【韓国は、アメリカの冷遇・日本の経済制裁を受け、今後、中国・ロシアとの経済的結び付きを強め、アメリカ・日本との安全保障関係を弱めるであろうことについて】
1. 南北統一を目指す韓国に対するアメリカの冷遇と日本の経済制裁
韓国は、昨年の板門店宣言に示されているように、北朝鮮との統一を望んでいます。南北統一が実現すれば、韓国は、中国が進める一帯一路を通じ、ユーラシア経済に直結し、韓国経済が大きく成長することが期待されます。


しかしながら、韓国が、アメリカに対し、北朝鮮に対する段階的な制裁解除と朝鮮戦争の終結宣言をするよう求めても、アメリカは、これを受け入れませんでした。逆に、アメリカは、韓国を冷遇しました。

さらに、徴用工訴訟に端を発した日韓対立は、ますますエスカレートしています。日本は、韓国に対しフッ化水素などの対韓輸出規制という事実上の経済制裁を発動し、さらに、韓国を「ホワイト国」(安全保障上の輸出管理で優遇措置を与える国)から除外するとしています。

日本が発動した一連の対韓国経済制裁は、単なる日本政府の発案ではなく、アメリカとの共謀に基づくものであると思われます。中国・ロシア・北朝鮮との関係を深める韓国に業を煮やしたアメリカが、韓国に対し警告を与えることを目的として発動したものと思われます。ただし、アメリカは、自ら韓国に対し経済制裁を発動するのでなく、日本を使って、経済制裁を発動させたわけです。
しかしながら、日本の対韓国経済制裁は、逆効果です。韓国は、すでに日本以外の国からフッ化水素などの化学物質を調達することを決定しました。ロシアは、日本のフッ化水素よりもより高純度なフッ化水素を提供する用意があると表明しています。また、韓国では、フッ化水素などを国産化するという試みも始まっているようです。半導体を国内生産したい中国と協力することが考えられます。[1]


対韓国経済制裁は、韓国経済が日米から自立し、よりいっそう中ロ・北朝鮮に結び付くことにつながります。北朝鮮も、日本の対韓国経済制裁を非難し始めました。[2]
2. 中ロ合同哨戒活動に込められたメッセージ
そのような状況の中で、7月23日、中国とロシアの爆撃機および早期警戒管制機が、独島(竹島)上空を含む日本海上空で、初めて「合同哨戒活動」を行いました。

[中ロ合同哨戒活動に参加した、中国のH-6戦略爆撃機(核兵器搭載可能)]

[中ロ合同哨戒活動に参加した、ロシアのTu-95戦略爆撃機(核兵器搭載可能)]
中ロの合同哨戒活動には、中国から2機のH-6戦略爆撃機、ロシアから2機のTu-95戦略爆撃機が参加しました。いずれも、核兵器搭載可能です。さらに、ロシアからはA-50早期警戒管制機も参加しました。A-50は、韓国の領空を侵犯し、これに対し、韓国空軍のF-15戦闘機とF-16戦闘機が、警告射撃を行いました。[3]

[中ロ合同哨戒活動に参加した、ロシアのA-50早期警戒管制機]

[H-6、Tu-95、A-50の飛行コース]
ちょうど7月23日には、アメリカのボルトン安全保障担当補佐官が韓国を訪問していました。前日の22日には日本を訪問していました。中国とロシアは、まさに、そのタイミングを狙って、独島(竹島)上空を含む日本海上空で、合同哨戒活動を行ったわけです。
中国とロシアは、韓国を支援し、経済的によりいっそう結び付きを強めることに前向きですが、その一方で、韓国が、いつまでも冷戦時代に結ばれた米韓軍事同盟を維持し、安全保障の分野で、中ロに対抗的な姿勢を取り続けることは許せないと考えていると思われます。
そのため、中国とロシアは、合同哨戒活動を通じ、韓国に対し、「経済的に中ロに接近しながら、その一方で、いつまでアメリカに軍事的に依存し、中ロに対抗するつもりなのか?」というメッセージを発したものと思われます。
同時に、合同哨戒活動は、中ロの軍事同盟の誇示であり、東アジアで中ロが協力した場合の軍事力の強さの誇示でもあります。すでに、中国とロシアの軍事力は、合同させた場合、東アジアにおいてアメリカの軍事力を上回るものとなっています。
中国の保有する軍艦数は300隻を超え、すでにアメリカが保有する軍艦数を越えました。さらに、ロシアは、強力な戦略原子力潜水艦および攻撃型原子力潜水艦の艦隊を持ちます。


