~前回のあらすじ~

高天原を追放され、出雲へやって来たスサノオ。
そこで、ヤマタノオロチという怪物に娘を取られた老夫婦に出会いました。

最後に残った娘、クシナダヒメを妻として貰い受けることを条件に、
スサノオはヤマタノオロチ退治を請け負ったのです。

~ここまでがあらすじ~


さて、途方もない化け物であるヤマタノオロチを倒すには正攻法ではいかんと、スサノオは一計を案じます。

まずスサノオは、クシナダヒメを守るため、
彼女の姿を櫛に変えて自分の髪に挿し、ヤマタノオロチから隠すことにしました。


そしてクシナダヒメの両親に対し、
「酒だ!ものっすごく強い酒を作るんだ!
そして桶を8つ用意して酒を目一杯満たし、
酒桶を8つ置いてくれ!」
と命じました。


オロチを酔わして、その隙にやっつけてやろうという、なかなか乱暴な作戦です。

準備を終え、スサノオと老夫婦は木陰に隠れ、オロチが来るのを待ちました。



しばらくすると、あたりがザワザワと不吉な雰囲気となり、
空がまるで血のように真っ赤に染まりました。

そして、ドスン、ドスンと音がしたかと思うと、

山の向こうからヤマタノオロチがやって来たのです。



あまりの巨大さに呆気にとられたスサノオ。


しかしオロチはスサノオの作戦通りに、
8つの頭をそれぞれの酒桶に突っ込み、ガブガブと酒を飲み出しました。


ガブガブガブガブと飲み、
8つの酒桶を全て飲み干してしまうと、
さすがのオロチも酔いが回り、その場で寝てしまいました。


「チャンス!」

スサノオはオロチの身体に飛び乗り、
持っていた剣を抜き、
まずは首を、そして胴体を、切り刻んでいきました。


意外と呆気なくやられてしまったヤマタノオロチ。




さて、首、胴のあとにオロチの尾を切り刻んでいたとき、


「カチン」


と金属音がして、スサノオの剣の刃が欠けてしまいました。


「なんだろう」と思い、剣で尾を裂いてみると、
大ぶりの刀が出てきました。



「あれま、これは不思議だなぁ。
せっかくだから、迷惑をかけたお詫びに、姉ちゃんにあげようっと。」
と、アマテラスにこの大刀を献上することにしました。

これが『三種の神器』最後の一つ、
『天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)』
です。







オロチを退治したスサノオは、
約束通りクシナダヒメを妃に貰い受けました。



そして出雲の須賀(島根県雲南市)というところに大きな宮殿を建てます。


そこには現在、『須我神社』があり、宮殿が後に神社になったのだと伝えられ、
『日本初之宮』と通称されています。


またスサノオは須賀の地で、


八雲立つ(やくもたつ)
出雲八重垣(いずもやへがき)
妻籠みに(つまごみに)
八重垣造る(やへがきつくる)
その八重垣を(そのやへがきを)


という歌を作りました。


これは、日本で初の和歌と言われており、
歌に出てくる「八雲」は出雲の別名、また和歌の別名にもなっています。



ちなみに先ほどの和歌の意味は、

「出雲に、幾層にも重なる雲が立ちのぼっている

あの八重垣のような雲をたたえよ

この美しい雲がかかる地に、
妻を籠(こも)らせるための
八重垣を作るのだ

さあ、その八重垣を」


みたいな感じです。



ちなみに何度も出ている「八重垣」は、
「たくさんの垣がある、立派な建物」
といった意味です。

「八」は厳密に8つという意味でなく、
アバウトに、たくさん、ということです。






スサノオとクシナダヒメは多くの子を残しました。




そして最終的にスサノオは、
生まれた時に駄々をこねた理由を思い出し、
母・イザナミのいる黄泉の国に行ったのでした。




今回のお話は、スサノオが主役です。

高天原を追放されたスサノオは、
出雲国の鳥髪(とりかみ、今の奥出雲町鳥上)という所に降り立ちました。


ふと見ると、川上からチャプチャプと箸が流れてきました。

「おや、川上に人がいるのかな」
と思って川を上ってみると、
そこでは老夫婦が泣いています。

「どうしたのですか?」

と尋ねると、
その夫婦は実はイザナギ・イザナミの孫であることが分かりました。

そして夫婦はスサノオに泣いている理由を話し始めます。

「私たちには8人の娘がいたのですが、
毎年毎年、山の向こうからヤマタノオロチがやって来ては、
娘を1人ずつ食べていってしまったのです……。
もう私たちには1人しか娘が残っていません。
もうすぐまたヤマタノオロチがやって来て、
最後の娘、クシナダヒメも食べられてしまうでしょう……。」

