雀ー地球の感覚ー⑤
ダライ・ラマの『科学への旅』のなかに出てくる話ですが、15世紀のチベットの思想家タクツァン・ローツァーワはーおそらく瞑想修行を通してでしょうがー日食や月食が起きた際、自分の呼吸パターンが変化することを体験したそうです。
ダライ・ラマによれば、「私たちの身体の内部にある元素と、外的な世界の自然の元素は極めて密接な関係にあり」、「スケールの大きなマクロコスモスの世界が私たちの身体というミクロコスモスのなかに映し出されている」。
マクロコスモスとミクロコスモスの照応関係は、今日ではサブカルチャーの世界ですら陳腐なイメージとなってしまいましたが、その実態は依然として謎のままです。とはいえ、そのヒントは無数にあります。
1987年に亡くなった解剖学者の三木成夫の『生命とリズム』では、このマクロコスモスとミクロコスモスの関係が解剖学や発生学の見地から照明をあてられており、素晴らしい着想に満ちています。
「私たちの住む地球は実にさまざまな元素から作られています。この中には六価クロムとか、ヒ素、水銀といった人間にとって猛毒の元素も含まれています。ところが私たちのからだを造る細胞を分析してみますと、そういった猛毒の元素もすべて含まれている。
いいかえれば地球を組織する元素は、すべて私たちの細胞の中にあるということなのです。ただそれらは非常に微量ですから、人体に影響がないだけの話であって、つまり、私たちの細胞の一つ一つはちょうどをモチを小さくちぎったように、小さくちぎられた地球だと考えるよりないわけです。」
「胎児の世界と〈いのちの波〉」
あるいは、こういう見解があります。今から3億年前、私たちの祖先は海から上陸して海辺で暮らしはじめ、鰓呼吸から肺呼吸に移っていった。呼吸の歴史はそこから始まるわけですが、呼吸における呼気と吸気の繰り返しは、当時彼らの身体が始終洗われていた波のリズムから来ているのでないか、という推測です(「呼吸の波」)。
また、面白いのは、7日=1週間という、ユダヤ教の天地創造のサイクルが、太陽系の宇宙リズムに由来があるという説です。
「おそらく太陽系のどこかに七日の周期があるんでしょうけど、この宇宙リズムとの共振が地球の生物のからだの中で、えんえんと営まれてきたのでしょうね。そして、この内なる七日の波動に耳を傾け、その波頭に「節」をつけたのが、あのユダヤ暦ということになります。」
「対談 現代の子のリズム」
このように、「地球の感覚」は確実に私たちの身体に刻み込まれている。ただ、私たちは日頃それをあまり意識しないというだけのことです。
もうひとつエピソードを挙げてみます。あまりありがたくない体験ですが、瞑想修行をしなくてもテクノロジーを使えば「地球の感覚」を体験できるようです。
TFT(思考場療法)のキャラハン博士が書いている話で、博士によると、飛行機で長距離を移動した時に起きる時差ぼけは、24時間のリズムが乱れるという理由だけでは説明できないということです。
「すべての地球の生物は地球の電磁環境から影響を受けている。私は、飛行機で東あるいは西に向かう場合、南北に走る電磁線をものすごいスピードで越えることが、時差ぼけの原因なのではないかと考えている」
『TFTー〈思考場〉療法入門』
キャラハン博士がこのアイディアをどこから得たのかわかりませんが、私はあり得る話だと思います。
(続く)
