【朝鮮半島で地上戦が起こった場合、アメリカ軍は増派が出来ず、北朝鮮軍に数的に圧倒されることについて】
先に弊ブログ記事でお伝えしましたように、11月5日、アメリカ民主党の下院議員Ted LieuおよびRuben Gallegoの質問書簡に応え、アメリカ統合参謀本部のMichael J. Dumont海軍少将が、北朝鮮に対する武力攻撃のコストに関するきわめて客観的な評価を示しました。[1]
それによると、北朝鮮の核兵器を完全に取り除くには、地上軍を派遣して、北朝鮮の山岳地帯や地下壕の全てを、しらみつぶしに探索し、破壊していくしかないとのことです。
言い換えますと、空爆だけでは、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルを全て破壊することは出来ないということです。したがって、北朝鮮は、破壊されなかった核兵器と弾道ミサイルを使って、必ず韓国や日本、在韓米軍、在日米軍に壊滅的な打撃を与えるということです。
そうなりますと、朝鮮半島で地上戦が行われた場合、どのような展開が予想されるのかが気になりますが、11月9日、今度は、在韓米軍副司令官であったJan-Marc Jouas空軍中将が、書簡で、アメリカ民主党の下院議員Ted Lieu、Ruben Gallego、アメリカ民主党上院議員のTammy Duckworthに対し、朝鮮半島における地上戦の見通しについて、客観的な評価を示しました。[2]
Jouas空軍中将は、北朝鮮が韓国に侵攻した場合の反撃作戦について、在韓米軍副司令官であった2014年に、詳細なプランを策定した経験を持ちます。
Jouas空軍中将によると、結論として、朝鮮半島で地上戦が起こった場合、アメリカ軍は十分な増派および補給が出来ず、北朝鮮軍に数的に圧倒されるとのことです。

