技能実習生の「失踪」と「奴隷化」を生む構造とは? | アルファサポート行政書士事務所代表SAKUMAのブログ

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みなさま、こんにちは!!
アルファサポート行政書士事務所の佐久間です。

昨日に「技能実習制度のしくみ」についての記事をインターネットにアップしたところなのですが、今朝、ベトナム人技能実習生の「労災」のニュースが飛び込んできました。

昨年末に行われた会社の大掃除の過程で、機械に腕を巻き込まれ、
腕を失ったという痛ましい事故だったようです。

技能実習は、日本の産業上の技能を、開発途上国へ移転するための国際貢献が目的の制度です。

しかしながら団体監理型の技能実習は、従業員が19名以下の企業による利用が全体の42%を占めていて、実際には国際貢献どころではなく、人手不足の解消手段として使われているのが現実です。

技能実習の対象としては新しく加わったばかりの「宿泊」というサービス業もありますが、ほとんどが農業や漁業といった一次産業や、製造業といった二次産業での実習になります。

特に技能実習生だから危険というわけではなく、そもそも日本人にとっても危険な職場が多いと思われます。

しかしながら今回事故にあった若者による、「機械の操作をきちんと教えてもらえなかった」という主張が事実であるとしたら、ただでさえ危険な仕事が、技能実習生にとってはさらに危険になってしまうということが大いにあるはずです。

2019年の1年間だけで8千900人もの失踪者を出している技能実習制度は、どう考えても上手く機能しているとは思えませんが、この背景には、来日前に現地の送出機関に技能実習生が借金により支払っている100万円前後の手数料と、実習先の変更(転職)が制度的に許されていないことがあります。

実習先がブラックな企業であったとしても、借金を抱えているため帰国することもできず、かといって制度上「転職」することもできないため、「失踪」という道を選ぶことが多いと指摘されています。

この他、実習先の企業の指導・監査は監理団体が行なうこととしていますが、監理団体は「事業協同組合」という組合であり、実習先の企業は組合員です。

 

技能実習制度の監理団体のガバナンス

つまり、営利法人である株式会社と非営利団体である事業協同組合を一概に比較するのは乱暴ですが、株式会社が自分の「株主」を指導・監査するようなもので、監理団体内部におけるガバナンス上の上下関係と、技能実習法上の上下関係が逆転しているため、監理団体による実習先の監査が実際どこまで機能するのかはかなり疑問です。

ただ私が、2016年にできた技能実習法の試みの中でなかなか上手い仕組みだなと思っているのが、優良な監理団体を選別し、その監理団体には4年目以降の技能実習を認めることにしたことでした。

これにより、優良な監理団体と認められない限りはその監理下では技能実習を3年で終了しなければならないところ、優良な監理団体(これを一般監理事業といいます。)の下であれば5年間実習ができるようになりました。

そうすると、これから新規で技能実習生の受け入れをはじめる企業が、3年しか実習できない「優良認定されていない」監理団体を選ぶ理由はないので、今後は生き残りをかけて、監理団体が優良認定を勝ち取るべく努力するはずなのです。

つまり、技能実習法施行以後、「優良」と認定されないことが、監理団体の死活問題になっています。

監理団体はストックビジネスなので、優良認定を受けていなくても直ちに経営に影響がでることはないでしょうが、長期で見るとボディーブローのように効いてきて、おかしなことをやっている監理団体は自然淘汰されていく仕組みが、技能実習法には埋め込まれているといえます。

直近のアメリカ「人身取引報告書」においても、強制労働人身取引とまで言われている技能実習制度
その評価の是非はともかく、今後どこまで変わっていけるでしょうか
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技能実習制度の詳細については、「技能実習生とは」でくわしくご紹介しています。

ではまた
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