「ヤマタノオロチというのは、一体なんなんだ?」

スサノオは夫婦に尋ねました。


「それはそれは恐ろしいやつで、体は一つですが頭が八つ、
尾も八つに分かれていて、目はホオズキのように真っ赤に燃えていて、
その大きさは、八つの山、八つの谷をわたるほどに長く、
体には苔が生え、檜、杉の木が生えているのです。」


それを聞いてスサノオは一念発起。

「よし!その怪物、この私が倒してみせますよ!
そのかわり、娘を下さい!」

と相変わらずジャイアンちっくな発想でヤマタノオロチ退治を決意しました。

スサノオがイザナギから生まれた三貴子の1人だと知った夫婦は、
なんと、娘をスサノオに嫁がせることを約束しました。



はてさて、どうなりますことやら。



ここで、日本最古の踊り子、芸人とされる神・アメノウズメが登場します。

アメノウズメは岩戸の前に桶を置き、その上に乗って足を踏み鳴らし、
身に付けていた衣から胸や下半身も露にして、激しく踊りました。

すると、集まっていた神々が、高天原が鳴り響くくらいの大声で一斉に笑い出したのです。


さて、岩戸の中のアマテラス。
この笑い声を聴いて、何事だろうと天岩戸の扉を少し開け、

「私が岩戸に篭って世界が闇になっているというのに、
なぜアメノウズメは楽しそうに踊って、
そしてみんなはゲラゲラと笑っているの!?」

と質問しました。


アメノウズメは踊りながら答えます。

「アマテラス様よりも、ずっと貴い神が表れたので、
みんなはそれを喜んでいるのですよ」


自分よりも貴いというその神を探そうと、アマテラスはキョロキョロと辺りを見回しました。
すると、側の木にかけてあった『八咫鏡(やたのかがみ)』が目に入ります。

アマテラスは、その鏡に写る自分の姿を見て、

「あれが私よりも貴い新たな神なの?」

と、まんまと勘違い。

その姿をもっとよく見ようと岩戸をさらに開けたとき、
近くに控えさせていた力持ちの神が、
アマテラスの腕をガッと掴んで引きずり出しました。


その隙に岩戸の扉に注連縄(しめなわ)を張って、

「アマテラス様、もう2度とこの中には入らないで下さい!」

と注意すると、アマテラスは反省し、
もう引きこもらないことを約束しました。


アマテラスが岩戸から出ると、無事に世界は光を取り戻しました。
…ドラクエ3でゾーマを倒した時のように。





ついでに、神々はこの事件の元凶であるスサノオのヒゲと手足の爪を切って、
高天原から追放したのでした。









ちなみに、この話に出てきた

『八咫鏡(やたのかがみ)』

『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』

は、後に『天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)』と合わせて
『三種の神器』となります。


天皇は代々、この『三種の神器』を継承してきました。
そして現代にも継承されています。

『八咫鏡(やたのかがみ)』は三重県の伊勢神宮に、

『天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)』は愛知県の熱田神宮に、

『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』は皇居に、

それぞれ安置されているそうです。



そして、新たな天皇が即位する儀式では、
『三種の神器』のレプリカが使われるのだそうです。




ただ、『天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)』に関しては、
1185年の『檀ノ浦の戦い』(源義経率いる源氏軍が平家を滅ぼした戦い)において、
当時の帝であった安徳天皇と共に海に沈んでしまったとする説もあります。



この『天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)』がどうやって生まれるかが、次の話となります。


次回、ヤマタノオロチ登場!