雑感⑤(勉強のストーリー) | 中学受験入試標準問題集 今日の1問

中学受験入試標準問題集 今日の1問

標準的な中学入試問題の解法について取り扱います

最近、各生徒の、それぞれの勉強のストーリーのあり方が成長に影響してるように思えます。


手堅く教わり、手厚いサポートを受けつつ問題を解き進め、きちんとマルをもらうという形、秀才型と名付けます。

勝手に進めて、好きなように問題を解き、マルはあまり気にしない、破天荒型と名付けます。


秀才型はきちんと偏差値もとりますし、あまり大崩れはしません。ただし、自分の壁を破ることはできず、またアクシデントに弱いという様子が見られます。秩序のなかで伸びていくタイプです。


破天荒型は、こちらで勉強内容に手を入れなければ、まあ伸びません。安定は彼方の夢です。しかし、突破力はあります。秩序よりは混迷を好みます。


大抵、大きく育つのは破天荒型です。

なぜなら、他人に頼らない破天荒型の勉強で結果を出すためには、自分で考えなくてはならないからです。また、秩序を外れた混迷の問題、すなわち難問への思考的、精神的適性が高いことも、大きく育つ理由として挙げられるでしょう。


私の経験でいえば、秀才型の子は、自分の枠のなかで結果を出すことができます。なので、応用の程度が高くない出題の学校は確実に突破できますし、普段接していて冷や冷やすることもありません。


一方で、破天荒型の子は、江戸幕府の成立経緯は知っているのに、直前まで徳川家康を暗記していないなど、まあ、冷や冷やさせてくれました。そんな子が某御三家中に進学したというのだから驚きです。まあ、同類に当たって砕けた珠も少なくはありませんでしたが。


秀才型であるか、破天荒型であるか、その別れ目は勉強のストーリー観にあると思います。

習ったことをきちんとこなしてマルをもらうことをストーリーとするなら秀才型に、習っていないことでも挑戦することに喜びを覚え、勉強は失敗もありえる挑戦というストーリーで捉えるのなら、破天荒型になるのでしょう。

秀才型は習っていないことをやらさせられることに強くストレスを感じ、習っていない話には心を閉し、授業には習うべきことを網羅するように望みます。

一方で、破天荒型は、誰もが習う話を聞かされることに強いストレスを覚え、できれば教材にはない話を聞きたがります。一度、うっかりそうした生徒たちに明治憲法下の天皇機関説論争の内実を話したら、ずいぶんと食い下がられて閉口した覚えがあります。

教える側としては、秀才型を相手にするほうが楽です。成績の良い秀才型もいれば、成績の振るわない秀才型もいますが、彼らはいずれも為すべきはきちんとこなし、彼らの質問も、こちらとしてはほぼ想定の範囲内なので、困ることもありません。


あまり詳しく書けませんが、私の勤め先は筑駒、御三家への進学率が異様に高く、つまるところ、生徒はほぼ破天荒型です。

基本を反復して定着なんていう発想はなく、どれだけダメ出ししてもめげずに殴り書きの記述答案をぶつけてくる彼らには、とんでもなく手を焼かされますが、それが日々楽しくて仕方ありません。


当の子どもたちは、どちらの型の方が幸せなのか、それはわかりませんが、私自身は破天荒型に惹かれます。