先日、久しぶりに録画していた『ザ・ベストテン』(昭和55年2月28日放送)を観た。
懐かしさだけで終わると思っていたが、実際はそれ以上だった。
「これは、すごい時代だったんだな」
そんな感想が自然と浮かんできた。
この回のランキングを見渡すと、日本の音楽シーンの層の厚さに驚かされる。
歌謡曲、演歌、フォーク、ニューミュージック、そしてロック。
ジャンルが違うという理由で分断されることなく、すべてが同じチャートの中で共存している。

クリスタルキングの大都会が1位です!
小林幸子、久保田早紀、郷ひろみ、アリス、西城秀樹、五木ひろし、沢田研二、クリスタルキング。
今なら番組が分かれてしまいそうな顔ぶれが、同じランキング番組に並び、
しかも当たり前のように「生で」歌っている。
完璧ではない瞬間もある。
音程がわずかに揺れるところもある。
だが、それが逆に「本物」であることを強く感じさせる。
西城秀樹の屋外中継での圧倒的な声量と安定感。
沢田研二の海外ロケ映像に残る、ほんの一瞬のピッチの危うさ。
どれも口パクでは成立しない、生身の歌い手だからこその説得力だ。
そして、この番組を特別なものにしていた最大の要素が、
久米宏さんと黒柳徹子さんの存在だったと思う。
歌手に過度に寄り添うこともなく、かといって突き放すこともない。
一歩引いた視点と、時折差し込まれる知性とユーモア。
そのバランス感覚が、『ザ・ベストテン』を単なる音楽番組ではなく、
ひとつの文化として成立させていた。
今の時代、これほど多様なジャンルが同じ場所で真正面から並ぶことは、ほとんどない。
だからこそ、今回あらためて観た『ザ・ベストテン』は、
懐かしさを超えて、日本の音楽文化が最も健全だった時代の記録のように感じられた。
そして最後に、はっきりと思う。
久米宏さんがいたからこそ、この番組は唯一無二の存在になったのだと。
あの語り、あの間、あの距離感。
もう二度と同じ形では戻ってこない。
久米宏さん。
あの時代の音楽とテレビの記憶を、これほど鮮やかに残してくれて、
本当にありがとうございました。
心より、ご冥福をお祈りします。