【文民統制の下、軍人は、文民に対し、軍事行動の効果とコストについて客観的な助言を行う必要があることについて】

11月5日、アメリカ民主党の下院議員Ted LieuおよびRuben Gallegoの質問書簡に応え、アメリカ統合参謀本部のMichael J. Dumont海軍少将が、北朝鮮に対する武力攻撃のコストに関するきわめて客観的な評価を示しました。

それによると、北朝鮮の核兵器を完全に取り除くには、地上軍を派遣して、北朝鮮の山岳地帯や地下壕の全てを、しらみつぶしに探索し、破壊していくしかないとのことです。

言い換えますと、空爆だけでは、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルを全て破壊することは出来ないということです。したがって、北朝鮮は、破壊されなかった核兵器と弾道ミサイルを使って、必ず韓国や日本、在韓米軍、在日米軍に壊滅的な打撃を与えるということです。

これで、アメリカの北朝鮮に対する核攻撃を含む先制攻撃の選択肢は、事実上なくなりました。アメリカは、北朝鮮を攻撃出来ません。人的・物的損失のコストが大き過ぎるからです。

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Rep. Ted Lieu of California

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Rep. Ruben Gallego of Arizona

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Rear Adm. Michael J. Dumont of the Joint Staff

アメリカでは、少なくとも、議会と軍のレベルでは文民統制が機能しているようです。

文民統制の下、軍人の役割は、文民すなわち選挙で選ばれた政治家に対し、軍事の専門家として、軍事行動の効果とコストについて客観的な助言を行うことです。この場合、文民は、行政府の長である大統領や首相だけでなく、議会や国会の議員も含みます。

その上で、軍人は、文民が出した決定を、軍事の専門家として、忠実に遂行します。これが文民統制です。

これに対して、日本の自衛隊においては、自衛隊の幹部が、国会における野党の質問に全く答えず、黒塗りの資料を提出し、報告書の存在を隠し続けました。全く文民統制が存在しません。全てが駄目です。彼らは主君のために戦う戦国時代の田舎侍と同じ封建時代の発想です。憲法改正で自衛隊の存在を認めるなど100年早いです。

今回きわめて象徴的なのは、トランプ大統領が外遊し、安倍首相とゴルフで遊んでいる、まさにその時に統合参謀本部から上記の評価が発表されたということです。

アメリカ軍は、北朝鮮に対する先制攻撃が、あり得ないという事実を大統領に突きつけました。トランプ大統領は、無知、無力です。そのトランプ大統領にこびへつらう安倍首相は、それ以下です。

今回も、日本人は何も出来ませんでした。日本人は、アメリカ議会とアメリカ統合参謀本部において、文民統制が機能していたことに感謝すべきです。

来年のアメリカ中間選挙においては、共和党のトランプ大統領への反発で、上院でも下院でも民主党の議員が議席を大きく伸ばすでしょう。それにともない、トランプ大統領の暴走も制御されるはずです。そして、日本においても、いつもながら、その流れを受けて、野党が勢力を伸ばすでしょう。


参照資料:
"Ground Invasion Only Way to Destroy North Korea’s Nuclear Arsenal, Pentagon Says", NBC News, November 5th 2017