Rep. Ted Lieu of California

Rep. Ruben Gallego of Arizona

Senator Tammy Duckworth of Illinois

Rear Adm. Michael J. Dumont of the Joint Staff

Lieutenant General Jan-Marc Jouas of USAF
まず第一に、アメリカ軍は、朝鮮半島の地上戦に備え、あらかじめ韓国あるいは日本に兵員・物資を集積することが出来ません。その徴候があれば、北朝鮮が攻撃してくるからです。戦闘開始後、アメリカ軍の増派には、少なくとも数ヶ月かかると見込まれるそうです。
さらに、北朝鮮が核兵器や生物兵器を使用した場合、在韓米軍基地や主要都市・港湾が放射能や細菌で汚染されるため、アメリカ軍の増派および補給は困難をきわめ、遅延します
また、空港・港湾施設の数が限られている中、韓国に居住するアメリカ人など避難民の保護・防護も、兵員の移動・補給を混乱させ、妨げることになります。
現在、北朝鮮軍は、120万人の兵員を擁すると推定されています。在韓米軍は、2万8500人です。韓国軍は、65万人です。このため、北朝鮮の地上軍が国境を越えて侵攻してきた場合、十分な増派を得られない在韓米軍は、数的に圧倒され、十分な補給も受けることが出来ないとのことです。
アメリカでは、少なくとも、議会と軍のレベルでは文民統制が機能しているようです。
文民統制の下、軍人の役割は、文民すなわち選挙で選ばれた政治家に対し、軍事の専門家として、軍事行動の効果とコストについて客観的な助言を行うことです。この場合、文民は、行政府の長である大統領や首相だけでなく、議会や国会の議員も含みます。
その上で、軍人は、文民が出した決定を、軍事の専門家として、忠実に遂行します。これが文民統制です。
なお、Jouas空軍中将は述べていませんが、朝鮮半島で戦闘が開始されると同時に、北朝鮮は、在日米軍基地からの攻撃を阻止するため、また、日本が在韓米軍の補給基地となることを妨害するため、日本の首都機能と在日米軍基地を核兵器と生物兵器で攻撃すると考えられます。
1950年の朝鮮戦争では、日本が補給基地として機能し、アメリカ軍の継戦能力を支えました。今回は、日本は補給基地として機能しません。
ちなみに、これらの事情に関し、日本の自衛隊の統合幕僚監部が、どこまで政府に助言出来ているのか、甚だ疑問です。彼らにどこまでの情報収集能力があるのか、情報分析能力があるのか、甚だ疑問です。
また、国会では、北朝鮮で起こりうる戦闘とその影響について、具体的な議論が、全く行われていません。野党が質問しても、政府は答えません。そもそも野党がどこまで具体的に質問出来ているのかも疑問です。
全てが駄目です。文民統制が機能するには、文民すなわち選挙で選ばれた政治家が、軍事に関する詳細な知識と民主主義に関する知識を有することが必要です。今の状態では、自衛隊を憲法で認めるなど100年早いです。
日本の野党政治家は、アメリカ民主党の下院議員Ted Lieu、Ruben Gallego、アメリカ民主党上院議員のTammy Duckworthらと速やかに連携し、トランプ大統領による北朝鮮に対する先制攻撃に反対し、北朝鮮問題の外交的解決を求める日米共同声明を発表すべきです。
私自身、一市民の立場ですが、アメリカ民主党の下院議員Ted LieuおよびRuben Gallegoのオフィスへメールを送り、日米議員の連携について提案をいたしました。
アメリカ軍の2人の最高幹部が認めたように、アメリカの軍事力をもってしても、北朝鮮の核兵器を完全に取り除くことが不可能であるとすれば、日本が憲法を改正し、核武装に進むことがいかに愚かか、日本人は、そろそろ気付くべきであると思います。
参照資料:
(1) "Ground Invasion Only Way to Destroy North Korea’s Nuclear Arsenal, Pentagon Says", NBC News, November 5th 2017
(2) "The U.S. could lose in a war against North Korea, a former Pentagon commander warns", Newsweek newsweek, November 9th 2017
先に弊ブログ記事でお伝えしましたように、11月5日、アメリカ民主党の下院議員Ted LieuおよびRuben Gallegoの質問書簡に応え、アメリカ統合参謀本部のMichael J. Dumont海軍少将が、北朝鮮に対する武力攻撃のコストに関するきわめて客観的な評価を示しました。[1]
それによると、北朝鮮の核兵器を完全に取り除くには、地上軍を派遣して、北朝鮮の山岳地帯や地下壕の全てを、しらみつぶしに探索し、破壊していくしかないとのことです。
言い換えますと、空爆だけでは、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルを全て破壊することは出来ないということです。したがって、北朝鮮は、破壊されなかった核兵器と弾道ミサイルを使って、必ず韓国や日本、在韓米軍、在日米軍に壊滅的な打撃を与えるということです。
そうなりますと、朝鮮半島で地上戦が行われた場合、どのような展開が予想されるのかが気になりますが、11月9日、今度は、在韓米軍副司令官であったJan-Marc Jouas空軍中将が、書簡で、アメリカ民主党の下院議員Ted Lieu、Ruben Gallego、アメリカ民主党上院議員のTammy Duckworthに対し、朝鮮半島における地上戦の見通しについて、客観的な評価を示しました。[2]
Jouas空軍中将は、北朝鮮が韓国に侵攻した場合の反撃作戦について、在韓米軍副司令官であった2014年に、詳細なプランを策定した経験を持ちます。
Jouas空軍中将によると、結論として、朝鮮半島で地上戦が起こった場合、アメリカ軍は十分な増派および補給が出来ず、北朝鮮軍に数的に圧倒されるとのことです。