中国とロシアは、次世代の戦略兵器である極超音速飛翔体の実験に成功しました。アメリカは、一度も成功していません。中国とロシアは、それぞれ自前のGPS衛星システムを確立し、超音速巡航ミサイルを配備しています。アメリカは、まだ超音速巡航ミサイルの開発段階です。
中国は、すでに韓国および日本全土を射程に収める1000発以上の中距離ミサイルを保有しています。

ロシアは、S-400、S-500など世界で最も優秀な対空ミサイルシステムを持っています。中国は、ロシアからS-400対空ミサイルシステムを輸入しています。
ロシアは、世界でもっとも優秀な妨害電波装置を保有しています。ロシアの妨害電波装置は、アメリカのイージス艦の電子システムを麻痺させ、アメリカのGPS信号を無効にする力があります。

中国とロシアは、陸・空・海で合同軍事演習を繰り返しています。事実上の軍事同盟関係にあります。
中国とロシアが戦力を合同させた場合、わずか28500名の在韓米軍に韓国を守る力はありません。
3. 韓国が、よりいっそう中国・ロシアと経済的に結び付き、米日との安全保障関係を弱める可能性について
このような状況の下、韓国は、大きな決断をすべき時期にきていると思われます。韓国の理想を言えば、アメリカが朝鮮戦争の終結宣言を行い、北朝鮮への経済制裁を解除し、北朝鮮が核兵器を完全に放棄して、朝鮮半島を非核兵器地帯とした上で、南北統一へ進むということでしょう。
しかしながら、アメリカが、朝鮮戦争の終結宣言を拒み、北朝鮮への経済制裁解除も拒む以上、韓国とすれば、よりいっそう中国・ロシアとの経済的結び付きを強めつつ、北朝鮮との統一を目指し、米日との安全保障関係を弱めて行くという方向に進まざるを得ません。
その第一歩となるのが、日本との間の軍事情報協定の破棄ということになるでしょう。北朝鮮も、7月25日に短距離ミサイルを発射したのち、韓国に対し、日本との軍事情報協定から離脱するよう要求しました。[4][5]
さらに、将来的に、韓国は、戦闘機など兵器の調達先を多様化することも考えられます。ヨーロッパあるいはロシア・中国から調達するという可能性もあります。
今後、韓国国内における、在韓米軍撤退に関する議論も活発化することになるでしょう。

これに対し、アメリカおよび日本は、よりいっそう韓国に対する冷遇と経済制裁を強めるでしょう。場合によっては、韓国でクーデターを起こし、文大統領を失脚させるという策謀に出るかも知れません。ただし、韓国軍は、民主化が進んでおり、クーデターは非常に難しい状況にあります。
ちなみに、アメリカは、2016年に、トルコでクーデターを企てましたが、失敗しました。その結果、トルコは、ロシアに急速に接近し、ロシアからS-400対空ミサイルを導入、さらにロシアから戦闘機も調達する動きを見せています。
安全保障の枠組みに関しても、冷戦時代に結ばれた米韓軍事同盟に代わり、アジア諸国で構成する集団安全保障体制によって、アジアの平和を維持するという方向へ進んで行くことが考えられます。
たとえば、CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)をベースにASEAN地域フォーラムを合体させ、アジアにおける集団安全保障機構として整備することが考えられます。韓国は、すでにCICAの正式加盟国です。(CICAをベースとしたアジアにおける集団安全保障の可能性については、こちらのブログ記事をご参照下さい。)

[CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)第5回会議]
韓国国内で今後活発化する安全保障枠組みの見直し論、在韓米軍撤退の議論は、日本における安全保障枠組みの見直し論、在日米軍撤退の議論にもつながるでしょう。
参照資料::
(1) "Russia proposes supplying S. Korea with semiconductor materials to replace those from Japan", July 12th 2019, Hankyoreh
(2) "North Korea slams Japan over its trade spat with Seoul", July 20th 2019, CNA
(3) "Russia and South Korea spar over airspace 'intrusion' ", July 24th 2019, BBC
(4) "Fate of S. Korea-Japan military pact in doubt amid escalating export row", July 19th 2019, Yonhap
(5) 「北朝鮮、日韓軍事協定の破棄を韓国に要求 」,、2019年7月28日、日本経済新聞
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。
1. 南北統一を目指す韓国に対するアメリカの冷遇と日本の経済制裁
韓国は、昨年の板門店宣言に示されているように、北朝鮮との統一を望んでいます。南北統一が実現すれば、韓国は、中国が進める一帯一路を通じ、ユーラシア経済に直結し、韓国経済が大きく成長することが期待されます。


