと誓うのでした。