Rep. Ted Lieu of California

Rep. Ruben Gallego of Arizona

Senator Tammy Duckworth of Illinois

Rear Adm. Michael J. Dumont of the Joint Staff

Lieutenant General Jan-Marc Jouas of USAF
まず第一に、アメリカ軍は、朝鮮半島の地上戦に備え、あらかじめ韓国あるいは日本に兵員・物資を集積することが出来ません。その徴候があれば、北朝鮮が攻撃してくるからです。戦闘開始後、アメリカ軍の増派には、少なくとも数ヶ月かかると見込まれるそうです。
さらに、北朝鮮が核兵器や生物兵器を使用した場合、在韓米軍基地や主要都市・港湾が放射能や細菌で汚染されるため、アメリカ軍の増派および補給は困難をきわめ、遅延します
また、空港・港湾施設の数が限られている中、韓国に居住するアメリカ人など避難民の保護・防護も、兵員の移動・補給を混乱させ、妨げることになります。
現在、北朝鮮軍は、120万人の兵員を擁すると推定されています。在韓米軍は、2万8500人です。韓国軍は、65万人です。このため、北朝鮮の地上軍が国境を越えて侵攻してきた場合、十分な増派を得られない在韓米軍は、数的に圧倒され、十分な補給も受けることが出来ないとのことです。
アメリカでは、少なくとも、議会と軍のレベルでは文民統制が機能しているようです。
文民統制の下、軍人の役割は、文民すなわち選挙で選ばれた政治家に対し、軍事の専門家として、軍事行動の効果とコストについて客観的な助言を行うことです。この場合、文民は、行政府の長である大統領や首相だけでなく、議会や国会の議員も含みます。
その上で、軍人は、文民が出した決定を、軍事の専門家として、忠実に遂行します。これが文民統制です。
なお、Jouas空軍中将は述べていませんが、朝鮮半島で戦闘が開始されると同時に、北朝鮮は、在日米軍基地からの攻撃を阻止するため、また、日本が在韓米軍の補給基地となることを妨害するため、日本の首都機能と在日米軍基地を核兵器と生物兵器で攻撃すると考えられます。
1950年の朝鮮戦争では、日本が補給基地として機能し、アメリカ軍の継戦能力を支えました。今回は、日本は補給基地として機能しません。
ちなみに、これらの事情に関し、日本の自衛隊の統合幕僚監部が、どこまで政府に助言出来ているのか、甚だ疑問です。彼らにどこまでの情報収集能力があるのか、情報分析能力があるのか、甚だ疑問です。
また、国会では、北朝鮮で起こりうる戦闘とその影響について、具体的な議論が、全く行われていません。野党が質問しても、政府は答えません。そもそも野党がどこまで具体的に質問出来ているのかも疑問です。
全てが駄目です。文民統制が機能するには、文民すなわち選挙で選ばれた政治家が、軍事に関する詳細な知識と民主主義に関する知識を有することが必要です。今の状態では、自衛隊を憲法で認めるなど100年早いです。
日本の野党政治家は、アメリカ民主党の下院議員Ted Lieu、Ruben Gallego、アメリカ民主党上院議員のTammy Duckworthらと速やかに連携し、トランプ大統領による北朝鮮に対する先制攻撃に反対し、北朝鮮問題の外交的解決を求める日米共同声明を発表すべきです。
私自身、一市民の立場ですが、アメリカ民主党の下院議員Ted LieuおよびRuben Gallegoのオフィスへメールを送り、日米議員の連携について提案をいたしました。
アメリカ軍の2人の最高幹部が認めたように、アメリカの軍事力をもってしても、北朝鮮の核兵器を完全に取り除くことが不可能であるとすれば、日本が憲法を改正し、核武装に進むことがいかに愚かか、日本人は、そろそろ気付くべきであると思います。
参照資料:
(1) "Ground Invasion Only Way to Destroy North Korea’s Nuclear Arsenal, Pentagon Says", NBC News, November 5th 2017
(2) "The U.S. could lose in a war against North Korea, a former Pentagon commander warns", Newsweek newsweek, November 9th 2017