しかしながら、韓国が、アメリカに対し、北朝鮮に対する段階的な制裁解除と朝鮮戦争の終結宣言をするよう求めても、アメリカは、これを受け入れませんでした。逆に、アメリカは、韓国を冷遇しました。

さらに、徴用工訴訟に端を発した日韓対立は、ますますエスカレートしています。日本は、韓国に対しフッ化水素などの対韓輸出規制という事実上の経済制裁を発動し、さらに、韓国を「ホワイト国」(安全保障上の輸出管理で優遇措置を与える国)から除外するとしています。

日本が発動した一連の対韓国経済制裁は、単なる日本政府の発案ではなく、アメリカとの共謀に基づくものであると思われます。中国・ロシア・北朝鮮との関係を深める韓国に業を煮やしたアメリカが、韓国に対し警告を与えることを目的として発動したものと思われます。ただし、アメリカは、自ら韓国に対し経済制裁を発動するのでなく、日本を使って、経済制裁を発動させたわけです。
しかしながら、日本の対韓国経済制裁は、逆効果です。韓国は、すでに日本以外の国からフッ化水素などの化学物質を調達することを決定しました。ロシアは、日本のフッ化水素よりもより高純度なフッ化水素を提供する用意があると表明しています。また、韓国では、フッ化水素などを国産化するという試みも始まっているようです。半導体を国内生産したい中国と協力することが考えられます。[1]


対韓国経済制裁は、韓国経済が日米から自立し、よりいっそう中ロ・北朝鮮に結び付くことにつながります。北朝鮮も、日本の対韓国経済制裁を非難し始めました。[2]
2. 中ロ合同哨戒活動に込められたメッセージ
そのような状況の中で、7月23日、中国とロシアの爆撃機および早期警戒管制機が、独島(竹島)上空を含む日本海上空で、初めて「合同哨戒活動」を行いました。

[中ロ合同哨戒活動に参加した、中国のH-6戦略爆撃機(核兵器搭載可能)]

[中ロ合同哨戒活動に参加した、ロシアのTu-95戦略爆撃機(核兵器搭載可能)]
中ロの合同哨戒活動には、中国から2機のH-6戦略爆撃機、ロシアから2機のTu-95戦略爆撃機が参加しました。いずれも、核兵器搭載可能です。さらに、ロシアからはA-50早期警戒管制機も参加しました。A-50は、韓国の領空を侵犯し、これに対し、韓国空軍のF-15戦闘機とF-16戦闘機が、警告射撃を行いました。[3]

[中ロ合同哨戒活動に参加した、ロシアのA-50早期警戒管制機]

[H-6、Tu-95、A-50の飛行コース]
ちょうど7月23日には、アメリカのボルトン安全保障担当補佐官が韓国を訪問していました。前日の22日には日本を訪問していました。中国とロシアは、まさに、そのタイミングを狙って、独島(竹島)上空を含む日本海上空で、合同哨戒活動を行ったわけです。
中国とロシアは、韓国を支援し、経済的によりいっそう結び付きを強めることに前向きですが、その一方で、韓国が、いつまでも冷戦時代に結ばれた米韓軍事同盟を維持し、安全保障の分野で、中ロに対抗的な姿勢を取り続けることは許せないと考えていると思われます。
そのため、中国とロシアは、合同哨戒活動を通じ、韓国に対し、「経済的に中ロに接近しながら、その一方で、いつまでアメリカに軍事的に依存し、中ロに対抗するつもりなのか?」というメッセージを発したものと思われます。
同時に、合同哨戒活動は、中ロの軍事同盟の誇示であり、東アジアで中ロが協力した場合の軍事力の強さの誇示でもあります。すでに、中国とロシアの軍事力は、合同させた場合、東アジアにおいてアメリカの軍事力を上回るものとなっています。
中国の保有する軍艦数は300隻を超え、すでにアメリカが保有する軍艦数を越えました。さらに、ロシアは、強力な戦略原子力潜水艦および攻撃型原子力潜水艦の艦隊を持ちます。


