不確定要素のブルームバーグ氏不出馬表明。アメリカ大統領選挙 | 国際法と国際政治から読み解く現在

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アメリカ大統領選挙に向けた候補者選びは共和党と民主党ともに南部ミシシッピ州などで予備選挙が行われました。

今回、注目なのは、

11月に無所属として立候補を検討していた、前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏が、3月7日に選挙戦に立候補しないことを表明したことです。

オピニオンサイトの「ブルームバーグ・ビュー」には、「今から選挙戦に参加しても勝つことはできない」と寄稿し、さらに「自身が出馬すれば不動産王ドナルド・トランプ氏(69)やテッド・クルーズ上院議員(45)が選ばれる恐れがある」と警戒感を示しました。

2月24日にAP通信が実施した世論調査では、同氏に投票するとした登録有権者は7%で、29%が投票を検討すると回答していました。
一方、2大政党に属する有権者の6割がブルームバーグ氏に投票しないと答えていました。


1.第三極の存在

これにより見通しが不透明で、異例の展開となっている今回の選挙戦の不確定要素の一つがなくなりました。

みずからの立候補によって民主党の有権者の票が割れ、トランプ氏らに有利な状況を作ることを避けるためにも立候補しないとしています。

第三極の候補者が現れることで、考えられる異例の事態とはなんだったのでしょうか?


候補者が当選を果たすには、十分な数の州で勝利を収め、選挙人540票の過半数である270票以上を得なければんりません。

もし、いずれの大統領候補も、選挙人総数の過半数の選挙人投票を獲得できない場 合は、米国憲法修正第 12 条によって、連邦下院が大統領を選出することになります。

米国憲法修 正第 12 条が成立して以続きを経て大統領が選出された事例は、アダムズ (1825-1829 年在任)のケースしかありません。
なぜなら、一般的に二大政党制で候補者が二人しかいない場合は、どちらかが過半数をとることができます。

しかし、今回のブルームバーグ氏のような第三極が登場した場合は、選挙人を三人で分け合うことになるため、もし、第三極が人気で各党からの候補者と同様にほどよく票を集めた場合には全員が過半数に達しないという事態が起こります。

そうなった場合には、現在の下院は共和党優勢(共和党が上下両院で過半数を握る)なので、自分たちの党から大統領を選ぶのは当然です。

そうなると、ブルームバーク氏が言ったように、トランプ氏ないしテッド・クルーズ上院議員の当選につながる可能性があります。



2.サンダース氏が当選したら出馬すると検討していたブルームバーグ氏

サンダース氏の民主社会主義は、ブルームバーグ氏の大企業寄りの中道主義と真っ向から対立するものです。

それに加え、
今回の大統領選では、民主・共和両党で政治の経験に乏しいが、イデオロギー色の強い候補が有力視されていることから、ブルームバーグ氏も二大政党以外の立候補に必要な一定数の有権者の署名を全州で確保できる見通しだと述べられていました。

共和党の候補選びでは不動産王で著名人のドナルド・トランプ氏がトップを走り、民主党は民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース上院議員がクリントン前国務長官を追い抜こうとしているのを目の当たりにしていたからでしょう。

そもそも前市長が出馬を検討していると報じられたのは、クリントン氏が序盤戦で苦戦する最中のことでした。しかし今、クリントン氏は、サンダース議員を引き離しつつあるように見えます。

ブルームバーグ氏とクリントン氏は数十年来の知己であり、特に2001-09年はニューヨーク市長とニューヨーク州選出の上院議員として密に接していました。

ブルームバーグ氏の決断は、民主党の大統領候補はヒラリー・クリントン氏で決まりだと暗に受け入れたようにも読み取れます。



3.ブルームバーク氏とは?

ブルームバーグ氏は、ブルームバーグ・ニュースの親会社「ブルームバーグ・エル・ピー」(金融情報会社)を創設した世界的に有名な資産家で、同時多発テロ事件直後の2002年から3期にわたってニューヨーク市長を務めました。

 
ブルームバーグ氏はNY市長時代、共和党員で、共和党らしい経済界寄りの政策を掲げる(ビジネス寄りの財政政策の推進)一方、銃規制や同性婚を支持するなどその他社会問題ではリベラルな見方をしていることから、極端な主張を掲げる候補者が優勢な今回の大統領選において、同氏が出馬した場合には、中道派の支持を集めるとみられていました。ブルームバーグ氏が立候補すると、その高い知名度や豊富な資金力などから、無党派層や、民主、共和両党の支持者から一定の票を得るとみられ、最終的な判断が注目されていました。


4.共和・民主両党の候補者らへの厳しい批判

トランプ氏に対しては、「トランプ氏は人々の差別意識や恐怖感に訴え、国を分断する扇動的な選挙戦を展開している」とした。宗教的寛容を損ね、安全保障に脅威を及ぼす政策を支持していると指摘しています。

同じように極端な立場で、移民やイスラム教徒に対して示すクルーズ議員の姿勢にも批判しています。


民主党のヒラリー・クリントン前国務長官と、バーニー・サンダース氏についても、TPPなどの自由貿易や金融業界に批判的だとして攻撃しました。