大統領選=連邦最高裁の判決??アメリカ大統領選挙 | 国際法と国際政治から読み解く現在

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CNNが行っている世論調査。



26%というのは、
オバマ政権中に、次期米連邦最高裁の判事の任命を行うかどうかの国民に賛否を問いたものです。

先月、米連邦最高裁で最も保守的だった判事、アントニン・スカリア判事が死去しました。

オバマ米大統領は自分が後任を指名すると表明しているなか、大統領選の共和党候補たちは、選挙が終わるまで人選を保留するよう呼びかけています。

スカリア判事が亡くなる前は、最高裁判事9人は5人が保守派、4人がリベラル派で、判決を多数決で決める際には保守派が優勢でした。

このため最高裁はこれまで、気候変動や移民受け入れに関するオバマ政権の取り組みにブレーキをかけてきました。

スカリア判事の死去によって保守とリベラルが4対4で拮抗した今、米国で最も強力な決定機関のひとつでどちらがより強い影響力をもつかにつながる人事は、米大統領選と同じくらい対立の激しいものになるとみられます。

米連邦最高裁の判事

リベラル派判事 (民主党の大統領が指名)
ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事(82)、ソニア・ソトマイヤー判事(61)、スティーブン・ブライヤー判事(77)、エレナ・ケーガン判事(55)

(保守派判事 共和党の大統領が指名)
ジョン・ロバーツ長官(61)、クラレンス・トーマス判事(67)、アンソニー・ケネディー判事(79)、サミュエル・アリート判事(65)

連邦最高裁は後任が空席の間も、審理を継続すし、裁判日程には人工中絶の権利に関する重大事件の判決も予定されています。


連邦最高裁とは?

アメリカも日本と同じく権力の乱用を禁止するために、三権分立、つまり、立法、行政、司法で与えられる権力を分配することによって、お互いを監視し合う(チェックアンドバランス)機能を持っています。

連邦最高裁はそのうちの司法にあたり、持っている力の例として、憲法に関する連邦最高裁の判決は絶対的拘束力を持ちます
議会が可決した法案を無効にする力を持つわけです。
さらに大統領の権力を制限し、軍最高司令官(Commander in Chief)としての大統領の権限を制限することも出来ます。

つまり、大統領選は、大統領を選ぶだけでなく連邦最高裁での判決をきめるとても重要なイベントなのです。


後任者選び

米連邦最高裁の判事の任期は終身(日本は70歳)。
判事の使命は大統領が行います。


ヒラリー・クリントン氏とサンダース氏は2017年1月20日まで合衆国の大統領であるオバマ氏が後任を選ぶべきであると促します。
最高裁判事を上院が承認するまでにこれまで最も長くかかったのは125日間で、オバマ政権から次期大統領に交代するまで200日以上猶予が残されています。

ドナルド・トランプ氏やテッド・クルーズ氏は、上院に対して、大統領交代の2017年11月までに遅らせ、次期大統領が選ぶべきであるし、共和党の最高裁での影響力を失わせる事態を避けたいとしています。



ただし、大統領が指名する最高裁判事の候補は、上院が承認しなくてはなりません。現在の上院は共和党が多数のため、オバマ氏が選んだ候補の承認を今年11月の大統領選以降に引き伸ばす可能性があります。

共和党では、上院公聴会の審議を遅らせたり、「フィリバスター(長時間演説)」などの議事妨害を繰り返し、オバマ政権が選ぶあらゆる候補について本会議の投票を遅らせることがありえます。

民主党には、判事の後任を決められるチャンスが少なくとも2回(オバマ政権と、もしかしたらヒラリーかサンダー次期政権)、共和党には一回(もしかしたらトランプやクルーズらの次期政権)あると言えます。


スカリア判事とは?

・1936年、ニュージャージー州トレントンで生まれ
・1986年ロナルド・レーガン大統領による指名
・イタリア系米国人初の最高裁判事
・保守的な法哲学を持つ「原意主義」の主要論者
・人工中絶と同性愛者反対
・企業利益を重視
・死刑制度を強力に支持する
・表現の自由拡大傾向
・オバマ大統領の医療保険改革案を反対
重要判例
2008年「ワシントンDC(コロンビア特別区)対ヘラー氏」