中国とロシアは、次世代の戦略兵器である極超音速飛翔体の実験に成功しました。アメリカは、一度も成功していません。中国とロシアは、それぞれ自前のGPS衛星システムを確立し、超音速巡航ミサイルを配備しています。アメリカは、まだ超音速巡航ミサイルの開発段階です。
中国は、すでに韓国および日本全土を射程に収める1000発以上の中距離ミサイルを保有しています。

ロシアは、S-400、S-500など世界で最も優秀な対空ミサイルシステムを持っています。中国は、ロシアからS-400対空ミサイルシステムを輸入しています。
ロシアは、世界でもっとも優秀な妨害電波装置を保有しています。ロシアの妨害電波装置は、アメリカのイージス艦の電子システムを麻痺させ、アメリカのGPS信号を無効にする力があります。

中国とロシアは、陸・空・海で合同軍事演習を繰り返しています。事実上の軍事同盟関係にあります。
中国とロシアが戦力を合同させた場合、わずか28500名の在韓米軍に韓国を守る力はありません。
3. 韓国が、よりいっそう中国・ロシアと経済的に結び付き、米日との安全保障関係を弱める可能性について
このような状況の下、韓国は、大きな決断をすべき時期にきていると思われます。韓国の理想を言えば、アメリカが朝鮮戦争の終結宣言を行い、北朝鮮への経済制裁を解除し、北朝鮮が核兵器を完全に放棄して、朝鮮半島を非核兵器地帯とした上で、南北統一へ進むということでしょう。
しかしながら、アメリカが、朝鮮戦争の終結宣言を拒み、北朝鮮への経済制裁解除も拒む以上、韓国とすれば、よりいっそう中国・ロシアとの経済的結び付きを強めつつ、北朝鮮との統一を目指し、米日との安全保障関係を弱めて行くという方向に進まざるを得ません。
その第一歩となるのが、日本との間の軍事情報協定の破棄ということになるでしょう。北朝鮮も、7月25日に短距離ミサイルを発射したのち、韓国に対し、日本との軍事情報協定から離脱するよう要求しました。[4][5]
さらに、将来的に、韓国は、戦闘機など兵器の調達先を多様化することも考えられます。ヨーロッパあるいはロシア・中国から調達するという可能性もあります。
今後、韓国国内における、在韓米軍撤退に関する議論も活発化することになるでしょう。

これに対し、アメリカおよび日本は、よりいっそう韓国に対する冷遇と経済制裁を強めるでしょう。場合によっては、韓国でクーデターを起こし、文大統領を失脚させるという策謀に出るかも知れません。ただし、韓国軍は、民主化が進んでおり、クーデターは非常に難しい状況にあります。
ちなみに、アメリカは、2016年に、トルコでクーデターを企てましたが、失敗しました。その結果、トルコは、ロシアに急速に接近し、ロシアからS-400対空ミサイルを導入、さらにロシアから戦闘機も調達する動きを見せています。
安全保障の枠組みに関しても、冷戦時代に結ばれた米韓軍事同盟に代わり、アジア諸国で構成する集団安全保障体制によって、アジアの平和を維持するという方向へ進んで行くことが考えられます。
たとえば、CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)をベースにASEAN地域フォーラムを合体させ、アジアにおける集団安全保障機構として整備することが考えられます。韓国は、すでにCICAの正式加盟国です。(CICAをベースとしたアジアにおける集団安全保障の可能性については、こちらのブログ記事をご参照下さい。)

[CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)第5回会議]
韓国国内で今後活発化する安全保障枠組みの見直し論、在韓米軍撤退の議論は、日本における安全保障枠組みの見直し論、在日米軍撤退の議論にもつながるでしょう。
参照資料::
(1) "Russia proposes supplying S. Korea with semiconductor materials to replace those from Japan", July 12th 2019, Hankyoreh
(2) "North Korea slams Japan over its trade spat with Seoul", July 20th 2019, CNA
(3) "Russia and South Korea spar over airspace 'intrusion' ", July 24th 2019, BBC
(4) "Fate of S. Korea-Japan military pact in doubt amid escalating export row", July 19th 2019, Yonhap
(5) 「北朝鮮、日韓軍事協定の破棄を韓国に要求 」,、2019年7月28日、日本経済新聞
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。